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運用保守・トラブル対策 2026.08.11

良いシステムが現場で使われない理由|導入後の定着を進める5つの方法

IT・DX経営改善コラム 第11回|良いシステムが現場で使われない理由

要件を丁寧に整理し、予算をかけて、期日どおりに稼働した。

——それなのに、半年後に見てみると、現場は元のExcelを使い続けている。

珍しい話ではありません。システム導入で最も多い失敗は、実は「動かないこと」ではなく「使われないこと」です。

この記事では、良いシステムが現場で使われない理由と、定着させるための具体的な方法を解説します。プロジェクトの進め方については、システム開発の丸投げが失敗する理由|発注側が管理すべき6項目をご覧ください。

目次

なぜ、良いシステムが使われないのか

使われない理由は、たいてい次のどれかです。

理由現場で起きていること本質的な原因
使い方が分からない最初でつまずき、聞く相手もいない教育とサポートの不足
今までのほうが速い操作の手順が実際に増えている設計が現場の動きに合っていない
使う意味が分からない入力しても自分には得がない目的が伝わっていない
旧方式が残っているExcelでもできるので、そちらを使う切り替えが曖昧
入力が面倒項目が多く、1件あたりの時間が増えた必須項目の絞り込み不足
信用していない数字が合わない経験をした初期のデータ品質の問題

注目してほしいのは、3番目の「使う意味が分からない」です。

入力する人と、そのデータで得をする人が違う場合、これが必ず起こります。

営業担当が入力し、その情報で経営者が判断する。この構図では、入力する側にとっては手間が増えただけです。入力する人にも見返りがあるかを確認してください。

定着に必要な5つの取り組み

1|なぜ変えるのかを、現場の言葉で説明する

説明会でよく語られるのは、経営目線のメリットです。

「全社のデータを統合し、経営判断の迅速化を図ります」——これを聞いた現場は、自分に何の関係があるのか分かりません。

伝わらない説明伝わる説明
業務効率化を推進します月末の残業が20時間から5時間に減ります
データを一元管理します在庫を聞かれても、倉庫に電話しなくて済みます
ペーパーレス化を進めます過去の書類を探す時間がなくなります
属人化を解消します休んでも、他の人が対応できるようになります

右側のように言えるかどうかで、協力の度合いが変わります。

2|最初の1回を、隣で一緒にやる

マニュアルを配って終わり、という進め方では定着しません。

人がつまずくのは、たいてい最初の1回です。ここで詰まって放置されると、「使いにくい」という印象が固定されます。

効果的なのは、実際の業務の場で、隣について1件だけ一緒にやることです。研修室で説明するより、はるかに定着します。

3|聞ける相手を、各部署に置く

分からないときに気軽に聞ける人が近くにいるかどうかで、定着率は大きく変わります。

この役割を担う人を、各部署に1人ずつ決めてください。専門知識は不要で、「他の人より少しだけ先に慣れた人」で十分です。

選ぶときは、次の条件を見てください。

  • その部署の業務をよく知っている
  • 周囲から話しかけやすいと思われている
  • 新しいやり方に前向き、または中立

ITに詳しいかどうかより、話しかけやすいかどうかのほうが重要です。

4|旧方式を止める日を決める

これが最も効きます。そして、最も実行されません。

新旧を併用できる期間が長引くと、慣れたほうへ戻ります。人は忙しいとき、必ず慣れた方法を選びます。

移行期間は必要ですが、「◯月◯日でExcelでの受付は終了します」と日付を明示してください。

目安は1〜2か月です。それ以上長いと、切り替えの機運が失われます。

5|困りごとを集める場を作る

稼働直後は、必ず不満と困りごとが出ます。

これを言える場がないと、不満は水面下にたまり、やがて「使わない」という行動になって表れます。

形式は問いません。週1回5分の朝礼でも、共有のメモでも構いません。重要なのは、出た意見のうち1つでも実際に直すことです。

1つ直れば「言えば変わる」と伝わります。何も変わらなければ、二度と意見は出てきません。

稼働後の3か月をどう過ごすか

定着するかどうかは、最初の3か月でほぼ決まります。

時期やること見るべき指標
稼働〜2週間毎日声をかけ、つまずきを拾う操作でつまずいた箇所
2週間〜1か月出てきた要望を仕分けし、直せるものを直すログイン率、入力件数
1〜2か月旧方式を止め、完全に切り替える旧方式の利用が残っていないか
2〜3か月作業時間を測り、導入前と比べる作業時間、ミス件数

ここで「ログイン率」を見るのは有効です。

使われていない人がいれば、その人に何が起きているかを聞きに行けます。全体の平均だけを見ていると、一部の人が完全に離脱していることに気づけません。

マニュアルは「作る」より「使われる」を考える

立派なマニュアルを作ったのに、誰も読まない。よくあることです。

読まれるマニュアルには、共通点があります。

読まれないマニュアル読まれるマニュアル
全機能を網羅した数十ページよく使う操作だけの1〜2ページ
機能ごとに説明されている業務の流れに沿って書かれている
文章で説明されている画面の写真に矢印と番号が付いている
共有フォルダの奥にあるデスクに紙で貼ってある
作って終わり質問が出るたびに追記されている

最初から完璧なものを作る必要はありません。

質問された内容をその都度追記していくほうが、実際に必要とされている情報が集まります。

現場に合わせる工夫が、定着を左右する

設計の段階で、現場の実態に合わせておくことも定着に直結します。

配車から請求・入金までをクラウド化した運送会社の事例では、次のような配慮を行いました。

  • 使い慣れたExcelでの出力を残した。社外の担当者も、慣れた形式で手元に残せる安心感がある
  • 既存の請求書のレイアウトを忠実に再現した。取引先ごとに見慣れた書式があり、変わると先方への説明が必要になる
  • 見た目より「迷わず操作できるか」を優先した。日々触るのは現場の担当者だから
  • 検索と絞り込みの使い勝手にこだわった。件数が多い月でも目的の情報をすぐ探せるように

特に1つ目は、一見すると「せっかくシステム化したのに」と思える判断です。

しかし、慣れた形式を残すことが、移行への抵抗を下げることがあります。全部を一度に変えないという考え方です。

この事例の詳細は、以下のページでご覧いただけます。

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定着でよくある失敗

稼働日をゴールにしてしまう

稼働で気が緩み、担当者も通常業務に戻ってしまう。

しかし現場にとっては、稼働日がスタートです。稼働後3か月ぶんの工数を、最初から計画に入れておいてください。

繁忙期に稼働させる

忙しい時期に新しいやり方を始めると、まず定着しません。

覚える余裕がなく、少しでも詰まれば旧方式に戻ります。繁忙期・決算期・大型案件の時期は避けてください。

最初のデータが汚い

移行したデータに誤りや重複があると、初日から信用を失います。

一度「このシステムの数字は当てにならない」と思われると、その印象を覆すのは非常に困難です。

移行前のデータ整理は、地味ですが最も投資対効果の高い作業のひとつです。

「使わない人」を放置する

1人でも旧方式を続けている人がいると、その周辺から崩れます。

責めるのではなく、理由を聞きに行ってください。使えない理由があるはずで、それは他の人も感じている可能性が高いです。

明日からできる3つのこと

  1. 各部署の「聞ける人」を1名ずつ決める
    ITに詳しい人より、話しかけやすい人を選びます。
  2. 旧方式を止める日を決めて周知する
    1〜2か月後の具体的な日付を出します。
  3. 困りごとを聞く5分の時間を、週1回作る
    出た意見のうち1つは必ず直してください。

よくある質問

ベテラン社員が新しいやり方を受け入れません

反対の理由を具体的に聞くところから始めてください。

多くの場合、その人は業務に精通しており、指摘が正しいことがあります。「この操作だと、この例外に対応できない」といった具体的な指摘なら、設計を直すべきです。

一方、慣れの問題であれば、その人を最初の説明対象にし、意見を反映する形で巻き込むと状況が変わることがあります。

教育にどれくらい時間をかけるべきですか?

集合研修は1回1時間程度で十分です。

それより、稼働後2週間、毎日声をかけるほうが効果があります。人は使いながらでないと覚えられません。

定着したかどうかは、どう判断すればいいですか?

次の3つが揃えば、定着したと考えてよいでしょう。

  • 対象者全員が、日常的に使っている
  • 旧方式が完全になくなっている
  • 現場から改善の要望が出てくる

3つ目は意外に思えるかもしれませんが、重要な指標です。要望が出るということは、使い込んでいる証拠だからです。

まとめ|作ることより、使われることが難しい

  • 導入の失敗は「動かない」より「使われない」ほうが多い
  • 入力する人にも見返りがあるかを確認する
  • 最初の1回を、実際の業務の場で一緒にやる
  • 旧方式を止める日を、日付で明示する
  • 出てきた意見は、1つでも実際に直す

定着したら、次は本当に効果が出たのかを確かめる番です。

「なんとなく便利になった」で終わらせないために、何をどう測るのか。次回はこのテーマを扱います。

【連載】IT・DX経営改善コラム 全14回

経営課題の整理から、業務の見直し、システムの選定・導入・定着、効果測定、継続的な改善まで。中小企業がDXを進める一連の流れを14回に分けて解説しています。

  1. システム導入前に経営課題を整理する方法
  2. 業務の見える化の進め方|現状分析(As-Is)
  3. To-Be(理想の業務)の描き方
  4. DX施策の優先順位の決め方
  5. その業務、本当に必要ですか?
  6. 中小企業のDXは小さく始める
  7. 業務課題の解決手段は7つある
  8. 要件定義は3層で考える
  9. 経営者・現場・システム会社の認識がズレる理由
  10. システム開発の丸投げが失敗する理由
  11. 良いシステムが現場で使われない理由
  12. DXの効果測定|KGI・KPIの決め方
  13. システム導入はゴールではない
  14. 中小企業のDX推進ロードマップ(総まとめ)

みんなシステムズでは、稼働後の定着支援まで含めてご相談を承っています。「導入したが現場で使われていない」という状況からのご相談も可能ですので、お気軽にお問い合わせください。

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