「展示会で商談が盛り上がったのに、見積書を出せるのは会社に戻ってから……」
そんな課題を抱えている企業様は少なくありません。展示会や訪問商談の場では手書きでメモを取り、帰社後にPCへ入力し直して、ようやく見積書を印刷して送付する。このフローでは時間もかかり、転記ミスのリスクもあります。
今回は、展示会や商談の場で、その場で見積書を発行できるマルチデバイス見積システムを開発した事例をご紹介します。50万件の商品マスターを持つ基幹システムとの連携など、技術的なポイントもあわせて解説します。
導入前の課題:手書きメモ→PC入力→印刷の三度手間
このお客様は、展示会への出展が頻繁にある企業様でした。展示会のたびに、次のようなフローで見積書を作成していました。
- 展示会の現場で、商談内容を手書きでメモする
- 帰社後、メモをもとにPCへ入力し直す
- PCから見積書を印刷して発行する
このフローには、次のような問題がありました。
- 同じ情報を二度入力する手間がかかる
- 見積書の発行までにタイムラグが生じ、商談の熱が冷めてしまう
- 手書きメモからの転記ミスが起こりうる
特に展示会では、「その場で概算を提示できるかどうか」が商談のスピード感を大きく左右します。この課題を解決するため、新しい見積システムの開発がスタートしました。
解決策:PC・タブレット・スマホ対応のマルチデバイス見積システム
開発したのは、PC・タブレット・スマートフォンのどのデバイスからでも、その場で簡単に見積書を作成できるシステムです。
導入前後の業務フローを比較すると、次のようになります。
| 導入前 | 導入後 | |
|---|---|---|
| 見積作成の場所 | 帰社後、PCのみ | 展示会・商談の現場でその場で作成 |
| 入力作業 | 手書きメモ+PCへの再入力(二度手間) | デバイスから直接入力(1回のみ) |
| 商品情報の参照 | 記憶やカタログに頼る | 基幹システムのマスター(画像付き)を参照 |
| 顧客情報の管理 | 個別に管理 | 見積システムに蓄積し、基幹システムへ連携 |
商品の画像情報もすべて基幹システムから連携して表示されるため、お客様に実際の商品イメージを見せながら、その場で見積を組み立てることができます。
技術的なポイント:50万商品のマスターデータ連携
基幹システムとのCSV連携
このお客様には、商品などのマスターデータを管理している基幹システムがすでにありました。新しい見積システムを使うには、この基幹システムとのデータ連携が不可欠です。
そこで、新しく構築した見積システム側に基幹システムから出力したCSVをアップロードしてマスターを連携できる機能を実装しました。
課題①:50万件という大量データの取り込み
最大の課題は、マスターデータの件数が約50万商品あったことです。これだけの件数になると、単純な取り込み処理では現実的な時間で処理が終わりません。
そこで、CSVアップロード後にバッチ処理でデータを取り込む仕組みを構築しました。処理にある程度の時間はかかるものの、50万件のデータを問題なく取り込めるようになっています。
課題②:約30種類のマスターと依存関係
もうひとつの工夫ポイントは、マスターの種類が約30種類あり、それぞれに依存関係があったことです。
たとえば「商品マスターを取り込む前に、カテゴリマスターが先に入っていなければならない」といったように、マスター同士の依存関係を考慮して、正しい順番で取り込む設計が必要でした。CSV取り込みの処理順序を整理し、依存関係を崩さずにマスター連携できる仕組みを実現しています。
見積データ・顧客情報は基幹システムへ書き戻し
データ連携は「基幹システム→見積システム」の一方通行ではありません。
新しい見積システムで作成した見積データは、基幹システム側にも取り込む必要があります。そこで、見積システムからCSVを出力し、そのデータを基幹システムに取り込める双方向の連携を構築しました。
- 基幹システム → 見積システム:商品マスター・画像情報などをCSVアップロードで連携
- 見積システム → 基幹システム:見積データ・顧客情報をCSV出力で連携
これにより、見積システムに入力されたお客様情報もCSVで出力して基幹システムに取り込めるため、顧客管理も基幹システムのマスター側に一元化できるようになりました。現場での見積作成が、そのまま顧客データの蓄積にもつながる仕組みです。
プロジェクトの進め方:訪問+週2回のオンライン打ち合わせ
まずは現地訪問で「実物」を確認
プロジェクトの初期段階では、実際にお客様のもとへ訪問し、次の点を直接確認しました。
- 実際の商品を自分の目で見る
- 既存の基幹システムを実際に見て、触らせていただく
- 現場の業務フローをヒアリングする
システム開発では、要件定義の段階での認識ズレが後々大きな手戻りにつながります。「実際に来てくれた」という点で、お客様にも安心感を持っていただけたのは、対面での確認を重視した効果だと考えています。
開発中は週2回のオンライン定例で方向性を確認
訪問後の開発フェーズでは、週に2回程度のオンライン打ち合わせを継続し、常に方向性を確かめながら進めました。短いサイクルで認識をすり合わせることで、大きな手戻りを防ぎながらプロジェクトを推進できます。
テストは2社で協力して実施
テスト工程では、データの整合性が取れているかどうかを、開発側とクライアント側の2社でしっかりと確認しました。
特に、クライアント様側でも業務の視点からしっかりとテストをしていただけたことが、プロジェクト成功の大きな要因になったと考えています。実際の業務を知っているのはお客様自身です。開発側のテストだけでは見つけにくい業務上の違和感を、早い段階で潰すことができました。
本事例のまとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 課題 | 展示会のたびに手書きメモ→PC入力→印刷という手間が発生 |
| 解決策 | PC・タブレット・スマホ対応のマルチデバイス見積システムを開発 |
| 技術ポイント | 50万商品・約30種類のマスターをCSV+バッチ処理で連携(依存関係を考慮した取り込み順序) |
| データ連携 | 基幹システムとCSVで双方向連携(マスター取り込み/見積・顧客データ書き戻し) |
| 進め方 | 現地訪問での実機確認+週2回のオンライン定例+2社協力でのテスト |
展示会・商談の現場で使えるシステムをお考えの方へ
みんなシステムズでは、本事例のように、「どこでも見積が作れる」仕組みは、既存の基幹システムを活かしながら構築することが可能です。
- 展示会や訪問商談の場で、その場で見積書を発行したい
- 基幹システムは変えずに、現場向けのシステムだけを追加したい
- 数十万件規模のマスターデータがあり、連携できるか不安
このようなお悩みをお持ちでしたら、ぜひお気軽にご相談ください。お客様の業務フローと既存システムを丁寧に確認したうえで、最適な仕組みをご提案いたします。