「取引先からの注文がFAXと電話で届き、担当者が基幹システムに手入力している」——BtoBの受発注では、まだ多く見られる光景です。
BtoB ECサイトを構築すれば、この入力作業をなくし、取引先は24時間いつでも発注できるようになります。ただし、BtoCのネットショップと同じ発想で作ると失敗します。
この記事では、BtoB ECサイト構築の方法と必要機能、費用相場、実際の開発事例までを、システム開発会社の視点で解説します。
BtoB ECサイトとは?企業間取引をWeb化する仕組み
BtoB ECサイトとは、企業間の受発注をWeb上で行えるようにした仕組みです。
一般消費者向けのネットショップと見た目は似ていますが、取引条件が相手ごとに違うという決定的な差があります。
BtoC ECとの違い
| 比較項目 | BtoC EC | BtoB EC |
|---|---|---|
| 価格 | 全員同じ | 取引先ごとに異なる |
| 閲覧範囲 | 誰でも全商品 | 取引先ごとに出し分け |
| 支払い | 都度決済 | 掛売り・月末締め |
| 発注単位 | 1個から | ケース・ロット単位 |
| 承認 | 不要 | 社内承認フローがある場合も |
| 重視される点 | デザイン・回遊性 | 発注のしやすさ・正確さ |
BtoB ECの成否は「取引先ごとの条件をどこまで再現できるか」で決まります。見た目の作り込みより、価格と在庫の正確さが重要です。
BtoB ECを導入する効果
- FAX・電話・メールの注文を受け付ける工数がなくなる
- 手入力による受注ミスがなくなる
- 取引先は営業時間外でも発注できる
- 在庫状況を公開すれば「在庫ありますか」の問い合わせが減る
- 注文履歴が蓄積され、提案の材料になる
BtoB ECサイトの構築方法|3つの選択肢
| 方法 | 初期費用 | 月額 | 自由度 | 向いているケース |
|---|---|---|---|---|
| BtoB向けASP・SaaS | 10万〜50万円 | 3万〜20万円 | 低〜中 | 取引条件が単純 |
| ECパッケージのカスタマイズ | 100万〜500万円 | 保守費用 | 中〜高 | 標準機能が概ね合う |
| オーダーメイド開発 | 150万〜1,000万円以上 | 保守費用 | 最高 | 基幹連携・独自条件 |
判断の分かれ目は「基幹システムとの連携」
BtoB ECで最も重要なのは、在庫と価格をどこから取ってくるかです。
基幹システムに正しいデータがあるのに、ECサイト側で別管理すると、必ず食い違いが起きます。受注してから在庫がないと分かる事態は、BtoBでは信用問題に直結します。
既存の基幹システムと連携が必要な時点で、選択肢は実質オーダーメイド開発に絞られます。
BtoB ECサイトに必要な機能
| 機能 | 概要 | 優先度 |
|---|---|---|
| 取引先別の価格表示 | ログインした企業の掛率で価格を出す | 必須 |
| 取引先別の商品出し分け | 取扱権限のある商品だけを表示 | 必須 |
| 在庫連動 | 基幹システムの在庫を反映 | 必須 |
| 掛売り・与信管理 | 月末締め請求、与信限度額の管理 | 必須 |
| 発注単位の制御 | ケース単位、最低発注数量 | 推奨 |
| 再注文・お気に入り | 過去の注文から簡単に再発注 | 推奨 |
取引先別の価格表示機能
BtoB ECの核となる機能です。
取引先ごとの掛率、商品カテゴリ別の特別価格、数量に応じた段階価格など、実際の商習慣は複雑です。現在エクセルや紙の価格表で運用しているルールを、そのまま再現できるかが選定の分かれ目になります。
在庫連動機能
基幹システムや倉庫の在庫を、ECサイトに反映する機能です。
リアルタイム連携が理想ですが、費用を抑えるなら1日数回の同期でも実用に足ります。重要なのは更新頻度より、「在庫数の表示ルール」を決めることです。実数を出すのか、「在庫あり/残りわずか」の表示に留めるのかで、設計も運用も変わります。
再注文機能
BtoBの発注は、同じ商品の繰り返しが大半を占めます。
過去の注文履歴からワンクリックで再発注できる導線を用意すると、利用率が大きく変わります。新規商品を探させるより、いつもの注文を最短で終わらせる設計が正解です。
BtoB ECサイトの構築費用の相場
| 開発範囲 | 費用の目安 | 含まれる機能 |
|---|---|---|
| 最小構成 | 150万〜300万円 | 取引先別価格・商品一覧・受注機能 |
| 標準構成 | 300万〜600万円 | 基本機能+在庫連動・掛売り・再注文 |
| 大規模構成 | 600万円〜1,500万円 | 標準構成+基幹連携・複数事業者の出店対応 |
実際の開発では、扱う商品点数と取引先数、既存システムとの連携範囲で費用が変わります。
みんなシステムズの実績では、自社製造部品のECサイトを180万円・4か月で構築した例がある一方、出店型のECプラットフォームでは初期費用1,500万円・期間1年という規模の案件もあります。費用の考え方はシステム開発の費用相場|規模・種類別の目安と人月単価で解説しています。
開発事例|部品EC・出店型プラットフォーム・在庫連動サイト
事例1:自社製造部品のECサイト(180万円・4か月)
自社で製造する部品を、取引先が直接発注できるECサイトとして構築した事例です。
範囲を絞ることで、180万円・4か月という比較的短期間での立ち上げを実現しています。
事例2:出店型ECプラットフォーム(1,500万円・1年)
複数の事業者が出店し、それぞれが商品を販売するプラットフォームを構築した事例です。
出店者管理、売上の分配、運営者による審査といった仕組みが必要になるため、単一企業のECとは規模が大きく異なります。
事例3:店舗在庫と連動する注文サイト
バイク店向けに、店舗の在庫と連動する検索・注文サイトを開発した事例です。
在庫の見える化から決済までを一気通貫で実現し、問い合わせ対応の工数を削減しました。
同じ「EC構築」でも、単一企業の受発注か、複数事業者のプラットフォームかで費用は10倍近く変わります。最初に形を決めることが重要です。
BtoB ECサイト構築で失敗しない5つのポイント
① 価格ルールを全部書き出す
取引先別の掛率、特価品、数量割引、期間限定価格——すべて洗い出してください。
ここが曖昧なままだと、稼働後に「この取引先だけ手作業で見積もる」という運用が残ります。
② 在庫データの持ち主を1つに決める
基幹システムとECサイトで在庫を二重管理すると、必ず食い違います。どちらが正なのかを最初に決めてください。
③ 取引先が使えるかを最優先にする
BtoB ECは、取引先に使ってもらえなければFAXに戻ります。
発注担当者が高齢である、PCに不慣れであるといった実情を踏まえ、「いつもの商品を最短で注文できる」導線を最優先に設計してください。
④ FAX注文との併用期間を想定する
全取引先が一斉に切り替わることはありません。当面はFAXとECが併存する前提で、受注データを1つに集約する仕組みを用意してください。
⑤ 小さく始めて広げる
主要な取引先と定番商品だけで公開し、運用が回ってから対象を広げるほうが確実です。全商品・全取引先を最初から載せようとすると、データ整備だけで数か月かかります。
BtoB ECサイトに関するよくある質問
構築期間はどれくらいですか?
範囲を絞った構成で4か月程度、在庫連動や掛売りまで含む標準構成で6〜10か月程度が目安です。実績として、自社製造部品のECサイトを4か月で構築した例があります。
既存の受発注システムと併用できますか?
できます。ECを新たな受注チャネルと位置づけ、受注データを既存システムに流し込む構成が一般的です。受発注システム側の考え方は受発注システム導入で業務時間50%削減|中小企業の成功事例で解説しています。
クレジットカード決済は必要ですか?
BtoBでは掛売りが中心のため、必須ではありません。ただし新規取引先や少額注文にはカード決済を用意すると、与信管理の手間を減らせます。
既存のホームページに組み込めますか?
組み込めます。ただし会員機能と在庫連動が絡むため、WordPressで運用している場合は制約が出ることがあります。判断材料はWordPressをやめて移行するなら|EC・予約・会員サイトの移行先を徹底比較にまとめています。
まとめ|BtoB ECは「取引先ごとの条件」を再現できるかが鍵
- BtoB ECは、取引先ごとに価格・商品・支払条件が違う点でBtoC ECと根本的に異なる
- 基幹システムとの在庫・価格連携が必要なら、オーダーメイド開発が現実的な選択になる
- 必須機能は、取引先別の価格表示・商品出し分け・在庫連動・掛売り管理の4つ
- 費用相場は150万〜600万円程度。範囲を絞れば180万円・4か月での構築実績もある
- 成功の鍵は、取引先が「いつもの注文を最短で終えられる」設計にすること
みんなシステムズでは、自社製造部品のECサイトや出店型ECプラットフォーム、在庫連動型の注文サイトをはじめ、業務の実態に合わせたオーダーメイド開発を手がけています。
「うちの価格体系はECで表現できるのか」といった段階からのご相談も歓迎しています。現在の受発注の流れをお聞かせいただければ、システム化すべき範囲の整理からお手伝いします。