内製とテスト代行の役割分担|責任範囲を決める5ステップ

内製チームとテスト代行会社を併用すると、テストの負荷を分散できます。
専門家の視点も取り入れられます。
一方で、作業だけを分けても体制は機能しません。
「誰が判断するか」まで決めないと、抜けや二重作業が生じます。
役割分担では、作業の担当と判断の責任を分けます。
品質とリリースの最終判断は、内製側に残します。
この記事では、役割分担を決める5ステップを解説します。
工程別の分担例やRACI表も、そのまま検討に使えます。
内製とテスト代行の役割分担は「作業」と「判断」を分ける
最初に分けるべきものは、作業の担当と判断の責任です。
両者を一つにすると、境界にある仕事が宙に浮きます。
テスト代行会社は、合意した範囲を設計して実行できます。
結果の報告や再テストも担当できます。
内製側は、事業や利用者への影響を判断できます。
範囲の承認や優先度は、内製側が決めます。
| 区分 | おもな内容 | 担当の目安 |
|---|---|---|
| 作業 | テストケース作成、実行、結果報告、再テスト | テスト代行会社へ委託できる |
| 専門判断 | 不具合か仕様かの判定、修正方針の決定 | 内製QAと開発者 |
| 事業判断 | 残るリスクの受容、リリース可否の決定 | 内製PM |
PMはプロジェクトマネージャーを指します。
QAは品質保証を担う役割です。
以降は「内製PM」と「内製QA」に表記を統一します。
内製か外注かを未定なら、先に判断の基準を整理しましょう。
テストの内製と外注はどちらが得か|判断の物差しで確認できます。
つまり、外注する範囲が広くても、品質判断まで手放す必要はありません。
この原則が、以降の線引きの土台です。
役割分担を決める5ステップ
役割分担は、5ステップで決めると抜けを防げます。
工程だけでなく、成果物と判断まで順に具体化できるためです。
STEP1|テストの目的と対象をそろえる
最初に、確かめる品質と対象範囲を合意します。
目的が違えば、同じ機能でも必要なテストが変わります。
- 対象にする機能、端末、ブラウザー
- 対象外にする機能と、その理由
- 性能、使いやすさ、セキュリティなどの品質観点
- 開始条件、完了条件、中断条件
たとえば、決済機能では正常終了だけでは足りません。
二重送信や通信切断も、対象に含めるか決めます。
目的と対象を1枚にまとめます。
見積もりと結果を、同じ基準で評価できます。
STEP2|工程と成果物を分ける
次に、工程を成果物の単位まで分けます。
「システムテストを外注する」だけでは、作業の境目が見えないためです。
- テスト計画書の作成と承認
- テストケースの作成とレビュー
- 環境とテストデータの準備
- テストの実行と証跡の保管
- 不具合の起票、判定、修正確認
- 完了報告とリリース判定
各項目に「作る人」と「承認する人」を置きます。
これで、作成済みなのに承認されない事態も防げます。
工程ごとの外注範囲には、6つの判断軸があります。
テストの工程別外注|切り分けの判断軸6つで確認できます。
STEP3|RACIで責任者を1人に決める
タスクごとの責任は、RACIで決めます。
RACIとは、4種類の関わり方を整理する枠組みです。
- R(実行担当):手を動かして作業する人
- A(承認責任者):最終判断をして説明責任を負う人
- C(相談先):判断の前に意見を求める人
- I(報告先):決定や結果の共有を受ける人
Aは、1タスクにつき1人にします。
2人を置くと、意見が割れたときに最終判断が止まります。
| タスク | 内製PM | 内製QA | テスト代行会社 |
|---|---|---|---|
| テスト計画の承認 | A | R | C |
| テストケースの作成 | I | A | R |
| テスト環境の準備 | I | A/R | C |
| テストの実行 | I | A | R |
| 不具合の起票 | I | A | R |
| 不具合の優先度決定 | C | A/R | C |
| リリース判定 | A | R | I |
この表は一例です。
契約や組織に合わせて変えてください。
大切なのは、Aの重複と不在をなくすことです。
STEP4|受け渡し条件を文書にする
担当間の受け渡し条件は、口頭ではなく文書にします。
境界で起きる待ち時間は、前提の違いから生まれるためです。
| 受け渡すもの | 完了条件の例 | 受け取る側 |
|---|---|---|
| 仕様書 | 版番号と変更履歴があり、未決事項が明記されている | テスト代行会社 |
| テスト環境 | 接続を確認し、必要な権限とデータがそろっている | テスト代行会社 |
| 不具合報告 | 再現手順、期待結果、実際の結果、証跡がある | 内製QA |
| 完了報告 | 実行数、合格数、未実行数、残る不具合がある | 内製PM |
たとえば、仕様書に未決事項が残る場合は、回答期限と回答者も記します。
受け渡し条件があれば、着手の可否を双方が判断できます。
STEP5|契約書と運用資料をそろえる
最後に、合意した分担を文書へ反映します。
資料ごとに内容が違うと、問題が起きた際に解釈が割れます。
- 契約書やSOWに、対象範囲と対象外を記す
- RACI表に、担当者名と更新日を記す
- 連絡ルールに、手段と期限を記す
- 完了条件に、承認者と必要な証跡を記す
SOWは「作業範囲記述書」です。
委託する作業や成果物を、契約の一部として示します。
5つの結果を一式で保管すれば、契約上の範囲と日々の運用をそろえられます。
テストレベル別の役割分担例
工程別の分担は、必要な知識と判断権限で決めます。
すべてを一律に内製か外注へ寄せる必要はありません。
| テストレベル | 主担当の目安 | 内製側に残す役割 | テスト代行会社の役割 |
|---|---|---|---|
| 単体テスト | 内製 | 実装とテストコードの保守 | 自動化の仕組みづくりを支援 |
| 結合テスト | 内製と外注 | 仕様提供、原因の切り分け | テストケース作成、実行 |
| システムテスト | 外注中心 | 業務知識の提供、結果の承認 | 利用者目線での設計、実行 |
| 受入テスト | 内製 | 業務上の合否と受入判断 | 実行、証跡作成を支援 |
単体テストは内製を基本にする
単体テストは、内製の開発者が担う形を基本にします。
コードの構造を知る人ほど、異常な分岐を見つけやすいためです。
外部の支援は、自動テストの基盤づくりに向きます。
実装とテストコードの保守責任は、内製側に残します。
結合テストは知識と実行を分ける
結合テストは、内製と外注の協業に向きます。
内製は内部仕様を説明し、外注は組み合わせの観点を広げられます。
たとえば、画面とAPIのデータ不一致が出たとします。
外注が証跡を取り、内製の開発者が原因を切り分けます。
このように、発見と原因調査を分ければ、専門性を生かしやすくなります。
システムテストは外注範囲を広げやすい
システムテストは、テスト代行会社を主担当にしやすい工程です。
第三者の視点で、業務の流れ全体を確認できるためです。
内製側は、業務説明と質問への回答を担います。
結果を受け入れる基準も、開始前に承認します。
受入テストの合否は内製側が決める
受入テストの合否は、内製側が決めます。
受入は「業務で使えるか」という事業上の判断だからです。
テスト代行会社には、操作や証跡の作成を依頼できます。
残る不具合を受け入れる判断は、内製PMが行います。
情報共有は「誰が・いつ・どこへ・何を」で決める
役割分担には、情報共有のルールも必要です。
担当者が決まっても、必要な情報が届かなければ動けないためです。
| 情報 | 共有する人 | 期限 | 共有先と内容 |
|---|---|---|---|
| 仕様変更 | 変更を決めた内製担当 | 決定した当日 | 課題管理ツールへ理由と影響範囲を記す |
| 環境変更 | 環境を変える担当 | 作業の前日まで | 共有チャネルへ停止時間と変更内容を記す |
| 既知の不具合 | 不具合を見つけた担当 | 判明した当日 | 不具合一覧へ再現条件と回避策を記す |
| 作業の遅れ | 遅れを把握した担当 | 予定との差が出た時点 | 内製PMへ影響と回復案を伝える |
期限は案件に合わせて変えてかまいません。
「分かり次第」などの表現は避けます。
情報の正本は1か所に決めます。
チャットは通知に使います。
決定事項は、課題管理ツールへ残します。
情報の種類ごとに4点を決めれば、古い仕様でテストする事故を防げます。
品質の最終責任は内製側が持つ
テストを委託しても、最終責任は内製側に残ります。
事業上の損失を受け入れる権限は、発注側にあるためです。
テスト代行会社は、契約した範囲の実行品質に責任を持ちます。
内製側は範囲を承認し、リリースを判断します。
| 論点 | テスト代行会社 | 内製側 |
|---|---|---|
| 合意したテストの実施 | 実行して証跡を出す | 結果を確認する |
| テスト範囲の妥当性 | 不足を助言する | 承認する |
| 不具合の事業影響 | 事実を報告する | 評価する |
| 残るリスクの受容 | 判断材料を出す | 決定する |
| リリース可否 | 結果を報告する | 最終決定する |
たとえば、契約外の端末で不具合が出ても、代行会社だけの責任とは言えません。
対象外を承認した内製側にも、判断の責任があります。
契約範囲と最終責任を分けておけば、問題の原因を事実にもとづいて振り返れます。
役割分担が崩れる5つの失敗例
失敗は、作業よりも境界の判断で起きます。
次の5例を確認すると、自社の分担表の穴を見つけやすくなります。
- 作業が宙に浮く:双方が相手の担当だと考え、着手されない
- 仕様変更が届かない:テスト代行会社が旧版の仕様書でテストする
- 不具合判定が止まる:仕様か不具合かを決める人がいない
- 優先度がずれる:利用者への影響が報告に含まれていない
- リリースが決まらない:承認責任者が2人以上いる
例として、テストケースだけを外注したとします。
レビュー担当がなければ、実行前の承認で作業が止まります。
RACIと受け渡し条件を照合すれば、5つの失敗を開始前に減らせます。
体制を見直すタイミングと手順
役割分担は、節目と異常の発生時に見直します。
開発が進むと、必要な知識や作業量が変わるためです。
| タイミング | 確認すること |
|---|---|
| 結合テストへ移る前 | 実装上のリスクがテストケースへ反映されたか |
| 仕様を変更したとき | 対象範囲、RACI、旧テストケースを更新したか |
| 不具合件数が想定から外れたとき | 観点、環境、報告ルールに問題がないか |
| 予定より1営業日以上遅れたとき | 未着手の作業や承認待ちがないか |
| リリース判定の前 | 未実行と残る不具合の責任者が明確か |
「件数が増えたら」では、見直す時期が人により変わります。
過去案件をもとに、件数や遅延日数で条件を決めます。
- RACI表と実際の担当を比べる
- 情報、技能、負荷のどこに原因があるかを分ける
- 担当、期限、支援する人を変更する
- RACI表の版を更新し、全員へ共有する
見直す条件と手順を先に決めれば、担当者の感覚だけで体制を変えずに済みます。
内製チームの当事者意識を保つ4つの工夫
委託後も、内製チームは結果へ関わります。
背景を伝え続ければ、テスト代行会社の判断材料も増えるためです。
- 重要機能は内製にも残す:決済などの事業リスクが高い機能を担当する
- 不具合を毎日確認する:内製QAが事実と優先度を確認する
- 週1回は合同で話す:開発者も参加し、仕様の背景を補う
- 改善を共同成果にする:見つけた不具合を設計や実装へ反映する
たとえば、同種の不具合が3件出たら、内製側が設計を振り返ります。
テスト代行会社には、修正後の結果まで共有します。
線引きは、相手との間に壁を作ることではありません。
責任を明確にし、必要な情報を渡すための接点です。
まとめ|責任範囲はRACIと受け渡し条件で線引きする
内製とテスト代行の併用では、作業と判断を分けて設計します。
品質とリリースの最終責任は、内製側に残します。
- 目的と対象をそろえる
- 工程を成果物の単位まで分ける
- RACIのAを1タスク1人にする
- 受け渡し条件を文書にする
- 契約書と運用資料をそろえる
線引きは、一度決めて終わりではありません。
工程の節目や異常の発生時に見直し、最新版を全員で共有します。
まずは現在の作業を一覧にしてください。
Aが2人いる項目と、Aがいない項目から直すと、判断の停滞を減らせます。
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