デバッグとは?テストとの違いと効率的な進め方・ツールを解説

デバッグとは?テストとの違いと効率的な進め方・ツールを解説

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「エラーは出ていないのに、計算結果だけが合わない」「テスト担当者から不具合報告が来たが、手元では再現しない」——ソフトウェア開発で最も時間を溶かすのが、この「原因がわからない」状態です。

デバッグ(デバグ)とは、この状態から抜け出し、欠陥の原因を突き止めて修正する活動を指します。そして実務で最もつまずきやすいのが、「テスト」と「デバッグ」を同じものだと思い込んでしまうことです。この2つは目的も担当者も成果物も異なる、まったく別の活動です。

この記事では、デバッグの意味と語源から、テストとの決定的な違い、標準的な6ステップの手順、現場で使えるデバッグ手法とツール、そして「再現しないバグ」への対処法までを、テスト代行の現場視点で整理して解説します。

目次

デバッグとは?意味をわかりやすく解説

デバッグ(debugging)とは、ソフトウェアの不具合(バグ/欠陥)について原因となっている箇所を特定し、修正し、修正が正しいことを確認するまでの一連の活動を指します。英語の「de-(取り除く)」+「bug(虫=不具合)」が語源で、直訳すれば「虫を取り除く」という意味です。

重要なのは、デバッグが「原因の追究」から始まる活動だという点です。画面上に見えている症状(例:合計金額が1円ずれる)は結果にすぎず、その裏には必ず原因となるコード上の欠陥(例:小数点の丸め順序の誤り)が存在します。症状を場当たり的に打ち消すのではなく、原因にたどり着いて修正することがデバッグの本質です。

「バグ」の語源はグレース・ホッパーと本物の蛾

「バグ」という言葉には有名な逸話があります。1947年、米ハーバード大学の電気機械式計算機「Mark II」が誤動作を起こしました。原因を調べたところ、リレー(継電器)の接点に本物の蛾(moth)が挟まっていたのです。作業チームはその蛾をテープで作業日誌に貼り付け、「First actual case of bug being found(バグが実際に発見された最初の事例)」と記録しました。この日誌は現在、スミソニアン協会の国立アメリカ歴史博物館に保管されています。

このチームにいたのが、後にCOBOLの開発に関わり「コンピュータ界のグランドマザー」と呼ばれるグレース・ホッパー(Grace Hopper)です。この逸話が「デバッグ(虫取り)」という言葉を技術用語として広めた、と語られることがよくあります。

ただし正確に言うと、機械の不具合を「bug」と呼ぶ用法自体はこれより古く、19世紀のトーマス・エジソンの書簡にも登場します。日誌に「actual case(実際の事例)」とわざわざ書かれているのは、当時すでに「バグ」が比喩表現として技術者の間で定着しており、「今回は比喩ではなく本物の虫だった」という技術者ジョークだったからだと考えられています。語源そのものというより、言葉を決定的に有名にしたエピソードと理解するのが実態に近いでしょう。

「デバッグ」と「デバグ」は同じ意味

検索していると「デバッグ」と「デバグ」の両方の表記を見かけますが、この2つはまったく同じものを指す表記ゆれです。意味の違いはありません。

  • デバッグ:英語 debug の発音に近い、促音「ッ」を入れた表記。Web記事や求人票、一般的な会話ではこちらが圧倒的多数
  • デバグ:促音を入れない表記。JIS規格や情報処理技術者試験の一部文献、学術系の書籍で採用されることがある
  • デバッガ/デバッガー:デバッグを支援するツールのこと。こちらも語尾の長音の有無で表記が揺れる

社内ドキュメントやテスト仕様書では、どちらか一方に表記を統一しておくと検索性が上がります。特に不具合管理システム(BTS)のチケット本文で表記が混在すると、後から「デバッグ」で検索したときに「デバグ」と書かれたチケットが漏れる、という地味な事故が起きます。


テストとデバッグの違い【この記事の最重要ポイント】

「テスト」と「デバッグ」は日常会話ではほぼ同義に使われますが、品質保証の世界では明確に区別されます。ソフトウェアテスト技術者資格認定であるJSTQB(ISTQB)のシラバスでも、両者は別の活動として定義されています。

テストは、故障(failure)が「存在すること」を示す活動である。デバッグは、その故障を引き起こしている欠陥(defect)を「見つけ、分析し、取り除く」開発活動である。

言い換えれば、テストは「どこかがおかしい」ことを発見する活動、デバッグは「なぜおかしいのか」を突き止めて直す活動です。テストは欠陥の存在を示せますが、欠陥がないことは証明できません。一方デバッグは、テストが見つけた症状を入口にして、コードの中の原因まで降りていきます。

テストとデバッグの違い早見表

比較項目テストデバッグ
目的欠陥の「存在」を発見する欠陥の「原因」を特定し修正する
問いの形「期待どおりに動くか?」「なぜ期待どおりに動かないのか?」
主な担当テスト担当者・QA・テスト代行開発者(実装者)
入力になるもの仕様書・要件・テスト観点不具合報告・ログ・再現手順
成果物テスト結果・不具合報告書修正コード・原因分析の記録
必要なコード知識ブラックボックスなら不要な場合も多い実装の内部構造の理解が必須
終了の判断テスト観点を消化し合格基準を満たしたとき原因を修正し確認テストが通ったとき
計画のしやすさ事前に工数を見積もりやすい原因次第で工数が大きくぶれる
自動化との相性高い(回帰テストとして繰り返せる)低い(人間の推論が中心)

なぜ「テスト=デバッグ」と誤解されるのか

小規模なチームでは、開発者が自分でテストして自分で直します。この場合、テストとデバッグが同じ人の頭の中で連続して起きるため、境界が意識されにくいのです。しかし規模が大きくなると、この区別が効いてきます。

  • 工数見積もりが崩れる:「テスト2週間」の中にデバッグ時間が含まれているのか曖昧なまま計画すると、必ず遅延します。テストは消化件数で進捗を管理できますが、デバッグは原因が判明するまで残り時間が読めません
  • 役割分担が曖昧になる:テスト担当者に「原因も調べておいて」と依頼するのは、本来デバッグ(開発活動)を外注しているのと同じです。切り分けまでは依頼できても、コード内部の原因特定は実装者の仕事です
  • 品質指標が歪む:「テストで検出した欠陥数」と「デバッグで修正した欠陥数」を混ぜて数えると、実態が見えなくなります

テストの側にどんな種類・レベルがあるのかを整理したい方は、ソフトウェアテストの種類一覧もあわせてご覧ください。デバッグの入口となる「不具合をどの粒度で報告するか」の設計は、テスト設計そのものに依存します。


デバッグの標準的な進め方6ステップ

デバッグは「勘と経験」で行うものだと思われがちですが、実際には再現性のある手順があります。行き詰まったときほど、手順のどこを飛ばしたかを振り返ると突破口が見つかります。

  1. 再現する:確実に同じ症状を出せる手順を確立する
  2. 切り分ける:問題が起きている範囲を絞り込む
  3. 原因を特定する:仮説を立てて検証し、真の原因を確定する
  4. 修正する:原因に対して最小限の修正を加える
  5. 確認テスト(リテスト):同じ手順で症状が消えたことを確認する
  6. 回帰テスト:修正が他の機能を壊していないか確認する

STEP1:再現する

デバッグは「確実に再現できること」から始まります。再現しないバグは、直したかどうかも確認できません。最初に固めるべきは次の情報です。

  • 操作手順(どの画面で、何を入力し、何を押したか)
  • 使用したデータ(アカウント種別、金額、日時、件数など)
  • 環境(OS、ブラウザとバージョン、端末、ネットワーク、ビルド番号)
  • 発生頻度(毎回か、10回に1回か)
  • 期待結果と実際の結果(この2つを分けて書くことが極めて重要)

「たまに落ちます」という報告だけでは、デバッグは1ミリも進みません。再現手順の質が、デバッグ全体の所要時間を決めます。

STEP2:切り分ける

再現できたら、次は「どこまでは正常で、どこから異常か」の境界を探します。いきなりコードを読み始めるのではなく、まず大きな単位で範囲を狭めるのがコツです。

  • レイヤーで切る:フロントエンドか、APIか、データベースか。ブラウザの開発者ツールでリクエスト内容とレスポンス内容を見れば、どちら側で値がおかしくなったか一発でわかります
  • 条件で切る:特定のユーザー種別だけか、特定の日付だけか、特定の文字種だけか
  • 時間で切る:いつから壊れたか。先週は動いていたなら、その間の変更が原因です
  • 環境で切る:本番だけか、検証環境でも起きるか

STEP3:原因を特定する

範囲が絞れたら、仮説検証のフェーズです。「〇〇が原因ではないか」という仮説を立て、それが正しければ必ず観測できるはずの事象を確認します。ここで大切なのは、一度に1つの仮説しか検証しないことです。複数の変更を同時に加えると、何が効いたのかわからなくなります。

また、「症状」と「原因」を混同しないよう注意してください。「合計金額がずれる」は症状です。原因は「税計算で切り捨てるタイミングが商品単位と合計単位で入れ替わっている」といった、はるかに具体的なものになります。原因を言語化できて初めて、修正方針が決まります。

STEP4:修正する

修正の鉄則は「最小限」です。原因が判明すると、つい周辺のコードもきれいにしたくなりますが、リファクタリングは別コミット・別作業に分けてください。修正の範囲が広がるほど、回帰テストで確認すべき範囲も広がります。

あわせて、修正の優先度も判断が必要です。すぐ直すべきか、次のリリースに回すのか。判断基準の考え方はバグ修正の優先度の決め方と運用プロセスで詳しく整理しています。

STEP5:確認テスト(リテスト)

修正後、STEP1で確立した再現手順とまったく同じ手順で症状が消えたことを確認します。これを確認テスト(リテスト、confirmation testing)と呼びます。「たぶん直ったはず」で閉じてはいけません。同じ手順で通らなければ、原因の特定が間違っていた可能性があります。

STEP6:回帰テスト(リグレッションテスト)

最後に、その修正が他の正常だった機能を壊していないかを確認します。これが回帰テスト(リグレッションテスト)です。デバッグ工程で最も省略されやすく、最も事故につながるのがこのステップです。

「1行直しただけだから大丈夫」という判断が、共通関数の変更で全画面に影響を及ぼした——という事故は珍しくありません。どの範囲まで回帰テストを行うか、自動化でどこまでカバーするかは、リグレッションテストの戦略と実践で解説しています。時間がないリリース直前の判断には、スモークテストで主要導線だけ短時間で確認する方法も有効です。


代表的なデバッグ手法5選

デバッグ手法には得意・不得意があります。状況に応じて使い分けるのが上達の近道です。

手法やること得意な場面弱点
print/ログデバッグ変数の値や通過位置を出力して確認環境を選ばない。本番・非同期処理・分散環境でも使える出力の入れ忘れ、消し忘れ。試行1回ごとに再実行が必要
ブレークポイント/ステップ実行指定行で実行を止め、変数を見ながら1行ずつ進めるローカルで再現できるロジックの誤りタイミング依存のバグは止めた瞬間に消えることがある
二分探索対象範囲を半分ずつに割って絞り込む広い範囲のどこかに原因がある場合原因が複数箇所にまたがると効かない
ラバーダック・デバッグコードの動きを声に出して他者(や人形)に説明する思い込みで見落としているとき環境要因・外部要因のバグには無力
git bisectコミット履歴を二分探索し、壊した変更を特定する「先週まで動いていた」タイプの退行バグ各コミットがビルド・実行可能である必要がある

print/ログデバッグ

最も原始的で、最も応用が利く手法です。デバッガを接続できない本番環境、非同期処理、複数サーバーにまたがる処理では、実質これしか手段がない場面もあります。

効果を上げるコツは「値だけでなく、識別子と一緒に出す」ことです。注文IDやリクエストIDを必ず添えておくと、大量のログの中から1件の処理を追跡できます。

import logging

logger = logging.getLogger(__name__)

def apply_coupon(order_id, subtotal, coupon_code):
    # 識別子を必ず添える。後からgrepで1件を追跡できる
    logger.info("apply_coupon start order_id=%s subtotal=%s coupon=%s",
                order_id, subtotal, coupon_code)

    discount = calc_discount(subtotal, coupon_code)
    logger.debug("apply_coupon discount order_id=%s discount=%s", order_id, discount)

    total = subtotal - discount
    logger.info("apply_coupon end order_id=%s total=%s", order_id, total)
    return total

なお、print文の消し忘れは事故のもとです。個人情報やトークンを出力したまま本番に出てしまう例が後を絶ちません。調査用の出力は必ずログレベルを使い分け、レビューで確認する運用にしてください。

ブレークポイントとステップ実行

デバッガを使い、指定した行で実行を一時停止して、その時点の変数の中身を直接確認する手法です。ログデバッグが「出力を仕込んで再実行」を繰り返すのに対し、ブレークポイントは1回の実行で任意の変数を何度でも覗けるのが強みです。

覚えておきたい基本操作は次の4つです。

  • ステップオーバー:現在行を実行して次の行へ。関数の中には入らない
  • ステップイン:呼び出している関数の内部に入る
  • ステップアウト:現在の関数を抜けて呼び出し元へ戻る
  • 条件付きブレークポイント:特定条件を満たしたときだけ停止する。ループの1万回目だけ止めたい、といった場面で必須
def calc_total(items):
    total = 0
    for item in items:
        # 特定の条件のときだけ停止させる(条件付きブレークポイント相当)
        if item.price < 0:
            breakpoint()  # Python 3.7以降はこの1行でデバッガが起動する
        total += item.price * item.quantity
    return total

二分探索で問題箇所を絞り込む

原因の候補が広いとき、端から順に調べるのは非効率です。範囲を半分に割り、どちら側に問題があるかを判定して、また半分に割る。これを繰り返せば、1000行のコードでも10回程度の判定で原因行に到達できます。

実務では次のような形で使います。処理の中間地点にログを1つ入れ、そこまでの値が正しいかを見る。正しければ原因は後半、おかしければ前半。設定ファイルなら半分をコメントアウトして挙動を見る、といった応用も同じ発想です。

ラバーダック・デバッグ

コードの処理内容を、1行ずつ声に出して他人(あるいは机の上のアヒルの人形)に説明する手法です。書籍『達人プログラマー』で紹介され広まりました。

ばかばかしく聞こえますが、効果は本物です。黙って読むときは脳が「こう動くはず」という前提を補完してしまいますが、言語化しようとすると「ここでこの変数は……あれ、初期化していない」と、思い込みの穴に自分で気づけます。同僚に相談しようとして、説明している途中で自己解決した経験がある人は、すでにこの手法を使っています。

git bisectで「壊した変更」を特定する

「先月のリリースまでは動いていたのに、今は壊れている」という退行バグに絶大な効果を発揮するのがgit bisectです。正常だったコミット(good)と壊れているコミット(bad)を指定すると、Gitが自動的に中間のコミットをチェックアウトしてくれます。動作を確認してgood/badを答えるだけで、二分探索によって原因コミットが特定できます。

# 二分探索を開始する
git bisect start

# 今のコミットは壊れている
git bisect bad

# v1.2.0のときは正常だった
git bisect good v1.2.0

# 以降、Gitが中間コミットに移動するので
# 動作確認して good か bad を答えるだけ
git bisect good
git bisect bad

# 原因コミットが判明したら終了
git bisect reset

コミット数が500個あっても、9回程度の判定で犯人が判明します。ただし各コミットが正しくビルドできる状態でないと使えないため、日頃から「壊れた状態をコミットしない」習慣が効いてきます。


デバッグツール一覧

言語や実行環境ごとに、標準的に使われるデバッガがあります。まずは自分の主戦場のツールを1つ深く使えるようにするのが近道です。

ツール対象主な特徴
Chrome DevToolsJavaScript/Webフロントエンドブラウザ標準搭載。ブレークポイント、ネットワーク通信の確認、DOM検査、パフォーマンス計測まで一体化
VS Code Debugger多言語(拡張機能で対応)エディタ上で直接ブレークポイントを設定。Node.js、Python、Goなど幅広く対応
gdbC/C++/RustなどGNUの定番デバッガ。コアダンプ解析やリモートデバッグにも対応
pdbPython標準ライブラリ。追加インストール不要で、breakpoint()から即起動できる
XdebugPHPステップ実行に加え、スタックトレースの整形やプロファイリングが強力
IntelliJ IDEA DebuggerJava/Kotlinなど条件付きブレークポイント、実行中の変数書き換え、ホットスワップに対応
Visual Studio DebuggerC#/.NETエディット・コンティニュー(停止中の編集と続行)など統合環境ならではの機能
Delve(dlv)GoGoのランタイム構造(goroutine)を理解した表示ができる
Charles/FiddlerHTTP通信全般通信内容を横から観察・改変。フロントとAPIどちらが悪いかの切り分けに有効
Sentry等のエラー監視本番稼働中のアプリ本番で発生した例外を、スタックトレースと発生状況ごと自動収集する

ツールを選ぶ際は、「ローカルで再現できるバグ」か「本番でしか起きないバグ」かで軸が変わります。前者はデバッガ、後者はログとエラー監視が主役になります。


再現しないバグへの対処法

デバッグで最も厄介なのが「報告はあるのに再現しない」バグです。原因はおおむね次の3つに分類できます。

1. 環境差分によるもの

開発者の手元では動くのに、特定の利用者環境でだけ壊れるケースです。疑うべきポイントは決まっています。

  • OS・ブラウザ・端末のバージョン差(特に古いバージョンやSafari固有の挙動)
  • タイムゾーンとロケール(日付の境界、全角数字、通貨表記)
  • 文字コードと改行コード(機種依存文字、絵文字、サロゲートペア)
  • データ量の差(開発環境は10件、本番は100万件)
  • キャッシュ、Cookie、拡張機能、社内プロキシ
  • 設定値・環境変数の差(本番だけ有効になっているフラグ)

対策の基本は「環境を揃える」ことです。コンテナで環境を固定する、本番相当のデータ量で検証環境を用意する、といった投資が結果的にデバッグ時間を大きく削ります。

2. タイミング依存によるもの

非同期処理や並行処理で、実行順序が毎回わずかに変わることで起きるバグです。競合状態(レースコンディション)やデッドロックがこれにあたります。10回に1回しか起きない、負荷が高いときだけ起きる、といった性質を持ちます。

ブレークポイントで止めると処理速度が変わるため症状が消えてしまうことが多く、ログによる観測が主戦場になります。タイムスタンプをミリ秒単位まで記録し、スレッドIDやリクエストIDと一緒に出力すると、順序の入れ替わりが見えてきます。

3. ハイゼンバグ(観測すると消えるバグ)

「調べようとすると再現しなくなる」現象を、量子力学の不確定性原理になぞらえてハイゼンバグ(Heisenbug)と呼びます。デバッガを繋いだ、ログを追加した、最適化を切ってビルドし直した——こうした観測行為そのものが実行条件を変えてしまうために起きます。

対処のセオリーは次のとおりです。

  • 実行を止めない観測手段(ログ、エラー監視ツール)に切り替える
  • 再現率を上げる方向に振る(負荷を上げる、処理に意図的な遅延を入れる、繰り返し回数を増やす)
  • 自動テストで数百回ループさせ、失敗時の状態をすべて保存する
  • コードレビューで「共有状態を触っている箇所」を静的に洗い出す

なお、外部サービスへの通信やDBアクセスがタイミングのぶれを生んでいる場合、テストではその部分をスタブやモックに置き換えて挙動を固定すると、原因の切り分けが一気に進みます。使い分けはスタブとモックの違いと使い分けで解説しています。


デバッグを楽にする設計とログ設計のポイント

デバッグの速さは、実はバグが起きる前の設計で8割決まっています。デバッグしやすいコードには共通の性質があります。

設計面のポイント

  • 関数を小さく、副作用を減らす:入力と出力が明確な関数は、単体で動かして検証できます。逆にグローバル変数を書き換える処理は、原因の追跡が困難になります
  • 状態を変更せず新しい値を返す(イミュータブル):途中で誰が値を書き換えたのか探す作業がなくなります
  • 早期に失敗させる(フェイルファスト):不正な入力は境界で弾く。おかしな値を抱えたまま処理が進むと、症状が現れる場所と原因の場所が遠く離れてしまいます
  • 例外を握りつぶさない:catchして何もしない実装は、デバッグの手がかりを自ら消す行為です
  • 依存を注入できる形にする:外部サービスを差し替えられれば、再現条件を自分で作れます

ログ設計のポイント

観点やるべきこと避けるべきこと
ログレベルERROR/WARN/INFO/DEBUGを基準を決めて使い分けるすべてINFOで出し、本当の異常が埋もれる
識別子リクエストID・注文ID・ユーザーIDを必ず添える「処理に失敗しました」だけで対象が特定できない
文脈入力値・分岐条件・失敗理由をセットで残す例外のメッセージだけでスタックトレースを捨てる
形式構造化ログ(JSON等)で機械的に検索・集計できる形に自由文で、後から抽出できない
個人情報パスワード・トークン・カード番号はマスクするデバッグ用の出力に生の個人情報を含める
時刻ミリ秒精度+タイムゾーン付きで記録する秒単位のみで、順序が判別できない

もう1つ効果が大きいのが、自動テストの充実です。テストがあれば「どこまでは正常か」を機械的に判定できるため、切り分けの工数が激減します。どのくらいテストが通っているかを測る指標については、C0・C1・C2カバレッジの違いと使い分けが参考になります。


デバッグに集中するために、テスト工程は外部に任せるという選択

ここまで見てきたとおり、デバッグは実装内部を理解している開発者にしかできない、代替の効かない仕事です。一方で、その前後にある「テスト観点の洗い出し」「テストケースの実行」「修正後の回帰テスト」は、体制さえ整えれば外部に委託できる作業です。

ところが現場では逆のことが起きがちです。開発者がテストケースの実行に時間を取られ、本来集中すべき原因分析と修正が後回しになる。結果としてリリースが遅れ、回帰テストを省略して新たな障害を招く——という悪循環です。

私たちのソフトウェアテスト代行サービス『テスター10(テスターテン)』では、機能テスト・システムテストを10万円からお引き受けしています。テスト設計から実行、不具合報告書の作成までを担当するため、開発チームは「原因を突き止めて直す」というデバッグ本来の仕事に集中できます。

  • 再現手順・環境・期待結果を揃えた不具合報告書を提出するため、受け取った側がすぐデバッグに着手できる
  • 修正後の確認テストと回帰テストまで含めて依頼できる
  • スポット単位での依頼が可能なため、リリース直前の増員としても使える

「テストにかける人手が足りない」「回帰テストが毎回省略されてしまう」といった課題をお持ちでしたら、お気軽にご相談ください。


よくある質問(FAQ)

デバッグとテストはどちらを先に行うのですか?

テストが先です。テストによって「期待どおりに動かない」という事実が見つかり、それを受けてデバッグが始まります。ただし修正後には再びテスト(確認テストと回帰テスト)が必要になるため、実際にはテストとデバッグが交互に繰り返される形になります。

デバッグは誰の仕事ですか?テスト担当者に頼めますか?

原則として、コードを書いた開発者の仕事です。デバッグは実装の内部構造を理解していないと進められないためです。テスト担当者やテスト代行に依頼できるのは、再現手順の確立や切り分け(どの条件で起きるかの特定)までで、コード内部の原因特定と修正は開発側の担当になります。この線引きを曖昧にすると、責任の所在が不明確になり工数見積もりも崩れます。

「デバッグ」と「デバグ」はどちらの表記が正しいですか?

どちらも正しく、意味は同じです。一般的なWeb記事や会話では「デバッグ」が主流で、JIS規格や一部の学術系文献では「デバグ」が使われます。社内では、どちらかに統一しておくとドキュメントの検索性が向上します。

再現しないバグは放置してもよいですか?

放置は推奨できません。再現しないバグの多くは、タイミング依存や環境差分といった「条件が揃ったときにだけ表面化する」性質のもので、利用者が増えれば発生頻度も上がります。すぐに原因を特定できない場合でも、発生時の状態を記録できるようログを強化し、再発を検知できる状態にしておくのが現実的な対応です。

デバッグにかかる時間を見積もることはできますか?

正確な見積もりは困難です。原因が判明するまで残り工数が確定しないためです。実務では「調査に4時間かけて原因が絞れなければ、いったん報告して方針を相談する」といった時間箱(タイムボックス)を設ける運用が有効です。これにより、1人が長時間ハマり続ける状況を防げます。

デバッグ用のコードを本番に残してしまうリスクは?

実害のあるリスクです。個人情報や認証トークンをログに出力したまま公開してしまう情報漏洩、デバッグ用の認証バイパス処理が残ることによる不正アクセス、大量出力によるディスク圧迫やパフォーマンス劣化などが実際に起きています。調査用の出力は必ずログレベルで制御し、コードレビューとリリース前チェックの項目に含めてください。


まとめ

デバッグ(デバグ)は、単なる「バグ取り」ではなく、原因を特定して修正し、その修正が正しいことを確認するまでの体系的な活動です。

  • テストは欠陥の存在を発見する活動、デバッグは欠陥の原因を特定して修正する活動。JSTQBでも明確に区別されている
  • 「デバッグ」と「デバグ」は同じ意味の表記ゆれ
  • 手順は「再現→切り分け→原因特定→修正→確認テスト→回帰テスト」の6ステップ
  • 手法はログデバッグ、ブレークポイント、二分探索、ラバーダック、git bisectを状況で使い分ける
  • 再現しないバグは、環境差分・タイミング依存・ハイゼンバグの3分類で原因を疑う
  • デバッグの速さは、事前の設計とログ設計で大きく変わる
  • 修正後の確認テストと回帰テストを省略しないことが、二次障害を防ぐ最後の砦

開発チームがデバッグに集中できる環境をつくるには、テスト工程の体制づくりが欠かせません。テスト実行や回帰テストの人手が足りていない場合は、テスト代行サービス『テスター10』へのご相談もご検討ください。

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