工程管理システムとは?生産管理・プロジェクト管理との違い
工程管理システムとは、「どの作業が、いつ、誰の手元で、どこまで進んでいるか」を一元的に把握するための仕組みです。案件や製品を工程(作業ステップ)に分解し、担当・予定日・実績日・ステータスを記録していきます。
紙の作業指示書やホワイトボード、Excelの進捗表でやっていることを、そのままデータとして扱えるようにしたものと考えると分かりやすいでしょう。
混同されやすい「生産管理システム」「プロジェクト管理ツール」との違いを整理しておきます。
| 種類 | 主な管理対象 | 得意なこと | 向いている業種 |
|---|---|---|---|
| 工程管理システム | 作業ステップの進捗・担当・納期 | 遅れの早期発見、現場と事務所の情報共有 | 製造・建設・内装・受注生産 |
| 生産管理システム | 生産計画・所要量・原価・在庫 | 需要予測に基づく計画立案、原価計算 | 量産型の製造業 |
| プロジェクト管理ツール | タスクと担当者 | 非定型な業務のタスク割り振り | IT・広告・企画系 |
生産管理システムは「計画を立てる」ことに重心があり、工程管理システムは「動き出したものを追う」ことに重心があります。中小企業でまず効果が出やすいのは、後者の「追う」仕組みです。
関連記事との読み分け
本記事は「工程管理システムそのもの」を、機能・費用・導入手順の観点から横断的に解説します。業種ごとの具体的な導入イメージを知りたい方は、以下の記事のほうが近いかもしれません。
- 建設業・内装業の方
紙・電話・FAXでのやり取りをどう置き換えるかは建設業・内装業の業務効率化|紙・電話・FAXから脱却するシステム導入事例で解説しています。 - 製造業で現場への情報伝達に困っている方
紙マニュアルや作業手順の共有をスマホで行う話は製造業の現場情報共有をスマホで実現|紙マニュアルから脱却した事例と進め方にまとめています。 - まずExcelから抜け出したい方
Excel業務全般のシステム化はエクセル業務のシステム化とは?進め方・費用・成功のポイントを解説が入口になります。
工程管理システムが必要になる理由|Excel・ホワイトボード管理の限界
「今のやり方で回っているのに、なぜシステムが必要なのか」という疑問はもっともです。ここでは、アナログ管理が限界を迎えるときに現れる典型的なサインを挙げます。
サイン1:最新版がどれか分からなくなる
Excelの工程表は、誰かがコピーを作った瞬間に分岐します。「工程表_最新_修正版_0805」といったファイルが並び始めたら危険信号です。
同時編集ができないため、更新のたびに「今は開かないで」というやり取りが発生します。人数が増えるほど、この待ち時間は無視できなくなります。
サイン2:現場と事務所で情報がずれる
ホワイトボードは現場にいる人にしか見えません。事務所の担当者が客先から進捗を聞かれるたびに、電話をかけて確認する必要があります。
「聞かないと分からない」状態そのものが、日々のコストになっています。1回3分の確認電話でも、1日10回なら月に10時間を超えます。
サイン3:遅れに気づくのが遅い
アナログ管理は「終わったこと」の記録には向いていますが、「予定より遅れていること」を自動では教えてくれません。納期直前に発覚し、残業や特急対応で吸収するパターンが常態化します。
あわせて、次のような症状が出ていれば、工程管理システムの検討時期に入っていると考えてよいでしょう。
- 特定のベテランしか全体の進み具合を把握していない(属人化)
- 「どの案件が今どこにあるか」を答えるのに、複数のファイルを開く必要がある
- 手待ちと残業が同じ週に同居している(負荷が平準化されていない)
- 過去の実績を集計しようとしても、データが残っていない
- 部材の欠品に気づくのが、着手直前になっている
工程管理システムでできること|主な機能一覧
工程管理システムの機能は、大きく「登録する」「見せる」「気づかせる」「貯める」の4つに分けられます。
| 分類 | 機能 | 解決する課題 |
|---|---|---|
| 登録する | 案件・工程の登録、担当者と予定日の割り当て | 指示が口頭・紙で流れて残らない |
| 登録する | スマホ・タブレットからの実績入力 | 現場から事務所へ戻らないと入力できない |
| 見せる | ガントチャート・カレンダー表示 | 全体の並びと重なりが把握できない |
| 見せる | 担当者別・設備別の負荷ビュー | 特定の人・機械に仕事が偏る |
| 気づかせる | 遅延アラート、部材の欠品アラート | 問題の発覚が納期直前になる |
| 気づかせる | 権限別の閲覧制御 | 見せたくない情報まで共有してしまう |
| 貯める | 実績データの蓄積とグラフ出力 | 見積の根拠が経験と勘しかない |
| 貯める | 受発注・在庫・請求との連動 | 同じ情報を何度も入力し直している |
すべてを最初から作る必要はありません。実際の開発では「登録する」と「見せる」だけで、現場の困りごとの大半が解消するケースが多いです。
在庫・部材との連動は効果が大きい
工程は、材料がなければ止まります。当社がワイヤーハーネスメーカー様向けに開発したシステムでは、受注登録の際に必要な部材の在庫が足りない場合にアラートを表示し、そのまま発注画面へ進める設計にしました。
欠品の発見が遅れると、発注から納品までのリードタイムがそのまま納期遅延につながります。工程そのものを細かく管理するより、こうした「止まる原因」を先回りで潰すほうが効くこともあります。
業種別に見る工程管理システムの使われ方
同じ「工程管理」でも、業種によって管理する単位も、見たい画面もまったく違います。
| 業種 | 管理する単位 | 特に重視される機能 |
|---|---|---|
| 製造業(受注生産) | 受注番号・製品ロット | 部材在庫との連動、欠品アラート |
| 製造業(量産) | 製造指示・設備 | 設備別の負荷、稼働実績の蓄積 |
| 建設業 | 現場・工区 | 職人の配置、天候による日程変更 |
| 内装業 | 物件・部屋 | スマホでの写真付き報告、協力会社との共有 |
| 金属加工・部品販売 | 案件(見積〜入金) | 見積から請求までの一気通貫 |
製造業:部材と工程がセットで動く
製造業では、工程の進捗と部材の在庫が切り離せません。特に多品種少量・受注生産の現場では、受注ごとに使う部材が変わるため、在庫の引き当てを人の記憶に頼ると必ず抜けが出ます。
製造業の工程管理は、在庫管理と一緒に設計したほうが結果的に安くつきます。後から在庫機能を足すと、データ構造から作り直しになることがあるためです。
建設業・内装業:現場が分散している
建設業・内装業では、担当者が同時に複数の現場を持ち、社外の協力会社も関わります。事務所のPCで完結する設計では現場が使ってくれないため、スマホでの入力・閲覧が前提になります。
また、天候や施主都合で日程がずれることが日常的に起きるため、予定の組み替えが数タップでできることが重要です。この領域の具体的な事例は、冒頭でご紹介した建設業・内装業の記事で扱っています。
工程管理システムの作り方|パッケージ・SaaS・オーダーメイドの比較
導入方法は大きく3つあります。それぞれの向き・不向きを整理します。
| 方式 | 初期費用 | 月額 | メリット | デメリット |
|---|---|---|---|---|
| クラウドSaaS | 0〜数十万円 | ユーザー課金 | すぐ使える/初期費用が軽い | 自社の業務フローに寄せられない |
| 市販パッケージ | 数十万〜数百万円 | 保守費 | 業種向けの機能が最初から揃う | 使わない機能が多い/カスタマイズが高額 |
| オーダーメイド開発 | 100〜1,000万円超 | 開発費の10〜15%/年 | 業務フローに合わせられる/他システムと連携しやすい | 初期費用と期間がかかる |
判断の分かれ目はシンプルです。業務フローを標準的なやり方に合わせられるならSaaS、自社の流れを変えたくないならオーダーメイドと考えてください。
実際には「SaaSを入れたが、自社の業務に合わず結局Excelを併用している」というご相談が少なくありません。SaaSで行き詰まったときの判断材料はSaaSの限界|kintone・Salesforceからオーダーメイドシステム移行の全体像にまとめています。
オーダーメイドを選ぶべきケース
- 工程の呼び方・進み方が自社独自で、他社の型に当てはまらない
- 受発注・在庫・請求など、前後の業務とつなげたい
- 取引先や協力会社にも一部の画面を開放したい
- すでにSaaSやパッケージを試して、合わなかった経験がある
工程管理システムの費用相場
オーダーメイド開発の場合、機能の広がり方によって費用は次のように変わります。当社の業務システム開発実績をもとにしたレンジです。
| 規模 | 主な内容 | 費用の目安 | 開発期間 |
|---|---|---|---|
| 小規模 | 案件・工程の登録と進捗ステータス管理、一覧表示 | 100〜300万円 | 2〜4ヶ月 |
| 中規模 | 上記+ガントチャート、負荷ビュー、在庫連動、スマホ対応 | 300〜600万円 | 4〜8ヶ月 |
| 大規模 | 上記+受発注・請求・原価まで統合、外部システム連携 | 600〜1,000万円超 | 8ヶ月〜1年 |
加えて、稼働後の保守費用として開発費の10〜15%/年が目安になります。300万円で開発したシステムなら、年間30〜45万円程度です。
中小企業の工程管理システムは、100〜500万円の価格帯に収まることが多いです。システム開発費全体の考え方はシステム開発の費用相場|規模・種類別の目安と人月単価で、実際の受注金額11件とあわせて公開しています。
【実例】工程管理を含む業務システムの開発事例3件
ここでは、当社が実際に開発したシステムのうち、工程・進捗の管理と構造が共通する3件をご紹介します。いずれも「工程管理システム」という名前で受注したものではありませんが、案件や製品の流れを追う仕組みという点で参考になるはずです。
- 案件管理パッケージ(販売・購買・在庫)/商社/260万円・4ヶ月
- 受発注・在庫管理システム/ワイヤーハーネス製造/330万円・約5ヶ月
- 販売受注管理システム/金属加工製品販売/500万円・10ヶ月
案件を軸に見積から入金までをつなぐ(260万円・4ヶ月)
販売・購買・在庫管理を統合し、案件管理を軸に見積・受注・調達・出庫・請求・入金までを一元管理できるパッケージシステムです。案件を1本の線として扱い、どの段階にあるかを追える構造にしました。
締め日変更による繰越金額の算出やインボイス対応、有効在庫の判定など、業務特有の複雑な処理を組み込んでいます。開発は最初にミニマムの機能だけで立ち上げ、そこから要望を反映するアジャイル式で進めました。
部材の欠品を先回りで潰す(330万円・約5ヶ月)
OA機器・産業機材・自動車向けのワイヤーハーネスを製造されているメーカー様の事例です。市販の販売管理ソフトを長年使われていましたが、自社の業務フローに合わせた使い方が難しいという課題がありました。
製品・部材・得意先・仕入先・在庫を横断管理し、受注登録時に部材在庫が不足していればアラートを出す設計にしています。一方で、受注後の製品ステータスはあえて細かく管理せず、納品処理の際に納品日を入力するだけにとどめました。
工程の粒度を細かくすればするほど、現場の入力負担は増えます。運用が続かなければ意味がないため、あえて作り込まない判断をした形です。2022年11月のリリース以降、3年以上にわたって稼働し、機能追加とチューニングを継続しています。
Excel全面管理からの脱却(500万円・10ヶ月)
金属加工製品を販売される企業様の事例です。見積・受注・請求・入金管理までをすべてExcelで管理されていた状態から、一連の流れをひとつのシステムで扱えるようにしました。
得意先による自動見積計算・発注、受注確認、納品書・請求書発行、振込データの取り込みによる入金消込、手形管理までを実装しています。得意先側と管理者側で操作範囲を分けた点もポイントです。
受発注業務のシステム化による効果は受発注システム導入で業務時間50%削減|中小企業の成功事例と導入のコツでも紹介しています。
失敗しない工程管理システムの選び方・導入手順
工程管理システムの導入がうまくいかない原因は、機能不足よりも「現場が入力しなくなること」にあります。以下の順序で進めることをおすすめします。
- 現状の工程を書き出す
頭の中にある工程を、実際の呼び方のまま紙に書き出します。ここで理想形に整えないことが大切です。 - 「誰が」「いつ」入力するかを決める
入力のタイミングが業務の流れに沿っていないと、必ず後回しにされます。作業の終わりに1タップで済む形が理想です。 - 管理する粒度を絞る
10工程を管理したくなっても、最初は3工程に絞ります。粒度は後から細かくできますが、粗くするのは現場の反発を招きます。 - 最小構成でリリースし、運用しながら足す
使ってみないと本当に必要な機能は分かりません。初期費用の抑制にもつながります。 - 3ヶ月後に見直す前提で契約する
稼働後の改修をどう進めるかを、発注前に開発会社と握っておきます。
工程管理システムは「作って終わり」にならない種類のシステムです。現場の運用が始まってから見えてくる課題に、継続して手を入れられる体制があるかどうかを、開発会社選びの基準にしてください。
発注前に自社で準備しておくべきことはシステム開発の要件定義、発注側は何を準備すればいい?で具体的に解説しています。
工程管理システムに関するよくある質問
Q. 工程管理システムと生産管理システムはどちらを導入すべきですか?
A. 「納期遅れや進捗の見えなさ」に困っているなら工程管理システム、「需要予測や原価計算」に踏み込みたいなら生産管理システムです。中小企業の場合、まず工程管理から始めて、実績データが貯まってから生産管理の領域に広げる進め方が現実的です。
Q. 現場のスタッフがITに詳しくないのですが、使えますか?
A. 入力操作を「ボタンを押すだけ」に近づけられるかが分かれ目です。当社の事例でも、あえて工程ステータスを細かく管理せず、納品日の入力だけにとどめた設計をしています。機能を減らす判断ができる開発会社かどうかを見てください。
Q. 開発期間はどれくらいかかりますか?
A. 小規模なもので2〜4ヶ月、受発注や在庫と連携する中規模なもので4〜8ヶ月が目安です。当社の実績では、ワイヤーハーネスメーカー様向けの受発注・在庫管理システムが約5ヶ月でした。
Q. 既存の販売管理ソフトと連携できますか?
A. CSVの入出力に対応していれば、多くの場合は連携できます。APIが公開されていればより滑らかにつなげます。ただし、既存ソフト側のデータ形式が独自仕様の場合は事前調査が必要になるため、見積前にご相談ください。
Q. 補助金は使えますか?
A. IT導入補助金やものづくり補助金の対象になる場合があります。ただし補助対象や補助率は年度・公募回ごとに変わるため、最新の公募要領の確認が必要です。当社でも補助金活用を前提としたご相談を承っています。
まとめ|工程管理システムは「小さく作って育てる」が正解
工程管理システムは、案件や製品の進み具合をデータとして扱い、遅れに早く気づくための仕組みです。Excelやホワイトボードでの管理が限界に達したサインが出ていれば、検討する価値があります。
費用はオーダーメイド開発で100万円台から、受発注や在庫まで統合すると600万円以上まで幅があります。最初から作り込まず、最小構成で始めて運用しながら育てるのが、失敗を避ける最短ルートです。
株式会社みんなシステムズは、中小企業向けのオーダーメイドシステム開発会社です。製造業・建設業・商社など、案件や製品の流れを管理するシステムを数多く手がけ、リリース後も3年以上にわたって改善を続けている事例があります。
「今の管理方法が限界かどうか判断したい」「まずいくらかかるか知りたい」という段階でも構いません。初回のご相談は無料で承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。