社内にテストエンジニアがいない開発会社の3つの選択肢

「専任のテストエンジニアがいないまま、なんとなく開発エンジニアにテストを兼任させて回している」——もしこの一文に心当たりがあるなら、この記事はあなたのために書いています。複数の案件を同時に抱え、スケジュールと顧客対応に追われるなかで、テストだけは後回しになりがちです。そしてリリースが近づくと、確認の時間が足りないまま「えいや」で本番に出してしまう。バグが出れば、責任を感じるのはいつも現場のPMです。
専任のテスト担当を置けないのは、決して怠慢ではありません。一人雇うほどの案件量や予算が安定して見込めない、という構造的な事情があるからです。それでも品質は守りたい。この記事では、社内にテストエンジニアがいない状態をどう乗り越えるかを、「採用」「外部の力を借りる」「自前で強くする」という3つの選択肢に分けて整理します。どれが正解かを押し付けるのではなく、自社の規模・案件特性・予算に当てはめて判断できる物差しを持ち帰っていただくことをゴールにしています。読み終えるころには、「うちには無理」という諦めが「うちなら、まずこれから始められる」に変わっているはずです。
テストエンジニアがいないと、なぜ品質が崩れやすいのか
選択肢の話に入る前に、「なぜ専任のテスト担当がいないと品質が崩れやすいのか」を言語化しておきましょう。ここが曖昧なままだと、上長に「で、なぜ今それが必要なの?」と聞かれたときに答えられません。逆に、ここを構造として説明できれば、後の予算交渉が一気に楽になります。
「作った人がテストする」構造に潜む盲点
開発エンジニアが自分の書いたコードをそのままテストすると、「ここは問題ないはず」という思い込みが避けられません。自分の頭の中にある正常系のシナリオはなぞれても、想定していなかった入力や、仕様の解釈がずれていた箇所は「テストする対象」としてそもそも視界に入らないのです。
これは個人の能力の問題ではなく、認知の構造の問題です。作り手と検証者が同一人物だと、作るときの前提がそのまま検証の前提になってしまい、前提そのものの誤りに気づけません。テストの世界で「作った本人とは別の視点でテストする」ことが重視されるのは、まさにこの盲点を埋めるためです。専任の検証担当を持たないチームでは、この「別の視点」が構造的に欠けたまま開発が進みます。日々の業務では気づきにくいのですが、これは個々のエンジニアがどれだけ優秀でも埋まらない種類の穴です。
実際の現場では、この盲点は「正常系は丁寧にテストされているのに、異常系やイレギュラーな操作が手薄」という形で表れがちです。たとえば、想定どおりの順番でボタンを押せば動くが、途中で戻る・更新する・二重に送信するといった「ユーザーが実際にやりがちな操作」の検証が抜ける。あるいは、開発者が「この値は来ないはず」と思っている入力が、運用ではしれっと送られてくる。作り手は自分の想定の中でしかテストできないため、こうした「想定の外側」がそのまま本番に流れてしまうのです。クライアントからの信頼を損なうバグは、たいていこの想定の外側から出てきます。
テストを削ると、次の案件のテスト時間がさらに削られる
もうひとつ見逃せないのが、テスト不足が単発の失敗で終わらず、悪循環を生む点です。林尚平『ソフトウェアテスト自動化の教科書』では、テスト工数を削減する圧力からテストが不十分になり、その結果として市場で不具合が発生し、その対応に追われて次の製品のテスト工数がさらに圧迫される、という「テストの負のサイクル」が指摘されています。同書では、開発工程全体に占めるテストの割合は約45%にのぼるとも述べられており、テストは「片手間でこなせる軽い工程」ではないことがわかります。
この負のサイクルに入ると、抜け出すのは容易ではありません。リリース後のバグ対応がエンジニアの時間を奪い、その分また次の案件のテストが薄くなる。気づけば、チーム全体が不具合対応に疲弊しているという状況に陥ります。しかも厄介なのは、この消耗が「忙しいから仕方ない」という空気のなかで常態化し、誰も構造の問題として認識しないまま放置されることです。だからこそ、「誰がどうテストを担うのか」を場当たり的にではなく、選択肢として意識的に決める必要があるのです。
「専任は無理」と「現状維持」の間にある広いグレーゾーン
ここで強調したいのは、選択肢は「専任のテストエンジニアを正社員で雇う」か「今のまま兼任で乗り切る」かの二択ではない、ということです。実際には、その間に多くの中間的な打ち手が存在します。スポットで外部の力を借りる、特定の案件だけ外注する、自前のテストの仕組みを少しずつ整える——こうしたグレーゾーンの選択肢を知らないまま「うちには無理」と諦めてしまうのは、もったいない話です。
大事なのは、この課題を「人がいる/いない」という○×の問題としてではなく、「どの打ち手を、どの順番で、どの程度組み合わせるか」という設計の問題として捉え直すことです。次章から、その選択肢を一つずつ見ていきます。
選択肢1:テストエンジニアを採用する
最も直球の解決策が、テスト専任の担当者を採用することです。専任がいないなら雇えばいい、という発想は自然ですが、ここには見落とされがちな現実があります。
採用がうまくいけば得られるもの
専任の担当者が社内にいると、テスト設計のノウハウがチームに蓄積されていきます。案件ごとにゼロからテスト観点を考えるのではなく、過去の知見を再利用できるようになり、属人化していたテストが「仕組み」へと育っていきます。開発の早い段階からテストの視点を入れられるようになるのも大きな利点です。
仕様が固まる前の段階でテスト担当が要件をレビューできれば、「この仕様はそもそもテストできるのか」という観点で曖昧さを早期に潰せます。たとえば「エラー時は適切なメッセージを表示する」という要件があったとき、テストの専門家は「適切とは具体的にどの文言か」「どのエラーで、どの画面に出すのか」を要件段階で問いただします。この一手間が、実装後に「仕様が曖昧でテストできない」と差し戻す手戻りを防ぎます。後工程で発覚する手戻りが減り、結果として開発全体のスピードが上がる、という好循環が期待できます。テストを「最後の関門」から「最初の設計レビュー」へと前倒しできるのが、専任を抱える最大の価値だと言えるでしょう。
「採用できない」のはなぜか
一方で、「テストエンジニアを採用したいのに採用できない」という声は非常に多く聞かれます。理由は大きく3つあります。
ひとつ目は、母数の少なさです。開発エンジニアと比べて、テスト・QAを専門とする人材の市場は小さく、経験豊富な人ほど引く手あまたで、中小規模の開発会社が提示できる条件では振り向いてもらいにくいのが実情です。
ふたつ目は、案件量の不安定さです。受託開発では、テストが集中する時期とそうでない時期の波が大きく、専任を一人雇っても、その人を年間を通じてフル稼働させられる保証がありません。手が空く時期に何をしてもらうか、という問いに答えられないと、採用に踏み切れません。
3つ目は、評価とマネジメントの難しさです。社内にテストの知見を持つ人がいない状態で専任を採用すると、その人の仕事の質を誰が評価するのか、という問題が生まれます。最初の一人は、教育してもらう相手がおらず孤立しやすいという事情もあります。良い人を採れても、活かしきれずに辞められてしまっては元も子もありません。
採用を選ぶ前に確認したいこと
採用を検討するなら、「年間を通じて専任を稼働させ続けられるだけの案件量があるか」を冷静に見極めることが先決です。波のある案件量に対して固定の人件費を抱えると、繁忙期には足りず、閑散期には持て余す、という事態になりかねません。採用は強力な手段ですが、一定以上の安定した案件規模があってはじめて費用対効果が成り立つ選択肢だと理解しておきましょう。もし今の案件量に波が大きいなら、いきなり採用に走るより、次章で述べる外部活用から入って需要を見極めるほうが、失敗のリスクは小さくなります。
選択肢2:外部の力を借りる(スポット・派遣・テスト代行)
採用のハードルが高い場合に現実的なのが、外部の力を借りる選択肢です。ここはさらに、関わり方の濃淡によっていくつかのパターンに分かれます。専任を社内に抱えずに済み、固定費を増やさずに品質を補える点が共通の魅力です。
スポット・部分稼働で繁忙期だけ補う
まず軽い関わり方として、繁忙期やリリース前の山場だけ、外部のテスト人材にスポットで入ってもらう方法があります。フリーランスや副業ベースのテスターと、特定の案件・期間に限って契約するイメージです。固定の人件費を抱えずに済むため、案件量の波が大きい受託開発とは相性が良い打ち手です。
ただし、スポットには注意点もあります。短期間で入ってもらう以上、その人がアプリの全体像を把握する時間が十分に取れず、表面的な動作確認にとどまりやすいのです。後述する「情報格差」の問題が、スポット契約では特に顕在化しやすいことを覚えておきましょう。
派遣・常駐で一定期間チームに入ってもらう
スポットより踏み込んだ形が、派遣や常駐です。一定期間、チームの一員としてテスト担当に入ってもらうことで、案件の文脈をある程度共有したうえでテストを進められます。スポットよりも全体像の理解が進みやすく、日々のコミュニケーションコストも下げられます。一方で、月単位の稼働を前提とするため、スポットよりは固定的なコストがかかります。「常駐してくれる安心感」と「月額のコスト」を天秤にかける判断になります。
なお、外部活用を検討する際は、契約形態にも目を向けておきましょう。成果物(テスト報告書や検出した不具合)に対して責任を負ってもらう請負型なのか、稼働した時間・工数に対して支払う準委任型なのかで、リスクの持ち方が変わります。要件が固まりきっていない案件で請負を結ぶと、仕様変更のたびに追加費用の交渉が発生しがちです。逆に、品質に明確な合格ラインを設けたい場合は、準委任のままだと「どこまでやれば終わりか」が曖昧になります。どちらが良い悪いではなく、自社の案件の性質に合わせて選ぶことが、後々のトラブルを防ぎます。
テスト代行(第三者検証)に委託する
そして、テスト設計から実行までをまとめて外部の専門会社に任せるのが、テスト代行(第三者検証)です。自社にテストの知見がなくても、テストの専門家がプロセスごと引き受けてくれるため、品質を体系的に担保しやすくなります。作り手とは独立した第三者の視点が入るため、前述した「作った人がテストする」盲点を、最も解消しやすい打ち手とも言えます。
外注先のタイプは大きく分かれます。標準化されたプロセスと網羅的なドキュメントを強みとする大手・第三者検証専業のベンダーもあれば、受託開発出身で小回りの利く中堅ベンダーもあります。どちらが自社に合うかは、発注量・スポット可否・連携のしやすさによって変わります。大手と中堅のどちらが自社の規模に向くかという判断軸については、中小企業向けテスト代行ベンダーの選び方を2類型で解説した記事で詳しく整理しているので、外注を本格的に検討する段階で参考にしてください。
外注で見落としがちな「情報格差」というコスト
外部の力を借りるときに、費用と並んで必ず意識したいのが「情報格差」です。あるBtoBアプリのテスト代行案件で、現場リーダーのAさんは「特にテスト代行の場合は、アプリの全体像を知らずに作業を始めるとテストの精度が下がるため、全体像の理解に時間を費やすべきだ」と振り返っています。内製と違い、外部の担当者には開発の経緯や裏仕様、設計思想が自然には伝わりません。この情報格差を埋めるフェーズを意図的に設計しないと、表面的な動作テストしかできず、せっかく外注したのに肝心なバグを見逃す、という結果になりかねません。
同じ案件のチームメンバーのDさんは、「最初に全体像を理解する時間を設けることで、結果的に作業時間の短縮につながる」とも語っています。一見遠回りに見える全体像の共有が、トータルの精度と効率を左右する。外部に任せる際は、丸投げではなく「最初に文脈を渡す時間」を見積もりに織り込むことが、成功の分かれ目になります。
具体的には、次のような工夫が効きます。キックオフで主要画面を一緒に操作する時間を半日でも確保する。仕様の意図や「なぜこの仕様にしたか」の経緯を簡単なメモにまとめて渡す。過去に発生したバグやクレームの一覧を共有し、「ここは特に注意してほしい」という重点箇所を明示する。これらは時間にして数時間から1日程度の投資ですが、ここを省くと、外部の担当者は仕様書の表面だけをなぞるテストに終始し、本当に確認してほしかった業務シナリオが抜け落ちます。情報格差は「埋めるコスト」を惜しむと「見逃しのコスト」として跳ね返ってくる、と考えるのが現実的です。
外部活用にどれくらいの費用がかかるのかは、関わり方によって大きく変わります。人月単価や契約形態ごとの目安については、テスト代行の費用相場と見積もり感をまとめた記事で数字感を整理しています。上長への説明資料を作る前に一読しておくと、稟議の場で「で、いくらなの?」という問いに答えやすくなります。
選択肢3:自前でテストの仕組みを強くする
3つ目は、外部に頼らず、今いるメンバーでテストの質を底上げする選択肢です。専任の担当者がいなくても自分たちで強くなる、という発想で、すぐに着手できる打ち手も多く、他の選択肢と並行して進められるのが強みです。
テスト観点を仕組み化して属人化を防ぐ
兼任テストの最大の弱点は、テストの質がその時々の担当者の経験と勘に依存することです。これを防ぐには、テスト観点をチェックリストやテンプレートとして仕組み化し、誰がテストしても一定の観点が漏れない状態を作ることが有効です。
たとえば入力値のテストでは、有効な値・無効な値をやみくもに試すのではなく、入力範囲を意味のあるグループに分けて代表値を選ぶ「同値分割」や、グループの境目の値を重点的に確認する「境界値分析」といった考え方があります。Lee Copeland『はじめて学ぶソフトウェアのテスト技法』では、こうした技法が、限られた工数のなかで効率よくバグを見つけるための体系として解説されています。専任がいなくても、こうした基本の型をチェックリストに落とし込むだけで、抜け漏れは目に見えて減ります。まずは「過去に本番で出たバグ」を5件ほど洗い出し、それぞれを未然に防ぐ確認項目を書き起こすところから始めると、自社の実態に即したチェックリストが作れます。
自動化は「銀の弾丸」ではないと心得る
テストの仕組み化というと、すぐに「自動化すれば解決する」と考えがちですが、ここには冷静さが必要です。前出の林尚平『ソフトウェアテスト自動化の教科書』では、自動化したテストは5回以上実行しないと、スクリプト作成にかけた工数を取り返せないという「5回ルール」が示されています。さらに、スクリプトの作成には手動テストのおよそ3倍の工数がかかるとも指摘されています。
つまり、めったに実行しないテストや、仕様変更が頻繁で作り直しが多い箇所を自動化しても、かえって工数が増えてしまうのです。自動化が効くのは、リリースのたびに繰り返し実行する回帰テスト——既存機能が改修によって壊れていないかを確認するテスト——のような領域に絞ったときです。専任の担当者がいないチームほど、「自動化できるから自動化する」のではなく「何度も繰り返すから自動化する」という基準で対象を選ぶことが、失敗を避ける鍵になります。最初は、毎リリース必ず確認する数本のシナリオだけを自動化し、効果を見ながら広げるのが安全です。
自前強化の限界も正直に見ておく
自前でのテスト強化は、コストが低く今日から始められる一方で、限界もあります。チェックリストや自動化はテストの「効率」を上げますが、「作り手とは別の視点」を完全に代替するものではありません。仕組みを整えても、テストするのが結局は作った本人であれば、認知の盲点は残ります。
また、テスト設計のノウハウを社内でゼロから育てるには時間がかかります。今まさにリリース直前で時間がない、という状況には間に合わないこともあるでしょう。自前強化は中長期で効いてくる選択肢であり、目の前の火を消すには外部の力との併用が現実的です。効率化への第一歩は、毎週のテスト振り返り会と繰り返し発生するバグ傾向のリスト化から始めると、自前でも無理なく回せます。
3つの選択肢をどう組み合わせるか
ここまで「採用」「外部活用」「自前強化」を見てきましたが、実際にはどれか一つを選ぶというより、状況に応じて組み合わせるのが現実的です。専任を一足飛びに用意しようとせず、段階的に体制を整える視点を持ちましょう。まずは3つの選択肢の特徴を一覧で整理しておきます。
| 選択肢 | 主なコストの性質 | 立ち上がりの速さ | 向いている状況 | 主な留意点 |
|---|---|---|---|---|
| 採用 | 固定費(人件費) | 遅い(採用〜立ち上げに数か月) | 案件量が年間で安定している | 母数が少なく評価も難しい |
| 外部活用 | 変動費(都度・月額) | 速い(契約後すぐ) | 案件量に波がある/今すぐ品質を守りたい | 情報格差を埋める工夫が必須 |
| 自前強化 | 低コスト(既存人員の時間) | 中(仕組み化に着手はすぐ、効果は中長期) | 中長期で体制を育てたい | 「別の視点」は完全には代替できない |
この表を眺めると、それぞれが補い合う関係にあることがわかります。立ち上がりが速い外部活用で目先の品質を守りつつ、立ち上がりは遅いが資産が残る自前強化を並行で進め、案件量が安定したら採用に踏み込む——という流れが、多くの開発会社にとって無理のない順路になります。
自社の状況を3つの軸で整理する
組み合わせを考えるとき、次の3つの軸で自社を整理すると判断しやすくなります。
- 案件量の安定性:テストの需要が年間を通じて安定しているなら採用が視野に入り、波が大きいなら外部活用が向きます。
- 予算の柔軟性:固定費を増やせるなら採用、変動費で抑えたいなら外注やスポットが合います。
- 時間的な切迫度:今すぐ品質を担保したいなら外部活用、中長期で体制を育てたいなら自前強化を軸にします。
この3軸に自社を当てはめると、「今は外注で目の前の品質を守りつつ、並行してチェックリストの整備を進める」「繁忙期だけスポットで補い、閑散期に自動化を仕込む」といった、現実的な組み合わせが見えてきます。3つの軸すべてで満点を狙う必要はありません。自社がどの軸を最も重視するかを決めるだけで、選ぶべき打ち手はかなり絞り込めます。
段階的なロードマップの例
たとえば、まず直近のリリースは外部のテスト代行やスポットで品質を確保します。その間に、外部の担当者が使ったテスト観点やチェックリストを社内に残してもらい、自前の資産として蓄積します。案件量が安定して見通せるようになった段階で、はじめて専任の採用を検討する——このように、外部の力を「自社にノウハウを残すための投資」と位置づけると、一過性の出費で終わらせずに済みます。
重要なのは、完璧な体制を最初から目指さないことです。専任の担当者がいない現状から、まず一歩動くこと。その一歩が外注であれ、チェックリスト一枚の作成であれ、「作った人だけがテストしている」状態から抜け出すことに価値があります。
上長を説得するときの費用対効果の示し方
最後に、上長や経営層への説明のコツに触れておきます。「専任の担当者がいないから不安です」という訴えだけでは、予算はなかなか通りません。前述の「テストの負のサイクル」を引き合いに、テスト不足が次の案件の工数を圧迫し、不具合対応でエンジニアの時間が削られている現状を、具体的なコストとして示すことが効果的です。
たとえば、こんな簡易試算から始めてみてください。直近の数か月でリリース後のバグ対応に費やしたエンジニアの時間を、案件ごとにざっくり集計します。仮に月あたり延べ10人日がバグ対応に消えているとすれば、それは本来なら新規開発に充てられたはずの時間です。エンジニアの工数を1人日あたりいくらと社内で換算しているなら、その金額がそのまま「テスト不足の見えないコスト」になります。この数字を、外部活用や仕組み化にかかる費用と並べて見せれば、「テストへの投資は、エンジニアの時間を不具合対応から本来の開発に取り戻すための投資だ」という文脈で語れます。漠然とした不安ではなく、取り戻せる時間と金額で語ること。これが稟議を通す近道です。
まとめ:テストエンジニアがいない状態は「設計できる」課題
社内にテストエンジニアがいないという状況は、多くの開発会社が抱える構造的な課題です。けれども、それは「専任を雇えないから諦めるしかない」という二択の問題ではなく、採用・外部活用・自前強化という複数の打ち手を組み合わせて設計できる課題です。
まずは自社の案件量・予算・切迫度を3つの軸で整理し、「今すぐ守るべき品質」と「中長期で育てる体制」を分けて考えてみてください。目の前のリリースは外部の力で守りつつ、その経験を社内のノウハウとして残していく。この積み重ねが、いつの間にか「テストが回る組織」を作っていきます。専任の有無は出発点にすぎず、ゴールではありません。
なお、外部リソースの活用にあたっては、IPAが公開しているソフトウェア開発分析データ集のような客観的な指標や、JSTQBが公開するシラバス・用語集に整理されたテストの共通言語を社内外で共有しておくと、外部の担当者との認識合わせがスムーズになります。発注側と受注側が同じ言葉でテストを語れるかどうかは、品質に直結します。
テスト体制の見直しを検討されている段階で、自社に合う進め方を一緒に整理したい方は、テスト体制の課題を相談するからお気軽にお問い合わせください。現状の案件規模や体制を踏まえて、無理のない一歩から考えていきましょう。
