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システム開発基礎 2026.08.11

業務課題の解決手段は7つある|Excel改善からスクラッチ開発までの選び方

IT・DX経営改善コラム 第07回|業務課題の解決手段は7つある

課題が決まり、業務も整理できた。いよいよ実現手段を選ぶ段階です。

ここで多くの会社が、いきなり「システム開発会社に相談する」か「SaaSを探す」の二択で考え始めます。

しかし実際には、業務課題を解決する手段は7つあります。

そして、その多くはシステム開発より安く、速く、後から変えやすい方法です。

この記事では、7つの選択肢を並べて比較し、どういう条件でどれを選ぶかを整理します。小さく始める考え方については、中小企業のDXは小さく始める|試験導入から横展開までの進め方をご覧ください。

目次

解決手段は「作る」だけではない

まず、選択肢の全体像を並べます。

手段費用の目安導入期間自由度
1. 今のExcelを改善するほぼゼロ即日〜数日低い
2. クラウド表計算へ移す月数百円/人数日〜2週間低い
3. ノーコードツール月数千円〜数万円2週間〜2か月中
4. SaaS(クラウドサービス)月数千円〜数万円/人1〜3か月中
5. パッケージソフト数十万〜数百万円2〜6か月中
6. 既存システムをつなぐ数十万〜数百万円1〜4か月中
7. スクラッチ開発数百万円〜4か月〜1年高い

下に行くほど自由度が上がり、費用と期間も増えます。

大事なのは、自由度が高いことは、必ずしも良いことではないという点です。自由度が高いほど、決めるべきことが増え、判断の責任も自社に返ってきます。

なお、SaaSとスクラッチ開発の費用を5年間の総額で比較した記事もあります。金額面を詳しく検討したい場合は、【5年間コスト比較】SaaSパッケージ vs スクラッチ開発|費用と柔軟性の真実をご覧ください。

7つの選択肢の向き・不向き

1|今のExcelを改善する

最も軽視されている選択肢です。

入力規則を設定する、シートを分ける、不要な列を消す、集計を関数で済ませる。これだけで解決する課題は実際にあります。

  • 向いている:使う人が数名、件数が月数百件まで、社内で完結する業務
  • 向いていない:同時に複数人が編集する、履歴を追う必要がある、社外と共有する

2|クラウド表計算へ移す

ファイルをクラウド上の表計算サービスへ移すだけで、「同時編集できない」「最新版が分からない」という問題は解消します。

費用はほぼかからず、操作感も大きく変わりません。Excelの限界のうち、共有まわりだけが問題なら最有力候補です。

  • 向いている:共有と同時編集が主な課題、拠点が分かれている
  • 向いていない:データ量が多い、入力ミスを構造的に防ぎたい、権限を細かく分けたい

3|ノーコード・ローコードツール

プログラムを書かずに、画面や入力フォーム、簡単な業務の流れを組み立てられるサービスです。

自社で作り、自社で直せるのが最大の利点です。ただし、社内に触れる人がいないと、結局動かなくなります。

  • 向いている:自社に少しITに強い人がいる、業務の変化が速い、まず試したい
  • 向いていない:複雑な計算や連携がある、扱う件数が非常に多い、担当が完全に不在

4|SaaS(クラウドサービス)

月額で使う既製のサービスです。会計、勤怠、販売管理、予約など、分野ごとに多数あります。

すぐ使え、機能追加も自動で行われます。まずここで足りるかを確認するのが基本です。

  • 向いている:一般的な業務、標準的な進め方に合わせられる、早く始めたい
  • 向いていない:自社独自の流れが多い、他システムとの連携が複雑、利用人数が多くて月額が膨らむ

SaaSで対応しきれなくなる典型的なパターンは、kintoneで「これができない」は危険サイン|中小企業が陥るSaaS限界の7パターンにまとめています。

5|パッケージソフト

業界向けに作り込まれた既製システムを導入し、設定やカスタマイズで自社に合わせます。

業界特有の帳票や商習慣に最初から対応している点が強みです。

  • 向いている:業界標準の業務に近い、法制度への対応を任せたい
  • 向いていない:カスタマイズが多くなりすぎる、更新のたびに追加費用が発生する

注意点として、カスタマイズ費用が本体価格を超え始めたら、方式の選び直しを検討すべきサインです。

6|既存システムをつなぐ

今あるものを作り替えず、間をつなぐ方法です。

システム同士を連携させる、繰り返し作業を自動化する、といった手段があります。今のシステムに大きな不満がなく、つなぎ目だけが問題なら有力です。

  • 向いている:個別のシステムは使えている、転記作業だけが負担になっている
  • 向いていない:元のシステム自体が古くて限界、つなぐ相手が連携に対応していない

7|スクラッチ開発

自社の業務に合わせて専用に作る方法です。

費用も期間もかかりますが、他の6つで解決できない課題は、これでしか解決できません。

  • 向いている:業務の流れが独自、複数の立場が絡む、高いセキュリティ要件がある、事業の中核そのもの
  • 向いていない:一般的な業務、要件が固まっていない、社内に判断できる人がいない

選ぶ順番|上から順に検討する

7つの選択肢は、上から順に「できない理由」を探していくのが正しい進め方です。

いきなり7番から検討すると、本来1番で済んだ課題に数百万円をかけることになります。

検討する順問い次へ進む条件
1. Excel改善今のやり方の工夫で足りるか同時編集・履歴・件数で無理がある
2. クラウド表計算共有の問題だけか入力ミスや権限の問題が残る
3. ノーコード自社で作って直せるか触れる人がいない、複雑すぎる
4. SaaS既製サービスで足りるか独自の流れに合わない
5. パッケージ業界向け製品で足りるかカスタマイズ費が膨らむ
6. 連携・自動化今あるものをつないで済むか元のシステムに限界がある
7. スクラッチここまで来たら開発を検討する—

この順番で検討すると、スクラッチ開発を選ぶ場合も「なぜ他ではだめなのか」を説明できる状態になります。

これは社内の稟議でも、開発会社との打ち合わせでも、極めて強い材料になります。

判断を分ける4つのポイント

どこで線を引くか迷ったときは、次の4点を見てください。

観点軽い側重い側(開発が必要になりやすい)
件数月数百件まで月数千件以上、または急増する
独自性他社と同じやり方でよい自社固有の商習慣・計算ルールがある
関係者社内だけで完結取引先・外部専門家など複数の立場が絡む
記録の要件今の状態が分かればよい誰がいつ何をしたかを残す必要がある

3つ目の「関係者」は特に判断を分けます。

社内だけなら既製サービスで足りることが多いのですが、社外の相手が同じ画面を使う場合、権限の設計や見せる範囲の制御が必要になり、既製品では対応しきれないことが増えます。

【事例】既製品では要件を満たせなかったケース

医療機関どうしで検査装置の空き枠を融通し合う、予約プラットフォームの事例です。

「予約システム」と聞くと、既製のサービスで足りそうに思えます。しかし、この案件では次の条件が重なっていました。

  • 1つの組織が「依頼する側」と「引き受ける側」の両方の立場を持つ。同じアカウントで両方の運用ができる必要があった
  • 予約する本人がログインしない。医療機関のスタッフが代理で入力する業務フローだった
  • 傷病名や既往歴といった要配慮個人情報を扱う。一般的な予約システムと同じ水準では要件を満たせなかった
  • 検索の単位が行政区分ではなかった。医療業界の実務で使われる地域区分に合わせる必要があった

結果として、二要素認証を全機能の前提に置き、情報を暗号化して保存し、全操作の記録を残す構成で開発しています。

「複数の立場」「代理入力」「高いセキュリティ要件」「業界固有のルール」——この4つが重なると、既製品では届かなくなります。

逆にいえば、これらが当てはまらない業務は、既製サービスで足りる可能性が高いということでもあります。

この事例の詳細は、以下のページでご覧いただけます。

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医療機関間の検査予約システム開発事例|電話・FAXの空き枠調整をWeb化 医療機関どうしで検査装置の空き枠を融通し合う検査予約システムのスクラッチ開発事例。電話・FAXが中心だった紹介・予約のやり取りをWeb化し、空き枠確認から予約までを一元化した課題・アプローチ・主な機能をご紹介します。

手段選びでよくある失敗

最初から「開発ありき」で相談する

開発会社に「システムを作りたい」と相談すれば、作る前提の話が進みます。

相談するなら、「この課題を解決したい。方法は問わない」と伝えてください。信頼できる会社であれば、既製サービスで足りる場合はそう言います。

月額費用を人数で掛け算していない

1人あたり月3,000円のサービスも、50人で使えば年間180万円です。

数年使えば開発費を上回ることもあります。利用人数が多い場合は、5年分の総額で比べてください。

「あとでカスタマイズすればいい」と考える

既製品のカスタマイズは、できる範囲が決まっています。

導入後に「そこは変えられません」と言われるケースは非常に多く、しかもその時点では引き返せません。絶対に譲れない条件は、契約前に実機で確認してください。

データを外に出せるか確認していない

将来、別の方法へ移る可能性は必ずあります。

そのとき、蓄積したデータを取り出せないと乗り換えられません。どの手段を選ぶ場合も、データの書き出し方法を最初に確認しておいてください。

明日からできる3つのこと

  1. 今の課題に、1番から順に当てはめてみる
    「なぜExcel改善では解決しないのか」を言葉にできるか試します。
  2. 件数・独自性・関係者・記録要件の4点を書き出す
    重い側にいくつ当てはまるかで、必要な手段の重さが分かります。
  3. 候補のサービスでデータ書き出しができるか調べる
    公式サイトの仕様ページか、問い合わせで確認できます。

よくある質問

複数の手段を組み合わせてもいいですか?

むしろ、それが現実的な形です。

会計は既製のサービス、独自性の高い受注管理だけ開発、その間を連携でつなぐ。中小企業ではこうした組み合わせがよく採用されます。

すべてを1つのシステムに統合しようとすると、かえって高くつきます。

ノーコードで作ったものは、後で作り直しになりますか?

作り直しになることはありますが、無駄にはなりません。

実際に使ってみることで、必要な項目や業務の流れがはっきりします。それ自体が、次の要件定義の材料になります。

どの手段が良いか、社内で判断できません

判断に必要なのは技術知識ではなく、自社の業務条件を正確に説明できることです。

件数、関係者、独自ルール、記録の必要性。これらを整理して相談すれば、外部の専門家でも判断できます。逆にここが曖昧だと、誰に聞いても答えは出ません。

まとめ|安い手段から順に、できない理由を探す

  • 解決手段は7つある。開発は最後の選択肢
  • 上から順に「できない理由」を探すと、過剰投資を避けられる
  • 件数・独自性・関係者・記録要件の4点で重さを判断する
  • 利用人数が多い場合は、月額を5年分で比較する
  • どの手段でも、データを取り出せるかを先に確認する

手段が決まったら、次は何を作るのかを具体的に決める段階です。

ここでよくある失敗が、「こんな画面が欲しい」から始めてしまうこと。次回は、要件を3つの層に分けて整理する方法を扱います。

【連載】IT・DX経営改善コラム 全14回

経営課題の整理から、業務の見直し、システムの選定・導入・定着、効果測定、継続的な改善まで。中小企業がDXを進める一連の流れを14回に分けて解説しています。

  1. システム導入前に経営課題を整理する方法
  2. 業務の見える化の進め方|現状分析(As-Is)
  3. To-Be(理想の業務)の描き方
  4. DX施策の優先順位の決め方
  5. その業務、本当に必要ですか?
  6. 中小企業のDXは小さく始める
  7. 業務課題の解決手段は7つある
  8. 要件定義は3層で考える
  9. 経営者・現場・システム会社の認識がズレる理由
  10. システム開発の丸投げが失敗する理由
  11. 良いシステムが現場で使われない理由
  12. DXの効果測定|KGI・KPIの決め方
  13. システム導入はゴールではない
  14. 中小企業のDX推進ロードマップ(総まとめ)

みんなシステムズでは、手段が決まっていない段階からのご相談を歓迎しています。「開発すべきか、既製サービスで足りるか」の判断からお手伝いできますので、お気軽にお問い合わせください。

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