はじめに
本件のお客様は、BtoB企業の営業・マーケティング活動を支援されている事業者様です。
本案件では、営業担当者が対面やWeb会議で行っていた「初回商談」を、動画と設問の組み合わせによってシステム上で自動的に進めるサービスを新規開発しました。
見込み客の回答内容に応じて次に再生する動画が切り替わり、相手の関心に沿った説明をしたうえで、最終的に「資料ダウンロード」や「アポイント獲得」につなげる——本商談の前に、システム上で”仮商談”を済ませてしまうという発想のサービスです。
本記事では、次の4点を整理してご紹介します。
- 開発前の課題
- 提案したアプローチ
- 実装した主な機能
- 開発で苦労した点
今回のポイントは、相手の回答に応じて説明が枝分かれしていく商談シナリオを、専門知識なしで組み立てられるようにしたうえで、「誰が、どの説明のどこで興味を失ったのか」まで営業側が把握できるようにしたことです。
開発前の課題
初回商談の中身は、毎回ほぼ同じになる
BtoBの営業では、初回商談の中身がほぼ毎回同じになりがちです。会社紹介、サービス概要、料金の考え方——この説明のために、営業担当者が1件あたり1時間を使う。
件数が増えれば、それだけで一日が埋まってしまいます。しかも説明の質は担当者の力量に左右され、成果にばらつきが出ます。
見込み客側にも、1時間の枠を空ける負担がある
一方、見込み客側にも負担があります。まだ検討の初期段階なのに、わざわざ1時間の枠を空けて営業の話を聞かなければならない。
日程調整のメールを何往復もしているうちに、最初に問い合わせたときの熱量が冷めてしまう——これは受注機会そのものの損失です。
リストは集まっても、関心の中身までは分からない
資料ダウンロードなどの施策で見込み客のリストを集めても、得られるのは会社名と担当者名くらいです。その人が何に関心を持ち、どこに引っかかっているのかまではわかりません。
結果として、営業は相手の状況を知らないまま初回商談に臨むことになります。
動画を配って終わりでは、商談の代わりにならない
「では説明を動画にすればよいのでは」という発想はありますが、それだけでは一方通行です。見る人によって知りたいことは違いますし、途中で疑問が湧いても質問できません。
動画を配って終わりでは、商談の代わりにはならないというのが出発点でした。ここまでの課題を整理すると、次のようになります。
| 課題の所在 | 具体的に起きていたこと |
|---|---|
| 営業担当者の工数 | ほぼ毎回同じ説明のために、1件あたり1時間を使う。件数が増えると一日が埋まる |
| 説明の品質 | 説明の質が担当者の力量に左右され、成果にばらつきが出る |
| 見込み客の負担 | 検討の初期段階でも、1時間の枠を空けて話を聞く必要がある |
| 熱量の低下 | 日程調整のメールを何往復もするうちに、問い合わせ時の熱量が冷める |
| 情報の不足 | 集まるのは会社名と担当者名くらいで、何に関心があるかは分からない |
| 動画配布の限界 | 一方通行になり、見る人ごとに違う関心にも途中の疑問にも応えられない |
ご提案・開発アプローチ
動画の要所に設問を挟み、回答で次の動画を切り替える
そこで提案したのが、動画の要所に設問を挟み、回答に応じて次に流す動画を切り替えるという仕組みです。「導入をご検討の時期は?」「現在のお悩みに近いのは?」といった問いに答えてもらい、その回答に合った説明へ枝分かれさせていく。
実際の営業担当者が相手の反応を見ながら話す内容を変えるのと同じことを、システム上で再現する考え方です。
シナリオは営業の現場が自分で組み替えられるように
この「枝分かれする商談シナリオ」は、営業の現場が自分たちで組み替えられなければ意味がありません。
そのため、動画と設問をつないでツリー状に組み立てられる編集画面を用意し、プログラムの知識なしにシナリオを作成・複製・修正できるようにしました。
疑問はその場で解消し、資料DL・アポイントへ着地させる
商談中に湧いた疑問にはチャット形式のFAQで応え、その場で自己解決できるようにしました。そして最終的に、資料のダウンロードやアポイントの希望日入力へ着地させます。
見込み客がどの設問にどう答え、どこまで進んだかはすべて記録されるため、営業担当者は相手の関心を把握したうえで本商談に臨めるようになります。
従来の初回商談と、本サービス導入後の違いを整理すると次のとおりです。
| 観点 | 従来の初回商談 | 本サービス導入後 |
|---|---|---|
| 説明の担い手 | 営業担当者が1件あたり1時間を使って説明する | 動画と設問の組み合わせで、システム上で自動的に進む |
| 説明の中身 | 担当者の力量に左右され、成果にばらつきが出る | 回答に応じて枝分かれし、相手の関心に沿った説明になる |
| 途中の疑問 | 動画を配るだけでは質問できない | チャット形式のFAQで、その場で自己解決できる |
| 相手の関心 | 会社名と担当者名くらいしか分からない | どの設問にどう答え、どこまで進んだかがすべて記録される |
| 次のアクション | 日程調整を重ねるうちに、熱量が冷めてしまう | 資料ダウンロードやアポイント希望日の入力へ着地する |
実装した主な機能
実装した機能は、見込み客が触れる商談画面と、営業・運営側がシナリオと結果を扱う管理機能の大きく二つに分かれます。
見込み客が触れる画面
- 見込み客向け商談画面(動画再生 → 設問 → 回答に応じた分岐)
- チャット形式のFAQ(ジャンル選択から質問を絞り込み、自由入力の質問も記録)
- 資料ダウンロードと、ダウンロード後のサンクスメール自動送信
- アポイント希望日(第三希望まで)の受付と、担当者への通知
営業・運営側の管理機能
- 動画・設問・回答選択肢の登録と管理(CSVによる一括取り込みにも対応)
- 動画と設問をつなぐ商談シナリオ(分岐ツリー)の作成・編集・複製
- 施策ごとの公開URL発行、社内確認用のテストURL、個別配布用URLの作成
- 特定の回答が選ばれた際に、営業担当者へ即時アラートメールを送信
- 顧客管理(属性・行動ログの閲覧、カンバン形式での商談ステータス管理)
- 商談内容の議事録PDF出力、顧客データ・施策データのCSV出力
- シナリオ分析(成果につながった経路、離脱の多い動画、質問の多い動画の可視化)
- 運営者による企業アカウントの管理・代行ログイン・利用停止処理
開発で苦労した点
「枝分かれする商談」を、誰でも組めるようにする
最も難しかったのが、シナリオの編集画面です。動画の後に設問があり、設問には複数の選択肢があり、選択肢ごとに次の動画が変わる。
その先でまた枝分かれする——この構造は、言葉で書くと単純ですが、画面上で迷わず組み立てられるようにするのは別の話です。
階層が深くなるほど全体像が見えなくなり、どの選択肢がどこにつながっているのか分からなくなります。そこで、シナリオ全体をツリーとして一覧できる形で表示し、枝を追加・削除しても構造が崩れないようにしました。
営業担当の方が「話の流れ」を考える感覚のまま、そのままシナリオに落とし込めることを目標に、表示と操作を作り込んだ部分です。
シナリオを直しても、過去の商談記録が壊れないようにする
商談シナリオは、運用しながら何度も改善されていきます。ここで問題になるのが、「先月の商談記録」は先月時点のシナリオを前提にしているという点です。
単純にシナリオを上書きしてしまうと、過去の記録が指し示す設問や動画が消えたり、内容が入れ替わったりして、分析結果が意味をなさなくなります。
そこで、シナリオを編集した際は既存のデータを書き換えるのではなく、新しい世代として保存し、それまでの世代は記録用として残す構造にしました。過去の商談ログは当時の世代を参照し続けるため、いつ改善しても過去の分析が崩れません。
データを消さずに積み上げていく設計は一手間かかりますが、改善を繰り返すことが前提のサービスでは、この作りが後から効いてきます。
「どこで気持ちが離れたか」を見えるようにする
このサービスの価値は、商談を自動化することそのものよりも、その過程がデータとして残ることにあります。とはいえ「動画が再生された回数」だけを数えても、営業の役には立ちません。
そのため、ひとつの商談を通してどの設問にどう答え、どの動画まで進み、どこで離れたのかを一件ずつ記録する形でログを設計しました。
そのうえで、成果につながりやすい経路、離脱が集中している動画、質問が多く出ている動画をそれぞれ集計できるようにしています。「この説明で毎回つまずいている」という事実が数字で見えれば、動画そのものを差し替えるという改善につながります。
あわせて工夫したのが、確度の高い見込み客を逃さない仕組みです。「導入時期が近い」といった重要な回答が選ばれた場合に、営業担当者へその場でアラートメールを送るようにしました。
相手の関心が最も高まっているタイミングで動けることが、自動化された商談を実際の受注につなげる鍵になります。ここまでの工夫と、その狙いをまとめます。
| 苦労した点 | 実装した工夫 | 狙い |
|---|---|---|
| 階層が深くなると、シナリオの全体像が見えなくなる | シナリオ全体をツリーとして一覧表示し、枝を追加・削除しても構造が崩れないようにした | 営業担当が「話の流れ」を考える感覚のまま組み立てられるようにする |
| シナリオを改善すると、過去の商談記録が意味をなさなくなる | 編集時は上書きせず、新しい世代として保存し、それまでの世代は記録用に残す | 過去のログが当時の世代を参照し続け、いつ改善しても分析が崩れないようにする |
| 再生回数を数えるだけでは、営業の役に立たない | どの設問にどう答え、どの動画まで進み、どこで離れたかを一件ずつ記録する | 離脱の多い動画や質問の多い動画を特定し、動画の差し替えにつなげる |
| 確度の高い見込み客を逃してしまう | 重要な回答が選ばれた際に、営業担当者へ即時アラートメールを送信する | 相手の関心が最も高まっているタイミングで動けるようにする |
まとめ
オンライン商談自動化サービスの開発事例では、相手の回答に応じて枝分かれする商談シナリオを現場が自分で組み立てられるようにし、その反応をすべて記録して改善につなげられる状態を作ったことがポイントです。
業務の自動化は、人がやっていたことをそのまま機械に置き換えれば済むわけではありません。
人が対面で行っていた「相手の反応を見て話を変える」「その場の疑問に答える」「熱量の高いうちに動く」という部分を、どうシステムの形に翻訳するか。そこを丁寧に設計することを重視しました。
同様に、営業・マーケティング業務の自動化や、行動データを活用するサービスの開発をご検討の際は、お気軽にご相談ください。