クライアント様は、産業資材を取り扱う専門商社として、多数の仕入先と取引先企業をつなぐ事業を運営されています。取り扱う商材は分野・用途ごとに多岐にわたり、仕入先から寄せられる新しい商材情報を、必要としている取引先へどう届けるかが事業の中心にありました。
本案件では、仕入先が持つ商材情報の集約から、取引先企業による閲覧・見積もり依頼までを対象に、商流全体を一つの画面で扱える新規システム開発を行いました。仕入先・取引先・管理者という立場の異なる三者が、同じ基盤の上でそれぞれの役割を果たせることを前提に設計しています。
本記事では、開発前の課題、提案したアプローチ、実装した主な機能を整理してご紹介します。
今回のポイントは、「仕入先から集まる商材情報が社内に散在し、どの取引先にどこまで見せてよいかを都度判断する必要があった」という課題に対し、商材の登録から承認、公開範囲の制御、見積もり依頼までを一本の流れとしてつなぎ、取引先が営業担当を介さずに自分で商材を探して問い合わせられる状態をつくれることです。
開発前の課題
最も大きかったのは、商材情報が一元化されていないことでした。仕入先から届くカタログや仕様書、型番の一覧はそれぞれ形式が異なり、社内で横断的に検索できる状態にはなっていませんでした。取引先から「こういう用途に使えるものはないか」と相談があるたびに、営業担当が資料をあたり、必要に応じて仕入先へ確認を取ってから回答するという工程が必要で、回答までにどうしても時間がかかる状態が続いていました。
次に検討が必要だったのが、公開範囲の扱いです。商社という立場上、どの商材をどの取引先に提案できるかは、契約条件や取引先との関係によって変わります。取引先ごとに前提が異なるため都度の判断が必要になり、情報を広く出せば商流上の配慮が必要になる一方、慎重に絞れば本来届くはずの商材が届かないという、扱いの難しい領域でした。
加えて、見積もり依頼や問い合わせが複数の経路で届くため、社内での受け渡しや、いま何件が未対応なのかの把握にも手間がかかっていました。利用者ごとの役割を整理し、商材の登録から公開、見積もり依頼までを一連の流れとして扱える設計が求められました。
ご提案・開発アプローチ
弊社ではまず、営業担当の方が商材を探し、取引先へ提案するまでの流れを一つずつ確認させていただくところから始めました。要件を書面で受け取るだけでは、これまでの慣習に沿って進められている部分は表に出てきません。実際の業務の順序と、どの場面で確認や調整が必要になるのかを繰り返し伺ったうえで、システムの構造を検討しています。
設計の中核に据えたのは、立場の異なる利用者を一つの基盤に同居させる権限設計です。仕入先が自ら商材を登録し、管理者が内容を確認して承認して初めて取引先の画面に現れる、という承認フローを軸に置きました。仕入先には自社の商材だけが、取引先には自社に公開が許可された商材だけが見える構造にすることで、それぞれが自分の担当範囲だけを意識すれば運用が回るようにしています。
公開範囲の制御については、都度の判断が必要だった部分を、システム上の設定として残せる形に落とし込みました。法人単位・拠点単位・部署単位・個人単位という四つの階層それぞれで、商材ごとに公開・非公開を指定できるようにしています。粒度を四段階持たせたのは、実務上の判断が「この会社には出さない」で済むこともあれば「この拠点の、この部署だけには出さない」という細かさになることもあるためです。一度設定すれば判断がそのまま引き継がれるため、担当者が変わっても運用が途切れません。
実装した主な機能
- 仕入先による商材情報の登録と、写真・仕様書ファイルの添付
- カテゴリ別の商材一覧、キーワード検索、おすすめ・新着の切り替え表示
- 取引先からの見積もり依頼受付と、依頼状況の一覧管理
- 商材ごとのお問い合わせと、全般のお問い合わせの受付
- お気に入り登録と、登録した商材の一覧管理
- 商材の仕様書・図面などの資料を一括でダウンロードする機能
- 管理者による商材の承認フローと、未承認商材の一覧管理
- 管理者から仕入先へ修正内容を伝える商材コメント機能
- 法人・拠点・部署・個人の四階層で商材の公開範囲を指定する設定
- 取引先の利用申請と、管理者による承認・アカウント発行
- 商材ごとの検索キーワード設定と、仕入先向けの通知一覧
- 未対応の見積もり・問い合わせを検知して担当者に知らせる自動配信
導入による効果
取引先が自分で商材を検索し、そのまま見積もり依頼まで進められるようにしたことで、営業担当が資料を探して回答する工程を挟まずに済む流れをつくりました。公開範囲はあらかじめ設定として登録されているため、担当者が「この会社に出してよいか」を都度判断する必要がありません。問い合わせと見積もり依頼が同じ画面に集まるため、対応状況の共有まで画面上で完結する設計にしています。
管理側から見た変化としては、これまで分散していた商材情報が、承認済みのデータとして一箇所に蓄積されていく点が挙げられます。どの商材に見積もり依頼や問い合わせが集まっているかが記録として残るため、注力する商材の判断や仕入先への提案材料として活用できます。都度の判断に頼っていた部分を設定と記録に置き換えたことで、運用後の改善にもつなげやすい仕組みです。
まとめ
仕入先と得意先をつなぐBtoB商材流通基盤の開発事例では、商材登録から公開までの承認フロー、四階層の公開範囲制御、見積もり依頼の一元管理を中心に、業務に合わせた仕組みを整えたことがポイントです。既存の業務をそのままシステムに置き換えるのではなく、都度の判断で対応していた部分をどこまで設定として残せるかという観点で構造を組み立てています。
立場の異なる利用者を一つの基盤に同居させる設計は、権限の切り分けを最初に固めておくことで、後から機能を追加する際の見通しがよくなります。本システムも初回リリース後に段階的な機能追加を重ねており、運用の中で見えてきた課題に合わせて育てていける状態を保っています。同様の商流をお持ちの事業者様のご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。