クライアント様は、複数の旅行商材をオンラインで販売する旅行事業者様です。会員の管理、お支払い、売上の計上といった仕組みを社内の基盤として持ち、扱っている商材はその上で運用されています。
本案件は、すでに運用されていたレンタカーの予約サイトを、社内の各基盤と接続できる形へ作り直す刷新案件です。画面のデザインから予約の流れ、運営側の管理のしくみまで手を入れており、部分的な改修ではなく実質的に新規開発に近い規模となりました。車両の空き状況や料金を保有しているのは外部の在庫・予約システムであるため、外部とのリアルタイムな連携と、社内基盤との連携を両立させる必要がありました。
本記事では、開発前の課題、提案したアプローチ、実装した主な機能を整理してご紹介します。
今回のポイントは、「レンタカーだけが社内の仕組みから切り離されていて、他の商材と同じように運用できない」という課題に対し、会員・お支払い・売上それぞれの基盤とつなぎ、ご予約から入金の確認、売上の計上までを他商材と同じ流れに乗せられることです。
開発前の課題
レンタカーは、他の旅行商材と事情が異なります。車両そのものと料金プランを保有しているのは全国の各レンタカー会社であり、その情報は外部の在庫・予約システムに集約されています。そのため予約の仕組みは外部システムの作りに引っ張られやすく、社内で使っている会員の基盤やお支払いの基盤、売上を計上する会計システムとは、そのままではつながりませんでした。結果として、レンタカーだけが社内の運用から切り離されていた状態です。
この分断は、実務の負担として表れます。会員としてログインしていただいても、そのご予約が会員の情報とひもづきません。入金の確認も、売上を会計へ受け渡す作業も、レンタカーだけが個別対応になります。加えて、レンタカー会社・店舗・車両クラス・車種・料金プランといった情報は日々更新され、その量は手作業で追随できる規模ではありません。お客様が実際に検索するときに使う「この空港で借りたい」「この駅の近くで返したい」という探し方の情報も、外部システムが持っているものではなく、自社で用意する必要がありました。
画面の作りについても、他の商材と体験が揃っていない状態でした。こうした事情から、見た目を整えるだけでも、外部システムをつなぐだけでも足りません。お客様・レンタカー会社・運営担当それぞれの役割を整理し、検索から予約・お支払い・売上の計上までを一連の流れとして扱える設計が求められました。
ご提案・開発アプローチ
連携先の仕様が先に決まっている案件では、できること・できないことを先に確定させることが設計の出発点になります。本案件でもまず外部の在庫・予約システムの仕様書を読み解き、どの情報がどのタイミングで取得できるのかを洗い出したうえで、定例の打ち合わせを重ねて要件に落としていきました。社内基盤の側にもそれぞれ既存の作法があるため、両側の制約を突き合わせながら、実現できる形を詰めていく進め方をしています。
設計の中心に置いたのは、外部システムに都度問い合わせるものと、自社側に持っておくものを明確に分ける判断でした。空き車両の照会、ご予約の確定、キャンセルといった、その瞬間の正確さが求められる処理は外部システムへ直接問い合わせ、結果をそのまま画面に反映します。一方で、レンタカー会社・店舗・車両クラス・料金プランのように変化の速度が緩やかな情報は、短い間隔での差分更新と一日一回の全量更新を組み合わせて自社側へ取り込む構成としました。さらに、取り込んだ店舗を位置情報から判定して空港・駅・港・エリアへ自動的に結び付ける処理を用意し、取扱店舗が増減しても運営側で手作業の紐付けが要らないようにしています。
社内基盤との接続は、会員のシングルサインオン、お支払い、クーポン、会計システムへの売上連携をそれぞれ独立した部品として実装しました。連携先ごとに仕様も更新のタイミングも異なるため、一つの都合が他の機能に波及しない形にしておく必要があったためです。デザインは制作会社様と分担し、画面の体験を他商材と揃えたうえで実装に落としています。開発期間は約8ヶ月、体制は弊社3名、デザインを担当された制作会社様3〜4名、クライアント様側3〜4名という構成で進めました。
実装した主な機能
- 空港・駅・エリア・ランドマークから選ぶ出発場所・返却場所の指定と日時検索
- 車両タイプ別・店舗別・地図の3つの切り口で切り替えられる検索結果と絞り込み
- 台数とオプションを選ぶたびに料金が変わるプラン詳細画面
- 申込者情報と運転者情報を分けて入力する予約フォーム
- 会員基盤とのシングルサインオンによるログイン
- クーポン基盤と連携したクーポンコードの適用と割引額の即時反映
- 事前決済・現地決済を選べるお支払いフローと決済基盤との連携
- お支払い完了後にWeb上で発行できる領収書
- 予約完了・お支払い案内・キャンセル・出発案内などのメール自動送信
- 予約状況と入金状況を横断して確認できる管理画面
- お知らせ・バナー・記事・セール情報とメール文面の管理機能
- 外部システムからの店舗・車両・料金情報の自動同期
- 未入金のご予約の自動取り消しと、会計システムへの売上データ連携
導入による効果
レンタカーのご予約が、会員・お支払い・売上それぞれの基盤の上で動くようになりました。会員としてログインした状態でご予約いただけば、その内容は会員の情報とひもづいて残ります。入金の確認も、売上を会計へ受け渡す処理も、他の商材と同じ仕組みに乗るため、レンタカーだけ個別に手当てする必要がありません。レンタカー会社・店舗・料金プランの更新は自動で反映され、店舗と空港・駅・エリアの紐付けも自動化したため、取扱店舗が増えても運用の手間が比例して増えない構造になっています。
管理側から見ると、ご予約の状況と入金の状況を一つの画面で確認できるようになった点が大きな変化です。お支払い期限を過ぎたご予約の取り消し、入金状況の定期的な照合、売上データの受け渡しまでを仕組みとして回しているため、担当者が個別に確認して手当てする場面が減りました。数字としての効果測定はこれからですが、どの支払い方法が選ばれているか、どの地域のご予約が伸びているかといった実績が自社側に蓄積される形になったため、運用後の改善にもつなげやすい仕組みです。
まとめ
社内基盤とつなぎ運用を統一したレンタカー予約サイトの開発事例では、外部システムとのリアルタイム連携、検索に必要な情報の自動整備、社内の各基盤への接続を中心に、業務に合わせた仕組みを整えたことがポイントです。
外部に依存せざるを得ない部分と、自社に持つべき部分を切り分けたうえで、社内基盤との接続はそれぞれ独立した部品として組み立てました。どこか一つの事情が全体に波及しない構造にしたことで、連携先の仕様変更にも、取扱範囲の拡大にも対応しやすい土台ができています。商材ごとに仕組みが分かれてしまっている状態を、一つの流れに揃えていく取り組みとして、今後の展開にもつなげやすい設計としました。