オンプレミスERPのランニングコストは、主に4つで構成されます。
ソフトの保守料、サーバーなどのインフラ費用、社内で運用する人の人件費、法改正やOS更新にあわせた改修費です。
見落としやすいのは、社内の運用人件費と、数年ごとに来るサーバーの入れ替え費用です。
この記事では、ランニングコストの内訳、クラウドや自社開発との比べ方、コストを下げる方法、乗り換えを考える目安を解説します。
オンプレミスERPとは?クラウド型との違い
オンプレミスERPとは、販売・購買・在庫・会計などをまとめて管理するERP(統合基幹業務システム)を、自社のサーバーに置いて運用する形態です。
クラウド型は、ベンダーのサーバー上のERPをインターネット経由で使います。
| 項目 | オンプレミス型 | クラウド型 |
|---|---|---|
| サーバー | 自社で購入・管理する | ベンダーが用意する |
| 初期費用 | ライセンス・サーバー・構築費がかかる | 低く抑えやすい |
| 月々の費用 | 保守料・電気代・運用人件費 | 利用料(人数に比例することが多い) |
| カスタマイズ | 自由度が高い | 製品の範囲内に限られやすい |
| 更新作業 | 自社で計画・実施する | ベンダーが実施する |
オンプレミス型は自由度が高い一方、運用の手間と費用を自社で負う形です。
「月額の請求書が来ない」ことと「ランニングコストが安い」ことは別の話です。
オンプレミスERPのランニングコストの内訳
ランニングコストを把握するには、請求書が来る費用と、社内で発生している見えない費用の両方を洗い出します。
| 費用項目 | 内容 | 発生のタイミング | 確認すること |
|---|---|---|---|
| ソフトの保守料 | 不具合修正、問い合わせ対応、バージョンアップ | 毎年 | 保守契約の範囲と、範囲外になる作業 |
| サーバー・インフラ | サーバーの保守、電気代、バックアップ、回線 | 毎月+数年ごとの入れ替え | 機器とOSのサポート期限 |
| 社内の運用人件費 | アカウント管理、障害時の一次対応、バックアップの確認 | 毎日〜毎月 | 誰が何時間使っているか |
| 改修・法改正対応 | インボイス制度、電子帳簿保存法、OS更新への対応 | 不定期 | 保守料に含まれるか、別料金か |
ソフトの保守料
市販のERPパッケージの保守料は、ライセンス費用に対する一定の割合で決まる契約が一般的です。
割合は製品と契約ごとに違うので、見積書と契約書で必ず確認してください。
自社専用に開発したシステムの場合、保守費用は開発費の10〜15%/年が目安です。
サーバー・インフラ費用
サーバーは機器の保守期限やOSのサポート期限が来ると、入れ替えが必要になります。
入れ替えの年だけ大きな出費になるため、年あたりに割って予算に入れておくと、突然の出費に慌てずに済みます。
社内の運用人件費
専任の担当者がいない会社では、総務や経理の人が兼務で運用していることがよくあります。
請求書には出てこない費用ですが、障害対応やバックアップの確認に使っている時間も、ランニングコストに含めて考えます。
改修・法改正への対応
インボイス制度や電子帳簿保存法のように、法律が変わると帳票や処理の改修が必要になります。
WindowsなどのOS更新で動作確認や修正が必要になることもあります。
更新のたびに高額な請求が来る理由は、Windows更新の対応費用が膨らむ理由で解説しています。
初期費用と運用費をあわせた比べ方
オンプレミスERPを続けるか、別の方式に移るかは、初期費用と運用費を足した数年分の総額で比べます。
当社が公開している方式別の目安は次のとおりです。
| 方式 | 初期費用の目安 | 継続して発生する費用 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| SaaS(クラウドサービス) | 0〜数十万円 | 月額の利用料(人数に比例) | すぐ使い始めたい、業務が汎用的 |
| パッケージ導入 | 100〜500万円前後 | 保守費・ライセンス費 | 業界で標準的な業務が中心 |
| 自社専用に開発(スクラッチ) | 100万円〜数千万円 | 保守費・サーバー費 | 独自の業務フローがあり、長く使う |
たとえば300万円で開発したシステムなら、保守費用は年30万〜45万円程度、5年で150万〜225万円程度が目安になります。
比べるときは、社内の運用人件費とサーバーの入れ替え費用も忘れずに足してください。
方式ごとの詳しい比較はSaaSとスクラッチ開発の5年間コスト比較をご覧ください。
自社のランニングコストを試算する手順
相場より先に、自社で実際にいくらかかっているかを出すと、見直すべき項目が見えます。
次の表に沿って、1年あたりの金額を出してみてください。
| 項目 | 計算のしかた | 数字の出どころ |
|---|---|---|
| 保守料 | 年間の契約金額 | 保守契約書・請求書 |
| サーバーの入れ替え | 前回の入れ替え費用÷使った年数 | 前回の見積書・固定資産台帳 |
| 電気代・回線・バックアップ | 月額×12ヶ月 | 請求書 |
| 社内の運用人件費 | 月の作業時間×時給×12ヶ月 | 担当者への聞き取り |
| 改修・法改正対応 | 過去3年の改修費÷3 | 過去の請求書 |
たとえば担当者が月10時間を運用に使い、時給が3,000円なら、人件費は年36万円になります。
この合計が、乗り換え先の候補と比べるときの基準の数字になります。
クラウドや新システムに移すときの注意点
ランニングコストが下がる見込みがあっても、移行には次の費用と手間がかかります。
- データ移行:マスタや残高、過去の取引履歴をどこまで移すかで工数が変わる
- 今のカスタマイズの再現:独自に追加した帳票や処理が、移行先で再現できるかを確かめる
- 月額の増え方:利用人数や拠点が増えたとき、月額がいくらになるかを確かめる
- 並行稼働の期間:旧システムと新システムを同時に動かす期間は、両方の費用がかかる
オンプレミスERPの運用コストを下げる5つの方法
運用コストは、使い方と契約を見直すだけで下がることがあります。
- 保守契約の範囲を見直す:使っていないサポートや、範囲外で別料金になっている作業がないかを確認する
- 使っていないライセンスや機能を整理する:退職者のアカウントや、使っていないモジュールの費用を払い続けていないか
- サーバーをクラウド上に移す:ERPはそのままに、置き場所だけをクラウドのサーバーに移して、機器の入れ替えをなくす
- 周辺の業務だけを別に作る:ERP本体を改修せず、現場で使う機能だけをWebで作ってデータでつなぐ
- 入れ替えの時期を計画する:サポート期限から逆算し、慌てて高い見積もりを受け入れない
保守契約の見直し方はシステム保守費用の相場と削減方法で詳しく解説しています。
ERP本体を残して周辺だけをWeb化した例は、レガシー基幹システムを残してWeb化した事例で紹介しています。
オンプレミスを続けるか乗り換えるかの判断基準
次の項目に当てはまる数が多いほど、乗り換えを具体的に検討する時期です。
- ソフトやOSのサポート終了が2〜3年以内に迫っている
- 改修できるエンジニアが社内にも取引先にもほとんどいない
- 法改正やOS更新のたびに、高額な改修の見積もりが来る
- ERPの外でExcelの集計や転記が増え続けている
- 利用者のパソコンごとにインストールや更新の作業が発生している
当社が手がけたサポート切れの提案書作成システムのWeb化事例(140万円・6ヶ月)は、まさにこの状態でした。
サポートが終了した技術のデスクトップアプリで、改修できるエンジニアがほとんど残っておらず、端末ごとの配布・更新にも手間がかかっていました。
ブラウザで使えるWebシステムに作り直したことで、端末ごとの作業がなくなり、商品データの更新も自社でできるようになりました。
基幹システム全体を入れ替える場合の費用は基幹システムの費用相場で、方式別にまとめています。
みんなシステムズでは、AI料金シミュレーターを公開しています。
作りたいシステムの内容を入力すると、これまでの開発実績をもとにAIが概算費用を算出します。
氏名やメールアドレスの登録は不要です。
オンプレミスERPの運用コストに関するよくある質問
Q. ERPのランニングコストには何が含まれますか?
A. ソフトの保守料、サーバーなどのインフラ費用、社内の運用人件費、法改正やOS更新にあわせた改修費の4つが主な項目です。
請求書に出てこない人件費やサーバーの入れ替え費用も含めて考えます。
Q. クラウド型にすれば必ず安くなりますか?
A. 必ず安くなるとは限りません。
クラウド型は利用人数に比例して月額が増えることが多く、人数が多い会社や長く使う会社では、総額が逆転することもあります。
数年分の総額で比べてください。
Q. 保守契約をやめても大丈夫ですか?
A. 契約の範囲と、障害時に誰が対応するかを確認してから判断します。
保守を勧める営業トークの見極め方は「保守に入らないと危険」は本当かで解説しています。
Q. 自社開発したシステムの保守費用はどれくらいですか?
A. 開発費の10〜15%/年が目安です。
300万円で開発したシステムなら、年30万〜45万円程度になります。
まとめ|見えない費用まで含めて総額で判断する
オンプレミスERPのランニングコストは、保守料だけではありません。
サーバーの入れ替え、社内の運用人件費、法改正への改修まで含めて、数年分の総額で判断することが大切です。
株式会社みんなシステムズでは、今のERPを残した周辺システムの開発から、自社専用システムへの作り替えまでご相談いただけます。
運用費が膨らんでいて見直したい段階でも、お気軽にお問い合わせください。