本件のお客様は、ものづくりの分野で、企業間の受発注を支援されている事業者様です。
本案件では、加工や製作を依頼したい「発注企業」と、それを請け負える「受注企業」をつなぐBtoBマッチングプラットフォームを新規開発しました。案件の登録から、見積依頼、図面を交えたチャットでの打ち合わせ、契約、納品後の相互評価までを、ひとつのサービス内で完結できます。決済代行サービスと連携した月額課金にも対応しています。
本記事では、開発前の課題、提案したアプローチ、実装した主な機能、そして開発で苦労した点を整理してご紹介します。
今回のポイントは、単に相手が見つかるだけの場ではなく、初めて取引する企業同士が、探す・相談する・契約する・評価するまでをすべてサービスの中で進められる仕組みにしたことです。
開発前の課題
この業界の受発注は、長いあいだ人づての紹介や既存の取引先との関係で成り立ってきました。発注する側は「この加工ができる会社」を知る手段がなく、いつもの取引先に頼むしかない。受注する側は技術力があっても、営業に人を割けない中小企業が多く、新規の引き合いにつながらない。双方に機会損失が生じている状態でした。
やっかいなのは、必要とされる条件が非常に細かいことです。「金属加工ができる会社」といった大まかな括りで探しても意味がなく、どの工程を、どの精度で、どの規模まで対応できるのかまで一致しなければ話になりません。加えて、対応できる地域や納期の条件も絡みます。
また、初めての相手と取引することへの不安もあります。相手の実績が見えない、図面などの資料をメールでやり取りすると管理が煩雑になる、納期の約束が曖昧なまま進んでしまう——「探せる」ことと「安心して任せられる」ことの間には大きな隔たりがあります。
そして事業としての課題もありました。出会いの場だけを用意しても、その後のやり取りがメールや電話に流れてしまえば、プラットフォームには何も残らず、収益にもつながりません。
ご提案・開発アプローチ
まず、受注企業が対応できる領域を多階層のカテゴリで細かく登録できるようにしました。発注側は、必要な工程・地域・納期を掛け合わせて条件に合う企業を絞り込めます。業界の実務に合わせて分類を細かく作り込んだ部分が、このサービスの土台になっています。
そのうえで、案件の登録 → 見積依頼 → チャットでの打ち合わせ → 契約 → 納品 → 相互評価という一連の流れを、すべてサービス内で完結させる設計としました。特に重視したのがチャットです。案件ごとに専用のやり取りの場を用意し、図面や仕様書もそこで受け渡しできるようにすることで、話が外に流れず、後から経緯をたどれる状態を保っています。
見積依頼は、気になる1社への個別送信に加え、条件に合う企業へまとめて依頼できる一括送信も用意しました。1社ずつ問い合わせる手間をなくし、比較検討のスピードを上げるためです。
収益面は月額プラン制とし、無料でも使い始められるようにしたうえで、実際に契約を結ぶ段階では有料プランへの加入を必要とする設計にしました。まず使ってもらい、成果が見えたところで課金してもらう、という流れです。取引後の相互評価を積み上げていくことで、初めての相手でも判断材料が得られるようにしています。
実装した主な機能
- 発注企業・受注企業それぞれの会員登録、メール認証、企業情報の初期登録
- 受注企業による対応可能領域(多階層カテゴリ)・対応地域・納期目安の登録
- 案件の登録・編集・複製・削除、図面や仕様書などのファイル添付
- 条件による受注企業の検索と、気になる企業のお気に入り登録
- 個別および一括での見積依頼、依頼の取り消し・辞退
- 案件単位のチャット(未読管理、ファイル送信、メッセージ削除)
- 契約の締結、納品予定日の管理、完了・キャンセル処理
- 取引完了後の相互評価(5項目×5段階+コメント)
- 月額プランの申し込み・変更・解約・再開、クレジットカードの管理、請求履歴の閲覧
- 各種通知メールの自動配信と、契約完了・未評価のリマインド送信
- 退会(進行中の取引がないかを確認したうえでの手続き)
- 運営者向けの会員管理・CSV出力・代理ログイン・プラン設定・バナー管理・問い合わせ対応
- CMS連携によるお知らせ記事の掲載(検索エンジン向けの設定も反映)
開発で苦労した点
「探せる」状態をつくるための分類設計
マッチングサービスの成否は、検索の精度でほぼ決まります。そしてその精度は、機能ではなく分類の設計そのものに左右されます。
分類が粗ければ、条件に合わない企業ばかりが並んで使い物になりません。逆に細かくしすぎると、今度は受注企業側の登録作業が苦行になり、そもそも登録してもらえないという壁にぶつかります。ここは業界の実務に踏み込んで整理する必要があり、深い階層構造を持たせつつ、上位の分類だけでも登録・検索が成立する形にしました。加えて、地域や納期といった別軸の条件と掛け合わせても遅くならないよう、絞り込みの処理にも手を入れています。
やり取りをサービスの外に逃がさない
マッチングサービスが直面する構造的な問題があります。一度つながってしまえば、あとは直接メールでやり取りすればよい——利用者にとっては自然な行動ですが、これが起きるとサービスには履歴も評価も残らず、事業として成立しなくなります。
そこで、案件ごとのチャットを「わざわざ使うもの」ではなく「使ったほうが早いもの」にすることを意識しました。図面のやり取りも履歴の確認も同じ場所で完結し、新着があればメールで知らせてサービスに戻ってきてもらう。利便性で自然に中に留まってもらうという考え方です。
あわせて、課金の線引きも設計しました。無料のままでも問い合わせを受け取ることはできますが、実際に契約へ進む段階では有料プランが必要になるという形です。無料と有料の境目をどこに引くかは、利用者の体験を損なわずに、事業として成り立たせるための最重要ポイントであり、実装以上に議論を重ねた部分でした。
取引が途中で止まったままにならないようにする
実運用で必ず起きるのが、「納品は終わっているのに、システム上の契約が完了になっていない」「取引は済んだが評価が入力されていない」といった放置です。とくに評価は、溜まっていかなければ信頼の判断材料として機能しません。しかし利用者にとっては後回しにされがちな作業です。
そこで、完了していない契約や未入力の評価を毎日拾い上げ、対象者へリマインドを自動送信する仕組みを用意しました。さらに退会の際には、進行中の案件や契約、未評価の取引が残っていないかを確認してから手続きに進むようにし、取引相手が置き去りにされない形にしています。
運用面では、公開サービスならではの備えも加えました。いたずら目的の自動登録を防ぐ仕組みを二重に設けたほか、メール送信などの裏側の処理が止まっていないかを定期的に監視し、異常があれば気づける形にしています。動かなくなったことに誰も気づかない、という状態を作らないことは、通知を軸にしたサービスでは特に重要です。
まとめ
製造業向けBtoBマッチングプラットフォームの開発事例では、条件の細かい業界で相手を探せる分類を作り込み、そこから契約・評価までをサービス内で完結させたことがポイントです。
マッチングサービスは、相手を見つける機能を作れば終わりではありません。どうすれば探せるのか、どうすればやり取りが中で続くのか、どうすれば取引が最後まで完了するのか。利用者が自然にその流れに乗れる導線を設計することが、機能そのものと同じくらい重要だと改めて感じた案件でした。
同様に、BtoBマッチングサービスや、月額課金型のプラットフォーム開発をご検討の際は、お気軽にご相談ください。