「システムの開発を依頼していた会社が、開発の途中で突然連絡が取れなくなった」
「完成したシステムは納品されないまま、ソースコードもなく、設計資料も一部しか残っていない。投資だけが宙に浮いてしまった」
こうしたご相談は、私たちが思っている以上によく寄せられます。
本記事では、開発元を失った金属加工販売業のお客様から、受注〜請求〜消込までを一本化する受発注管理システムを、引き継ぎ・新規開発で再構築させていただいた実績をご紹介します。同じ状況でお困りの方に、判断材料としてお役立ていただければ幸いです。
ご相談をいただいた時の状況と課題
最初にご相談をいただいた時点で、お客様は「開発の途中で開発会社に飛ばれ、動くシステムが手元にない」という、宙に浮いた状態に置かれていました。具体的には、次のような課題を抱えていらっしゃいました。
1. 開発の途中で開発会社に飛ばれ、動くシステムが残らなかった
システムの開発を依頼していた会社と、開発の途中で、ある日突然連絡が取れなくなってしまいました。納品されるはずだった動くシステムは完成せず、残されていたのは一部の設計資料だけ。ソースコードもありません。費用と時間をかけたプロジェクトが途中で止まり、引き継いでくれる先も見つからない。「この投資は無駄になってしまうのか」という不安だけが残された状態でした。
2. 受注・請求・消込が、いまだExcel・手作業のまま
本来そのシステムで一本化するはずだった受注の管理・請求書の作成・入金の消込は、開発が頓挫したためこれまで通りExcelや手作業のまま残っていました。同じ数字を何度も転記するため入力ミスと二重チェックの手間が常に発生し、「請求したはずの金額」と「入金された金額」の突き合わせにも時間がかかっていました。
私たちが行った解決アプローチ
「止まったプロジェクトを宙に浮かせない。残っているものを最大限に活かし、業務全体を1つにつなぐ」。これを大方針として、無理のない順番で進めました。
STEP 1. 残った資料と現場の業務から仕様を組み立て直す
動くシステムもソースコードもないため、一部残っていた設計資料と、現場で実際に使われているExcel・帳票・請求書を突き合わせ、業務ルールとデータ構造を組み立て直していきました。お客様へのヒアリングを重ね、「この項目は何のために使うのか」「どんな時にこの計算になるのか」を一つずつ言語化し、足りない仕様を私たちの側で作り起こすところから始めています。
STEP 2. 受注〜請求〜消込を貫く一気通貫の設計
バラバラだった業務を、同じデータを一度入力すれば請求・消込まで流れる構造に設計し直しました。受注データを基点に、請求と入金消込が同じ情報源を参照することで、転記ミスと突き合わせ作業をなくすことを狙っています。
使用した技術と設計の工夫
| 領域 | 採用技術・設計 | 狙い |
|---|---|---|
| バックエンド | PHP / Laravel(Eloquent ORM・サービス層分離) | 保守しやすく、次に引き継ぐ人が読めるコードに |
| データベース | MySQL | 受注・マスタを正規化し整合性を担保 |
| フロントエンド | Blade テンプレート + Bootstrap 5 | 現場が迷わない一覧・入力画面 |
| データ取り込み | Excel / CSV インポート | 既存データや大量データを一括で移行・登録 |
受注データを「ヘッダ」と「明細」に分離
1つの注文に複数の品目がぶら下がる実態に合わせ、受注の基本情報(得意先など)と、金額・寸法・商品ごとの明細を分けて持つ構造にしました。これにより明細1行単位での編集・集計が自然に行え、後からの拡張にも強い設計になっています。
鋼材の見積ロジックをシステムに“移植”
担当者の頭の中にあった計算を、商品マスタに比重・キロ単価・材質エキストラ・最低単価として持たせ、寸法(T・W・L)と数量を入れれば重量・金額・原価・利益・利益率までを自動算出するようにしました。属人化していたノウハウを、誰が触っても同じ結果になる仕組みに落とし込んでいます。
特に大変だったこと
| 直面した壁 | どう乗り越えたか |
|---|---|
| 開発途中で頓挫したプロジェクトの引き継ぎ。動くシステムもソースコードもない残った設計資料が一部だけで、仕様の全体像が見えない鋼材特有の重量・エキストラ計算が複雑既存のExcelデータの表記ゆれ・形式バラつき | 残った資料と現場の運用・帳票を突き合わせ、仕様を組み立て直す計算ロジックをマスタ化し、発行済み書類で実数値を再現確認Excel/CSVインポートで取り込み、変換・名寄せのルールを整備機能単位の段階リリースでリスクを分散 |
特に苦労したのは、「答え合わせの相手も、動く現物もいない」という点です。開発は途中で止まっており、参考にできる完成版のシステムはありません。設計資料は一部だけ、ソースコードはなく、前任の開発会社にも連絡が取れません。そこで、残っていた資料を手がかりにしつつ、現場で実際に発行している請求書や見積を“正解データ”とみなし、新システムで同じ入力をして1円単位で同じ金額になるかを地道に検証していきました。
工夫したこと(現場が使いやすくなる仕掛け)
入力と同時に利益が見える「リアルタイム計算+色分け」
数量・単価・原価を入力した瞬間に、合計金額と利益・利益率が自動で更新されます。利益がプラスなら緑、マイナスなら赤で表示されるため、見積を作りながら「この条件で受けて大丈夫か」をその場で判断できます。
一覧・登録・編集の画面を完全に統一
見る画面と入力する画面で項目の順番が違うと、現場は混乱します。そこで一覧と登録・編集の項目順・列幅・レイアウトを完全に揃え、明細を1行単位で直感的に追加・編集できるようにしました。
データを守る仕組みを標準装備
登録・更新はデータベーストランザクションで囲い、途中で失敗しても中途半端なデータが残らないようにしています。入力チェックは日本語の分かりやすいエラーメッセージで返し、操作ログも残すことで、トラブル時にも原因を追える状態にしました。
導入後の成果
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| システムの状態 | 開発が途中で頓挫し、動くものがない | 稼働するシステムが完成。仕様書とコードも揃い改修できる |
| 受注〜請求〜消込 | Excel・手作業のまま二重入力 | 一度の入力で連携、転記ミスを削減 |
| 見積・原価計算 | 担当者依存(属人化) | マスタ化し、誰でも同じ結果を算出 |
| 利益管理 | 後追いで把握 | 入力と同時に利益・利益率を可視化 |
| データ移行・登録 | 手入力中心 | Excel/CSVで一括取り込み |
何より大きいのは、途中で止まり宙に浮いていた投資と計画が、ようやく「動くシステム」として形になったことです。中身が分かる人がいて、必要なら直せる。一度は頓挫した仕組みが、安心して乗れる事業の土台に変わりました。
よくある質問
Q. 開発が途中で止まってしまった案件でも引き継げますか?
A. はい、対応可能です。実際にこの事例でも、開発の途中で開発会社に飛ばれ、動くシステムもソースコードもなく、設計資料が一部だけという状態からのスタートでした。
残った資料と、現場の運用・帳票・発行済みの書類をもとに業務ルールを読み解き、足りない仕様を作り起こすところから進めます。「ここまで進んだものが無駄になるのか」と諦める前に、一度ご相談ください。
Q. 日々の業務を止めずに作り直せますか?
A. 可能です。機能ごとに区切って段階的にリリースする進め方を基本としているため、現場はそれまでのExcel・手作業を止めずに、慣れながら移行できます。この進め方はご好評をいただいています。
Q. 自社の業種特有の計算や運用にも対応できますか?
A. 対応します。本事例では、鋼材の重量計算や材質エキストラといった金属加工特有のルールを、マスタと自動計算として作り込みました。属人化したノウハウを仕組みに落とし込むのは、私たちが最も得意とするところです。
Q. 既存のExcelデータはどうなりますか?
A. Excel/CSVインポート機能で取り込めます。表記ゆれや形式のばらつきも、変換・名寄せのルールを整備したうえで移行しますので、これまで蓄積したデータを活かせます。
まとめ
- 開発の途中で開発会社に飛ばれても、引き継ぎ・再構築は可能:動くシステムやソースコードがなく、残った資料が一部だけでも、現場の運用・帳票から仕様を組み立て直せます。
- 受注〜請求〜消込を一本化:一度の入力で業務が流れ、二重入力と突き合わせの手間をなくせます。
- 業種特有の計算も仕組み化:属人化したノウハウを、誰でも同じ結果になる自動計算に。
- 業務を止めない段階移行:現場が慣れながら、リスクを抑えて切り替えられます。
「開発の途中で開発会社に飛ばれて、どこに相談すればいいか分からない」
そんな状態こそ、私たちがお力になれる場面です。
完成したシステムが手元になく、ソースコードもなく、資料が一部しか残っていなくても、現場の業務と帳票さえあれば、止まったプロジェクトを引き継ぎ、動くシステムとして作り直すことができます。
同じ課題でお困りの方は、まずは現状をお聞かせいただくだけでも構いません。今できることと、その先の進め方を一緒に整理します。お気軽にご相談ください。