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DX・業務改善 2026.08.11

DXの効果測定|KGI・KPIの決め方と導入前に測るべき5項目

IT・DX経営改善コラム 第12回|DXの効果測定とKGI・KPIの決め方

「システムを入れて、どうなりました?」

この質問に、「まあ、便利にはなりましたね」としか答えられない会社は少なくありません。

本当に便利になったのかもしれません。ただ、それを示す材料がないと、次の投資判断ができません。

効果測定ができないと、DXは1回きりの取り組みで終わります。

この記事では、何を、いつ、どう測るかを解説します。定着の進め方については、良いシステムが現場で使われない理由|導入後の定着を進める5つの方法をご覧ください。

目次

KGIとKPIは何が違うのか

効果測定の話には、必ずこの2つの言葉が出てきます。難しくありません。

用語意味例確認の頻度
KGI(最終目標)最終的に達成したい成果利益率を3%改善する半年〜1年
KPI(中間指標)そこへ向かっているかを測る数字月末集計を20時間から5時間に毎月

KGIは会社が達成したいこと、KPIはその手前にある、動かせる数字だと考えてください。

利益率は、直接どうにかできるものではありません。しかし作業時間や入力ミスの件数なら、現場の取り組みで動かせます。

KPIは「つながっているか」で選ぶ

KPIを選ぶときの基準は、ただ一つです。

その数字が良くなったら、KGIも良くなると言えるか。

KGI良いKPIつながりの薄いKPI
利益率を改善する間接業務の作業時間システムのログイン回数
受注増に耐える体制を作る1件あたりの処理時間登録されたデータ件数
顧客対応の質を上げる問い合わせから回答までの時間顧客情報の登録項目数
事業継続のリスクを下げるその業務を担当できる人数マニュアルのページ数

右側の指標は、測れば数字は出ます。しかし、増えたところで会社が良くなるとは限りません。

測りやすい数字ではなく、意味のある数字を選んでください。

導入前に測らないと、効果は測れない

これが、効果測定における最大の落とし穴です。

導入後に「作業時間は何分ですか」と聞いても、比較する相手がありません。導入前の数字がなければ、何も証明できません。

しかも、人の記憶は当てになりません。「前は1時間くらいかかっていた気がする」という証言は、根拠として使えません。

最低限、測っておくべき5項目

すべてを測る必要はありません。次の5つで足ります。

項目測り方手間
対象作業の時間1週間、担当者にメモしてもらう小
月間の処理件数既存の台帳やファイルから数える小
ミス・差し戻しの件数1か月、発生のたびに記録する中
問い合わせ件数1週間、電話やメールの件数を数える小
その業務ができる人数数えるだけなし

厳密でなくて構いません。桁が合っていれば、比較の材料としては十分です。

要件定義の段階で、この計測を並行して進めてください。開発が始まってからでは、比較対象が失われます。

業種別|設定するKGIとKPIの例

業種KGIKPI
製造業欠品による納期遅延をなくす在庫の実数と帳簿の差異件数/欠品発生回数
地方ホテル客室稼働率を5%上げる予約の反映までの時間/ダブルブッキング件数
建設会社監督1人あたりの担当現場数を増やす事務作業に使う時間/写真整理にかかる時間
小売業過剰在庫による資金の固定化を減らす在庫回転日数/発注の修正回数
士業事務所単価の高い業務に使う時間を増やす進捗確認への対応件数/資料を探す時間
バックオフィス間接業務の人件費を抑える月末処理の時間/残業時間/請求誤り件数

KPIは、1つのKGIに対して2〜3個が適量です。

多すぎると管理が形骸化します。毎月見る数字が10個もあると、誰も見なくなります。

いつ測るか|3つのタイミング

時期見るもの判断すること
稼働1〜3か月使われているか、困っていないか定着の問題があれば対処する
稼働6か月KPIが動いたか効果が出ていなければ原因を探る
稼働1年KGIへの影響、投資の回収状況次の投資に進むか、改善を続けるか

注意したいのは、稼働直後に効果を測らないことです。

操作に慣れていない時期は、むしろ作業時間が増えます。ここで「効果がない」と判断すると、正しく評価できません。

最初の1〜3か月は、効果ではなく定着の状況を見る期間だと考えてください。

効果が出ていないとき、何を疑うか

半年経ってもKPIが動かない場合、原因は次のどれかです。

原因確かめ方対処
そもそも使われていない利用状況を確認する定着の取り組みに戻る
旧方式と併用しているExcelがまだ使われていないか見る旧方式を止める日を決める
別の作業が増えた現場に何が増えたか聞く入力項目や手順を見直す
ボトルネックが別にあった業務全体の時間を測り直す本当の課題を特定し直す
KPIの選び方が悪いKGIとのつながりを再確認する指標を選び直す

4番目の「ボトルネックが別にあった」は、よくあります。

入力作業を半分に減らしたのに、全体の処理日数が変わらない。調べてみると、実は承認待ちの時間が大半を占めていた——このようなケースです。

これは失敗ではなく、次に手を付けるべき場所が分かったということです。測っていなければ、この発見もありませんでした。

数字に表れない効果も記録する

すべての効果が数字になるわけではありません。

  • 担当者が休んでも業務が止まらなくなった
  • 顧客から「対応が早くなった」と言われた
  • 新人への引き継ぎが短期間で済むようになった
  • 月末の張り詰めた雰囲気がなくなった
  • 経営者が数字をすぐ確認できるようになった

こうした変化は、投資判断の材料としては弱いものの、社内で次の取り組みを進めるときの説得力になります。

数字と一緒に、現場の声も記録しておいてください。

効果測定でよくある失敗

導入前の数字を取っていない

最も多く、最も取り返しがつかない失敗です。

稼働してから気づいても、もう測れません。要件定義と並行して測ってください。

効果を大きく見せようとする

報告のために数字を良く見せると、次の判断を誤らせます。

効果が想定より小さかったなら、そう報告してください。なぜ小さかったかの分析のほうが、次に活きます。

測ることが目的になる

指標を増やしすぎると、測る作業自体が負担になります。

新しい報告書を作るために現場の時間が増えたら、本末転倒です。指標は3つまで、と決めてしまうくらいでちょうどよいでしょう。

測りっぱなしにする

数字を集めても、それを見て何かを決めなければ意味がありません。

月次で確認し、動いていなければ原因を探す。この一往復があって、はじめて測定が改善につながります。

明日からできる3つのこと

  1. KGIを1つ、文章で書く
    「利益率を3%改善する」のように、会社として達成したいことを書きます。
  2. それにつながるKPIを2〜3個選ぶ
    「良くなればKGIも良くなる」と言えるかを基準にします。
  3. 今週、対象作業の時間を測り始める
    導入前の数字は、今しか取れません。

よくある質問

投資の回収期間は、どのくらいが妥当ですか?

中小企業の業務システムであれば、2〜3年が一つの目安です。

初年度は初期費用がかかるため、効果が費用を下回ることがよくあります。2年目以降で判断してください。

具体的な計算方法は、システム開発の費用対効果|ROI計算と中小企業の成功事例で解説しています。

作業時間が減っても、人は減らせません

その通りで、中小企業では人員削減という形にはなりにくいものです。

効果は、「増員せずに受注増に対応できた」「残業代が減った」「採用しなくても回った」という形で表れます。

これらも立派な、金額に換算できる効果です。

誰が測定を担当すべきですか?

推進担当者が集め、経営者が確認する形が現実的です。

ただし、経営者が定期的に見ていることが現場に伝わることが重要です。誰も見ない数字は、やがて集められなくなります。

まとめ|測っていないものは、改善できない

  • KGIは達成したい成果、KPIはそこへ向かう途中で動かせる数字
  • KPIは「良くなればKGIも良くなるか」で選ぶ
  • 導入前の数字がなければ、効果は証明できない
  • 稼働直後は効果ではなく、定着の状況を見る
  • 効果が出ていない原因の分析が、次の改善につながる

効果を測ったら、その結果をどう次に活かすか。

システム導入はゴールではなく、ここからが本当の始まりです。次回は、稼働後の改善サイクルを扱います。

【連載】IT・DX経営改善コラム 全14回

経営課題の整理から、業務の見直し、システムの選定・導入・定着、効果測定、継続的な改善まで。中小企業がDXを進める一連の流れを14回に分けて解説しています。

  1. システム導入前に経営課題を整理する方法
  2. 業務の見える化の進め方|現状分析(As-Is)
  3. To-Be(理想の業務)の描き方
  4. DX施策の優先順位の決め方
  5. その業務、本当に必要ですか?
  6. 中小企業のDXは小さく始める
  7. 業務課題の解決手段は7つある
  8. 要件定義は3層で考える
  9. 経営者・現場・システム会社の認識がズレる理由
  10. システム開発の丸投げが失敗する理由
  11. 良いシステムが現場で使われない理由
  12. DXの効果測定|KGI・KPIの決め方
  13. システム導入はゴールではない
  14. 中小企業のDX推進ロードマップ(総まとめ)

みんなシステムズでは、効果測定の設計からご相談を承っています。「何を指標にすべきか分からない」という段階でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。

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