生成AIを使ったアプリを自社サービスとして公開したい。そう考えたとき、最初に迷うのは「何から決めればいいのか」「いくらかかるのか」「AIが間違ったことを答えたらどうするのか」ではないでしょうか。
この記事では、生成AIアプリを作る3つの方法、開発の流れ、費用の考え方、そして生成AIアプリならではの落とし穴と対策を、当社の開発事例をもとに解説します。
生成AIアプリとは?業務システムへの組み込みとの違い
生成AIアプリとは、文章や画像、計画などをAIが作成し、その結果を利用者に届けるサービスのことです。たとえば次のような形態があります。
- チャット型:質問への回答や相談に対応する
- 生成型:文章や画像、資料のたたき台を作成する
- 提案型:条件を聞き取り、旅程や各種プランを組み立てて提案する
似た言葉に「業務システムへの生成AI組み込み」があります。こちらは社内担当者が利用する業務システムにAIを加え、問い合わせ対応や書類の読み取りを効率化するものです。
一方、この記事で扱う生成AIアプリは、社外の利用者に向けて公開するサービスが中心です。利用者の数が事前に読めないこと、個別に使い方を説明できないこと、そしてAIの回答を利用者がそのまま目にすることなど、社内向けとは異なる難しさがあります。
社内業務の効率化が目的の場合は、生成AIを業務システムに組み込むには?|3つの型と発注前の6項目で詳しく解説しています。
生成AIアプリの作り方は3通り
生成AIアプリの作り方は、大きく分けて次の3つです。
| 作り方 | 向いているケース | 自由度 | 公開・課金のしやすさ | 主な注意点 |
|---|---|---|---|---|
| ノーコードツール(GPTs、Difyなど) | 社内や少人数での試作、アイデアの検証 | 低い | 低い | 画面や課金の仕組みをツールの範囲でしか作れない |
| 生成AIのAPIを使って自社で開発 | 社内にエンジニアがいる | 高い | 高い | AIの扱い、画面、サーバー、保守を自社で担う |
| 開発会社に依頼 | 社内に開発体制がなく、サービスとして公開したい | 高い | 高い | 何をAIに任せるかを発注側も一緒に決める必要がある |
ノーコードツールで作る
GPTsやDifyなどのツールを使えば、プログラムを書かずに生成AIアプリを作れます。アイデアを手軽に形にして検証するには適した方法です。
ただし、画面のデザインや会員登録、課金、外部サービスとの連携などはツールで用意されている範囲に限られます。自社ブランドのサービスとして公開し、継続的に利用料を得る形には向きにくいのが実情です。
APIを使って自社で開発する
OpenAIやAnthropic、Googleなどが提供する生成AIのAPIを使い、自社のアプリに組み込む方法です。画面も機能も自由に作れますが、AIの回答を検証する仕組みやサーバーの運用、障害対応までを自社で担う必要があります。
開発会社に依頼する
社内に開発体制がない場合や、サービスとして本格的に公開したい場合は、開発会社に依頼するのが現実的です。この場合も「AIに何を任せ、何をプログラムで確かめるか」は事業の中身に関わるため、発注側も開発会社と一緒に決めていくことになります。
目安として、アイデアの検証まではノーコードツール、利用者に公開して利用料を得るなら個別開発と考えると判断しやすくなります。
生成AIアプリ開発の流れ
開発会社に依頼する場合、一般的には次の流れで進みます。
1. 企画:誰の、どんな困りごとを解決するか決める
「生成AIで何かしたい」という思いだけで始めてしまうと、AIを使わなくてもできることに費用をかけてしまいがちです。最初に、利用者が誰で、どんな場面で、何に困っているのかを具体的に言葉にします。
2. 試作(PoC):AIの回答が使い物になるか確かめる
本開発に入る前に、実際のデータや質問を使ってAIの回答を試します。ここで確かめておきたいのは次の3点です。
- 回答の質が、利用者に提供できる水準か
- 回答が出るまでの待ち時間は許容できるか
- 1回あたりのAI利用料はいくらか
3. 本開発:画面・会員機能・AIの答えを確かめる処理を作る
試作で見えた課題を踏まえ、画面、会員登録、決済、外部サービスとの連携などを作り込みます。生成AIアプリでは、AIの答えをそのまま出さずに確かめる処理の作り込みが品質を左右します(後述の「落とし穴と対策」で詳しく解説します)。
4. 公開・改善:使われ方を見て直す
公開後は、利用者がどこで離脱しているか、どんな回答に不満が出ているかを見て改善を続けます。生成AIのモデルは提供元の都合で更新・終了されることもあるため、切り替えの手間もあらかじめ見込んでおきます。
生成AIアプリ開発の費用と期間の目安
初期費用は「AIの周り」で決まる
生成AIアプリの開発費用は、AIそのものよりも、その周辺に何を作るかで大きく変わります。費用が膨らみやすいのは次のような要素です。
- 外部サービスとの連携:地図、予約、決済など
- AIの答えを確かめる処理:実在しない情報を除く、形式を整える
- 多言語対応:海外の利用者を対象とする場合
- 会員機能・管理画面:利用者や生成結果の管理
参考として、当社が開発した訪日旅行者向けのAI旅程作成サービスは、初期費用380万円、開発期間8ヶ月でした。このサービスでは、地図サービスとの連携、AIの答えを確かめる処理、海外の利用者向けの対応を作り込んでいます(詳細は後述の開発事例をご覧ください)。
運用費は「利用者数」で変わる
生成AIアプリで見落としやすいのが運用費(ランニングコスト)です。生成AIのAPIは、多くの場合、やり取りした文章の量に応じた従量課金です。社内向けのシステムなら利用者数をおおよそ予測できますが、一般に公開するアプリは利用者が増えるほどAIの利用料も増えます。
企画の段階で、次の点を整理しておくと安心です。
- 1回の生成でAI利用料がいくらかかるか(試作で確かめる)
- 無料で使える回数に上限を設けるか
- 利用料を回収できる料金設定になっているか
このほか、サーバー代や保守費用も継続してかかります。
生成AIアプリ特有の落とし穴と対策
生成AIアプリでは、AIが返す答えをそのまま利用者に見せるため、社内業務システムとは違う落とし穴があります。当社の開発事例で実際に直面した課題と対策を紹介します。
落とし穴1:AIが実在しない店や情報を出す
生成AIは、もっともらしい文章を作るのが得意な一方、実在しない店名や、すでに閉店した施設を提案してしまうことがあります。こうした「AIのうそ」はハルシネーションと呼ばれます。
対策:AIの答えを外部のデータで照合する
AIが出した施設名を地図サービスのAPIで検索し、実在するかを確かめてから利用者に表示します。利用者の目に触れる前に、プログラムで事実を確かめる工程を挟むのがポイントです。
落とし穴2:回答が途中で切れる
長い文章を一度に作らせると、回答が途中で切れてしまうことがあります。旅程表のように情報量の多い出力が必要なアプリで起きやすい問題です。
対策:途中までの内容を渡して続きを作らせ、つなげる
回答が途中で切れた場合は、それまでの内容をAIに渡して続きを生成させ、システム側で結合します。利用者からは1つの完成した結果に見えるように処理します。
落とし穴3:待ち時間が長く、利用者が離れる
生成AIは、処理内容によっては回答が出るまで時間がかかります。何も変化がない画面で待たされると、利用者は途中で離脱してしまいます。
対策:進み具合を見せ、作り直しもできるようにする
生成中はその進み具合を表示し、待っている理由がわかるようにします。また、結果が気に入らなかった場合に作り直せる機能を用意しておくと、利用者の満足度を保ちやすくなります。
共通する考え方:AIに任せる範囲を絞る
3つの対策に共通するのは、AIに全部を任せないことです。生成AIには発想や組み立てなど得意な部分だけを任せ、事実の確認や計算はプログラムで確実に行う。この役割分担が、利用者に出せる品質を保つうえで欠かせません。
開発事例:訪日旅行者向けAI旅程作成サービス
ここまでの内容を、当社の開発事例で紹介します。
開発前の課題
訪日外国人旅行者向けに、一人ひとりに合わせた旅程を作るサービスです。開発前には、次のような課題がありました。
- 旅行者側:言葉や土地勘の壁があり、有名な観光地だけを回る定番の計画になりがち
- 事業者側:一人ひとりに合わせた旅程を手作業で作ると、手間も費用もかかる
解決の方針:AIは骨組み、事実の確認は地図サービス
利用者には段階的な質問に答えてもらい、旅行の条件を集めます。生成AIには、訪問する都市・日数・興味のあるジャンルから旅程の骨組みを考える役割だけを任せました。
AIが出した施設が実在するか、移動にどれくらいかかるかは、地図サービスのAPIで確かめます。これにより、実際にその通りに回れる旅程に仕上げています。
主な機能
- 質問に答えるだけで旅程案を自動作成
- 地図サービスと連携した施設検索・ルート・移動時間の算出
- 施設ごとの滞在時間の目安と、距離に応じた移動手段の判定
- 有名観光地の近くにある、あまり知られていないスポットの提案
- 会員登録をしなくても計画を続けられる導線
- 宿泊・飲食の予約代行
工夫した点
前の章で紹介した3つの落とし穴(実在しない施設、回答の途切れ、待ち時間による離脱)は、いずれもこの開発で実際に対応したものです。
また、「有名観光地の近くにある、あまり知られていない場所」を自然に提案できる仕組みにすることで、旅行者の満足度だけでなく、地域への送客にもつながる設計にしました。
費用と期間
- 初期費用:380万円
- 開発期間:8ヶ月
詳しくは生成AIを組み込んだ海外向けtoCサービスの開発事例をご覧ください。
発注前に決めておきたいこと(公開アプリ版)
開発会社に相談する前に、次の点を社内で整理しておくと、見積もりの精度が上がり、その後の検討もスムーズに進みます。
- 誰が使うか、何人くらい使うか:運用費の見通しに直結します
- お金をどう回収するか:無料、月額課金、1回ごとの課金、広告など
- どの言語に対応するか:海外の利用者を対象にするかどうか
- AIに任せる範囲:AIに考えさせる部分と、プログラムで確実に処理する部分
- AIが間違えたときの扱い:利用者への注意書き、問い合わせ窓口、修正の流れ
すべてが決まっていなくても構いません。決まっていない点は、開発会社と相談しながら試作の段階で確かめていく方法もあります。
よくある質問
ChatGPTのAPIだけで生成AIアプリは作れますか?
AIの部分はAPIで作れますが、アプリとして公開するには、画面、会員登録、データの保存、AIの答えを確かめる処理などが別途必要です。APIはアプリの部品の1つと考えるとよいでしょう。
AIの利用料は月にいくらかかりますか?
利用者数や1回あたりに生成する文章の量で大きく変わるため、一概には言えません。試作の段階で1回あたりの利用料を測り、想定される利用者数を掛けて見積もるのが確実です。
開発後にAIのモデルを切り替えることはできますか?
設計次第で可能です。生成AIのモデルは更新や提供終了があるため、最初から切り替えやすい作りにしておくことをおすすめします。
まとめ
- 生成AIアプリは、アイデアの検証ならノーコードツール、利用者に公開して利用料を得るなら個別開発が向いている
- 費用はAIそのものより、外部連携や答えを確かめる処理など「AIの周り」で決まる。公開アプリは利用者数に応じて運用費が増える点にも注意する
- 実在しない情報、回答の途切れ、待ち時間といった落とし穴は、AIに任せる範囲を絞り、プログラムで確かめることで防げる
当社では、生成AIを使ったアプリやサービスの企画段階からご相談を受け付けています。「このアイデアはAIで実現できるか」「費用はどのくらいか」といった段階でも、お気軽にお問い合わせください。