「取引先からWeb EDIで発注したいと言われた」「FAXの受発注をそろそろWeb化したい」。
そんなときに最初に気になるのが、Web EDIの費用です。
Web EDIの費用は、使う立場と導入形態で桁が変わります。
取引先が用意した画面を使うだけなら月数千円で済む一方、自社で仕組みを持つなら数百万円かかることもあります。
この記事では、Web EDIの費用相場を導入形態別に整理します。
初期費用と月額の内訳、見落としやすい費用、クラウド型と個別開発のどちらが得かの判断基準まで、受発注システムを開発してきた立場から解説します。
なお、FAXやメールで届く注文の自動処理はAIで受発注業務を自動化する方法で、FAX自体のクラウド化はFAXクラウドとはで解説しています。
この記事は「取引先とデータでやり取りする仕組み」の費用に絞ってお伝えします。
Web EDIとは|従来型EDI・FAX受発注との違い
Web EDIとは、インターネットとWebブラウザを使って、受発注や出荷・請求のデータを企業間でやり取りする仕組みです。
EDIは「Electronic Data Interchange(電子データ交換)」の略です。
従来のEDIは専用回線と専用ソフトが必要でしたが、Web EDIはブラウザがあれば使えます。
Web EDIは「専用ソフトなしで始められるEDI」なので、中小企業でも導入しやすいのが特徴です。
一方で、取引先ごとに画面やログインが分かれやすい弱点もあります。
違いを表にまとめます。
| 項目 | FAX・電話 | 従来型EDI | Web EDI |
|---|---|---|---|
| 通信手段 | 電話回線 | 専用回線・電話回線(JCA手順など) | インターネット |
| 必要なもの | FAX機・電話 | 専用ソフト・モデム | Webブラウザ |
| 入力の手間 | 受け手が手入力 | 自動でデータ連携 | 画面入力またはファイル連携 |
| 導入の重さ | 軽い | 重い(大手向け) | 中程度 |
| 主な弱点 | 転記ミス・紛失 | 回線の終了・高コスト | 取引先ごとに画面が分かれる |
従来型EDIで多く使われてきた電話回線は、NTT東西のINSネット「ディジタル通信モード」が2024年1月に終了しました。
補完策も暫定措置とされているため、Web EDIや別方式への移行を検討する企業が増えています。
EDIには、取引先ごとに形式を決める「個別EDI」と、業界で形式をそろえた「標準EDI」があります。
小売・流通業界の「流通BMS」が標準EDIの代表例です。
Web EDIは個別EDIとして作られることが多く、取引先ごとに画面や項目が違う原因になっています。
自社の業界に標準形式があるかどうかも、費用と手間を左右するポイントです。
Web EDIの費用相場|導入形態別の初期費用と月額
Web EDIの費用は、大きく4つの導入形態で分かれます。
自社が「発注する側」か「受注する側」か、取引先が何社あるかで選ぶ形態が変わります。
| 導入形態 | 初期費用の目安 | 月額の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 取引先が指定するWeb EDIを使う | 0円〜数万円 | 0円〜数千円 | 受注側で、取引先の画面に入力するだけ |
| クラウド型Web EDIサービス | 0円〜数十万円 | 数千円〜数万円 | 取引先が数社〜数十社で、標準機能で回る |
| パッケージ型(自社サーバー設置) | 数百万円〜 | 保守費として年額 | 取引量が多く、社内システムと深く連携する |
| 個別開発(オーダーメイド) | 300万円〜1,000万円以上 | 保守・サーバー費 | 自社の商流や承認フローに合わせたい |
金額は一般的な目安で、取引先数・利用者数・連携する社内システムの数で大きく変わります。
費用を比べるときは、初期費用だけでなく5年間の総額で見ることが大切です。
個別開発の目安は、当社の受発注管理の開発費用の解説と同じ水準です。
必要な機能を絞れば300万〜500万円程度に収まるケースも少なくありません。
Web EDIの費用の内訳|見落としがちな費用
Web EDIの見積もりで差が出るのは、サービス料そのものより周辺の費用です。
初期費用・月額・追加費用に分けて確認します。
| 区分 | 費用項目 | 見落としやすいポイント |
|---|---|---|
| 初期費用 | 初期設定・アカウント発行 | 取引先ごとの設定が別料金のことがある |
| 初期費用 | 社内システムとの連携開発 | 販売管理・会計との連携は個別見積もりになりやすい |
| 初期費用 | マスタ移行(商品・取引先) | 品番の整理に社内工数がかかる |
| 月額 | 基本料・ID数・取引先数 | 取引先が増えるほど月額が上がる料金体系がある |
| 月額 | データ量・通信件数 | 繁忙期に従量課金が跳ねる |
| 追加費用 | 取引先への導入説明・サポート | 取引先側の操作説明を自社で担うことが多い |
| 追加費用 | 帳票レイアウトの変更 | 納品書・請求書の様式変更が有償になる |
特に見落とされやすいのが、販売管理や会計システムとの連携費用です。
Web EDIでデータを受け取っても、社内システムへの取り込みが手作業なら効果は半減します。
連携の考え方は基幹システム連携ができない原因と対処法で詳しく解説しています。
発注側と受注側で変わるWeb EDIの費用負担
Web EDIの費用は、仕組みを用意する側に集中します。
受注側は取引先の画面を使うだけなら負担が小さく、発注側は仕組みを持つ分だけ費用がかかります。
受注側(取引先からWeb EDIを指定された場合)
- 費用は少額か無料のことが多い
取引先が用意したWeb EDIにログインして入力するだけで済む。 - 取引先ごとに画面が増える
3社・5社と増えると、ログインと転記の手間が積み上がる。 - 社内システムへの二重入力が残る
受けた注文を自社の販売管理に入れ直す作業が発生しやすい。
受注側の課題は費用より「画面が増えて手間が戻る」ことです。
取引先が増えたら、各社のデータをCSVで取り込める仕組みを社内に持つと手間が減ります。
発注側(自社がWeb EDIを用意する場合)
- サービス料か開発費がかかる
クラウド型なら月額、個別開発なら初期費用が中心になる。 - 取引先への説明コストがかかる
操作説明や問い合わせ対応を自社で担うことが多い。 - 商流に合わせた設計が効果を左右する
承認や公開範囲など、自社独自のルールをどこまで載せるかで費用が変わる。
発注側は「取引先が使い続けてくれる画面か」で費用対効果が決まります。
安いサービスでも取引先が使わなければ、FAXとの二重運用になり費用だけが増えます。
クラウド型Web EDIと個別開発の費用比較
クラウド型と個別開発のどちらが得かは、取引先数と自社ルールの多さで決まります。
判断の目安を表にまとめます。
| 比較項目 | クラウド型Web EDI | 個別開発 |
|---|---|---|
| 初期費用 | 小さい(0円〜数十万円) | 大きい(300万円〜) |
| 月額・年額 | 取引先数・ID数に応じて増える | 保守・サーバー費(開発費の10〜15%程度/年) |
| 自社ルールへの対応 | 標準機能の範囲内 | 承認・公開範囲・帳票まで合わせられる |
| 社内システム連携 | CSV連携が中心 | APIやDBで直接連携できる |
| 取引先が増えたとき | 月額が上がる | 費用はほぼ変わらない |
| 向いている企業 | 取引先が少なく標準業務で回る | 取引先が多い・独自の商流がある |
個別開発の保守費は、システム保守費用の相場で解説している年10〜15%程度が目安です。
5年間の総額で比べた試算例
イメージをつかむために、条件を置いて5年間の総額を試算します。
クラウド型は初期費用10万円・月額3万円、個別開発は開発費400万円・保守費を2年目から年に開発費の10%と仮定しました。
取引先が増えて、2年目から月額が倍になるケースも並べています。
実際の金額はサービスや要件で変わるため、比較の考え方として見てください。
| 経過年数 | クラウド型(月額3万円) | クラウド型(2年目から月額6万円) | 個別開発(400万円+2年目から保守年40万円) |
|---|---|---|---|
| 1年目 | 46万円 | 46万円 | 400万円 |
| 3年目まで | 118万円 | 190万円 | 480万円 |
| 5年目まで | 190万円 | 334万円 | 560万円 |
この条件なら、5年間の総額はクラウド型のほうが安くなります。
取引先が増えて月額が上がっても、5年以内に個別開発を超えることはありません。
個別開発を選ぶ理由は「安さ」ではなく、標準機能で表現できない商流や承認を仕組みに載せられることです。
逆に、クラウド型の月額が10万円を超える規模になると、5年間で600万円を超えます。
この水準なら個別開発と総額がほぼ並ぶため、業務への合い方で選べるようになります。
判断のポイントは次の3つです。
- 取引先が増える見込みがあるか
取引先数で月額が上がるなら、数年で個別開発の総額を超えることがある。 - 承認や公開範囲などの独自ルールがあるか
標準機能で表現できないルールは、結局Excelや電話で補うことになる。 - 社内システムと直接つなぎたいか
販売管理・在庫・請求まで一気通貫にしたいなら個別開発が向く。
「まずクラウド型で始め、合わなくなったら個別開発」という段階的な進め方も現実的です。
その場合は、データをCSVで書き出せるサービスを選んでおくと移行が楽になります。
Web EDIに近い仕組みを個別開発した事例
当社では、Web EDIという名前の製品ではありませんが、取引先とデータで受発注をやり取りする仕組みを個別に開発してきました。
構造が共通する3つの事例を紹介します。
仕入先と取引先をつなぐBtoB商材流通基盤
産業資材の専門商社向けに、仕入先・取引先・管理者の三者が同じ基盤で動く仕組みを開発しました。
仕入先が商材を登録し、管理者が承認すると取引先の画面に公開されます。
取引先は営業担当を通さず、自分で商材を探して見積もりを依頼できます。
特徴は、法人・拠点・部署・個人の4階層で商材ごとに公開範囲を設定できる点です。
「この取引先のこの部署には出さない」という商社ならではの判断を、システムの設定として残せるようにしました。
このような商流のルールは、クラウド型の標準機能では表現しにくい部分です。
この事例の詳細は、以下のページでご覧いただけます。

販売管理ソフトの限界から作り直した受発注・在庫管理
ワイヤーハーネス製造業の企業から、市販の販売管理ソフトが業務に合わないとご相談いただいた事例です。
受注登録から納品書・請求書・見積書の発行、仕入先への発注書データの作成までを1つのシステムにまとめました。
開発費用は330万円、開発期間は約5か月です。
部材の在庫が足りないと受注登録の時点でアラートを出し、そのまま発注画面に進める設計にしています。
2022年11月のリリース以降、3年以上にわたり保守と改修を続けています。
詳しくは受発注・在庫管理システム開発事例をご覧ください。
申込み・承認・製作会社への連携をつないだ受発注
高級ブランドの刻印ギフトで、お客様の申込み、ブランド元の承認、製作会社への製作指示までを一本化した事例です。
承認された注文は製作会社へ自動で通知され、電話やメールでの伝達漏れをなくしました。
受注金額は40万〜70万円、開発期間は約1〜3か月です。
PDF入稿のようにフォームに乗らない注文は、製作会社側で代行入力できるルートも用意しました。
「全部をシステムに乗せない」逃げ道を残すことも、複数社が関わる受発注では大切です。
詳しくは承認フロー付き刻印ギフト受発注システム開発事例をご覧ください。
3つに共通するのは、取引先ごとのルールや承認の流れを仕組みに組み込んだ点です。
ここが自社にとって重要なら、Web EDIの費用は個別開発も含めて比べる価値があります。
Web EDIの導入手順と期間の目安
Web EDIの費用は、導入の進め方でも変わります。
取引先を巻き込む準備を先にしておくと、導入後の手戻りと追加費用を抑えられます。
- 現状の受発注を棚卸しする
取引先ごとの注文手段(FAX・メール・電話・EDI)と月の件数を一覧にする。 - 対象の取引先を決める
件数の多い上位の取引先から始め、全社一斉の切り替えは避ける。 - 必要なデータ項目を決める
品番・数量・納期・納品先など、やり取りする項目と帳票を決める。 - 導入形態を選んで見積もりを取る
クラウド型と個別開発の両方で、5年間の総額を出してもらう。 - 取引先と試験運用する
2〜3社と1〜2か月並行運用し、操作の迷いや項目の不足を洗い出す。 - 本番切り替えとFAXの停止
切り替え日を取引先に通知し、FAXでの受付を終える日を決める。
期間の目安は、取引先指定のWeb EDIを使うだけなら数日〜2週間、クラウド型なら1〜3か月です。
個別開発は3か月〜半年以上かかり、承認フローや社内システム連携が多いほど延びます。
期間が延びる原因の多くは、システムより取引先との調整です。
試験運用の期間を見積もりと計画に最初から入れておくと、スケジュールの遅れを防げます。
Web EDIの費用を抑える4つの方法
Web EDIの費用は、範囲の決め方と進め方で抑えられます。
当社が受発注の仕組みを作るときにも、最初に次の4点を一緒に検討しています。
- 対象の取引先と帳票を絞る
件数の多い取引先と、毎日使う注文書・納品書から始める。月に数件の取引先はFAXのままでもよい。 - 社内システムとはCSV連携から始める
API連携は便利だが開発費が上がる。まずCSVの取り込みで運用し、件数が増えてから自動化する。 - 例外の注文は手入力の逃げ道を残す
すべての注文をシステムに乗せようとすると、まれなケースの開発費がかさむ。 - 補助金の対象になるか確認する
IT導入補助金などの対象になる場合がある。公募時期に合わせて計画を立てる。
「全取引先・全帳票を最初から」を避けるだけで、初期費用は大きく下がります。
小さく始めて効果を確かめてから広げるほうが、取引先の協力も得やすくなります。
Web EDIの費用で失敗しないための注意点
Web EDIの導入でよくある失敗は、導入後に費用が膨らむパターンです。
見積もりの段階で次の5点を確認してください。
- 取引先が使えるか先に確認する
主要な取引先2〜3社に、画面とログインの流れを見てもらう。 - 取引先が増えたときの月額を試算する
今の取引先数と3年後の想定数の両方で見積もりを取る。 - 社内システムとの連携範囲を決める
受けたデータを販売管理や会計にどう入れるかを最初に決める。 - FAXとの併用期間を決めておく
移行期限を決めないと、二重運用が何年も続く。 - データの書き出しができるか確認する
将来サービスを替えるとき、過去の取引データを持ち出せるか。
最も効くのは、主要な取引先に事前に使ってもらうことです。
取引先が使わない仕組みは、どれだけ安くても費用対効果が出ません。
受発注をシステム化した中小企業の進め方は受発注システム導入の成功事例も参考になります。
Web EDIの費用に関するよくある質問
Q. 取引先からWeb EDIを指定されました。費用は誰が払いますか?
A. 多くの場合、Web EDIを用意する発注側が負担し、受注側は無料か少額の利用料で済みます。
ただし利用料を受注側に求める取引先もあるため、契約前に料金表を確認してください。
Q. Web EDIとFAXクラウドはどちらを選べばよいですか?
A. 取引先がFAXのまま変わらないならFAXクラウド、取引先もデータで送れるならWeb EDIが向いています。
取引先の状況が混在している場合は、両方を併用しながら段階的に寄せていく方法が現実的です。
Q. Web EDIの導入に補助金は使えますか?
A. IT導入補助金など、業務のデジタル化に使える補助金の対象になる場合があります。
対象となるツールや公募の時期は年度で変わるため、最新の公募要領で確認してください。
Q. Web EDIの月額料金は何で決まりますか?
A. 主に利用するID数、つながる取引先の数、やり取りするデータの件数で決まります。
料金体系はサービスによって異なるため、今の件数と3年後の想定件数の両方で見積もりを取ると比較しやすくなります。
Q. 既存の販売管理システムはそのまま使えますか?
A. 多くの場合は使い続けられます。
Web EDIで受けたデータをCSVで取り込むか、APIで連携するかを決めれば、販売管理を入れ替えずに済みます。
連携が難しい古いシステムの場合は、入れ替えも含めて検討することになります。
Q. 個別開発の場合、どれくらいの期間がかかりますか?
A. 機能を絞った受発注の仕組みなら3〜5か月程度、社内システムとの連携や承認フローが多い場合は半年以上が目安です。
当社の事例では、受発注と在庫管理をまとめた開発で約5か月でした。
まとめ|Web EDIの費用は「立場」と「取引先数」で決まる
Web EDIの費用は、受注側か発注側か、取引先が何社あるかで大きく変わります。
要点を振り返ります。
- 取引先指定のWeb EDIを使うだけなら、月0円〜数千円程度で済むことが多い
- クラウド型は初期費用が小さい一方、取引先数やID数で月額が上がる
- 個別開発は300万円〜が目安で、独自の商流や承認を仕組みに載せられる
- 見落としやすいのは社内システム連携と取引先へのサポート費用
- 比較は初期費用ではなく5年間の総額で行う
自社の商流に合うWeb EDIの形が分からないときは、取引先数と業務の流れを整理するところから始めるのが近道です。
株式会社みんなシステムズでは、受発注・在庫・承認フローを含む業務システムを、業務の流れのヒアリングから設計・開発しています。
クラウド型で足りるか、個別開発が向くかの判断からご相談いただけます。
Web EDIやFAX受発注の見直しをお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。