「生成AIが話題だけれど、うちのような小さな会社で本当に使えるのだろうか」
「ChatGPTを触ってはみたものの、日々の業務にどう組み込めばいいかわからない」
こうしたお悩みは、中小企業・小規模事業者の方からよくうかがいます。
本記事では、従業員15名ほどの卸売業の企業様で、経理・事務業務に生成AIを組み込んだ事例をご紹介します。
先に結論をお伝えします。
生成AIの業務活用は、請求書の読み取りや定型文書の下書きなど「判断が少なく、量が多い作業」から始めると成果が出やすくなります。
導入前の課題から、実装した機能、導入後の変化、使うときの注意点まで順に解説します。
業種ごとの生成AIの使い方を広く知りたい方は、【業種別】生成AIの活用法もあわせてご覧ください。
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経理・支払管理システム画面を触ってみる事例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 業種・規模 | 卸売業/従業員15名ほど |
| 担当体制 | 経理と総務・事務をあわせて2名 |
| 対象業務 | 請求書・領収書の入力、経費精算の仕訳、メール・社内文書の作成、議事録、社内ルールの問い合わせ対応 |
| 開発したもの | ブラウザから使う社内専用の業務システム(生成AIを組み込み) |
| AIとの接続 | 入力データが学習に使われないAPI経由で接続 |
| 進め方 | 書類の読み取りと文書作成の補助から始め、段階的に対象業務を拡大 |
「新しいツールを覚える」のではなく、「今の業務の流れのまま、手入力と文章作成をAIに任せる」ことを目標にしました。
開発前の課題
ご相談いただいた時点で、次の5つの課題を抱えていました。
どれも、少人数でバックオフィスを回している中小企業ではよく見られるものです。
少人数で経理・事務のすべてを担っている
請求書の発行・受領、経費精算、取引先とのメール対応、社内文書の作成。
バックオフィス業務のほぼすべてを2名で担当していました。
月末・月初には業務が集中し、残業が当たり前になっていました。
紙やPDFからの手入力に時間がかかる
取引先から届く請求書や領収書は、PDFや紙が中心です。
その内容を、会計ソフトやExcelに1件ずつ手入力していました。
入力ミスによる差し戻しや確認作業も発生し、担当者の負担になっていました。
定型的な文書作成に追われている
お礼メール、支払い案内、社内通知、議事録など、似たような文書を毎回ゼロから作っていました。
「文章を考える時間」が積み重なり、本来注力したい業務に手が回っていませんでした。
業務が属人化している
「この処理はあの人しかわからない」という業務が多く、担当者が休むと業務が止まるおそれがありました。
社内ルールや手順がマニュアルになっておらず、新しく採用した人の教育にも時間がかかっていました。
生成AIに興味はあるが使い方がわからない
経営者様は生成AIの活用に関心をお持ちでした。
ただ「何から始めればいいのか」「情報漏えいは大丈夫か」という不安から、導入に踏み切れずにいました。
ご提案・開発アプローチ
弊社では、いきなり大きなシステムを入れるのではなく、中小企業でも無理なく使い続けられる仕組みづくりを重視してご提案しました。
まずは業務の棚卸しから
最初に担当者様へヒアリングを行い、日々の業務を一覧にしました。
そのうえで、次の3つに当てはまる業務を洗い出しました。
- 時間がかかっている業務
- 判断が少なく、定型的な業務
- ミスが起きやすい業務
この中から、生成AIと相性の良い業務を優先して取り組むことにしました。
小さく始めて段階的に広げる
すべての業務を一度にAI化するのではなく、効果が見えやすい書類の読み取りと文書作成の補助から始めました。
実際に使っていただきながら改善を重ね、少しずつ対象業務を広げていく進め方です。
小さく試して確かめる進め方は、PoC開発の進め方でも詳しく解説しています。
既存の業務フローに合わせた設計
新しいツールの操作を覚える負担を減らすため、普段お使いのブラウザから使える社内専用の業務システムとして開発しました。
既存のExcelや会計ソフトへの取り込み形式にも合わせ、業務の流れを大きく変えずに使える設計にしています。
セキュリティへの配慮
生成AIの業務活用で特に心配されるのが、情報漏えいです。
入力したデータがAIの学習に使われないAPI経由での接続を採用し、アクセス権限の設定や操作ログの記録も行いました。
あわせて、AIに入力してよい情報・いけない情報をまとめた社内向けの利用ガイドラインづくりもサポートしました。
実装した主な機能
実装した5つの機能を、「AIがやること」と「人がやること」に分けて整理すると次のとおりです。
| 機能 | AIがやること | 人がやること |
|---|---|---|
| 請求書・領収書の読み取り | 取引先名・日付・金額・品目・登録番号を読み取って一覧にする | 内容を確認・修正し、CSVで会計ソフトに取り込む |
| 仕訳候補の提案 | 過去の仕訳データから勘定科目の候補を出す | 候補を見て最終判断する |
| メール・社内文書の作成 | 用途と要点から下書きを作る | 内容を確認して送る |
| 議事録の要約 | 決定事項・担当者・期限を整理する | 抜け漏れを確認して共有する |
| 社内Q&A | 社内規程や手順書をもとに質問へ回答する | 規程や手順書を最新に保つ |
どの機能も、最後の確認と判断は人が行う設計にしています。
AIの読み取りや文章には間違いが混じることがあるためです。
1. 請求書・領収書の読み取り・データ化機能
PDFや画像をアップロードするだけで、生成AIが取引先名・日付・金額・品目・登録番号などを読み取り、一覧データにします。
担当者は内容を確認・修正するだけで、会計ソフトに取り込めるCSV形式でダウンロードできます。
請求書のAI読み取りを支払業務に組み込んだ別の事例は、請求書のAI読み取りを組み込んだ支払業務システムの開発事例でご覧いただけます。
2. 経費精算の仕訳候補の提案機能
領収書の内容と過去の仕訳データをもとに、勘定科目の候補を自動で提案します。
最終判断は担当者が行うため、AI任せにせず正確さを保ちながら作業時間を短くできます。
仕訳や請求の自動化に絞った事例は、AI経理自動化の導入事例で紹介しています。
3. メール・社内文書の作成サポート機能
「支払い遅延のお詫び」「見積もり送付のご案内」など、用途と要点を入力するだけでビジネスメールや社内通知の下書きを作ります。
自社でよく使う言い回しや署名をテンプレートとして登録できるため、毎回の手直しも少なく済みます。
4. 議事録の要約機能
会議の録音データや書き起こしたメモから、決定事項・担当者・期限を整理した議事録を自動で作ります。
会議のあとに議事録をまとめる時間が短くなりました。
5. 社内マニュアル検索(社内Q&A)機能
社内規程や業務手順書を登録しておくと、「交通費の精算期限は?」「新規取引先の登録方法は?」といった質問に、生成AIが社内資料をもとに答えます。
担当者への問い合わせが減り、属人化の解消にもつながっています。
この仕組みの考え方は、社内ナレッジをAIチャットで検索する方法(RAG)で解説しています。
導入による効果
入力・確認作業の時間を削減
請求書や領収書の手入力がほぼ不要になり、月末・月初に集中していた作業時間が減りました。
担当者様からは「入力作業に追われる感覚がなくなった」との声をいただいています。
入力ミスと差し戻しが減少
AIが読み取ったデータを人が確認する流れになり、転記ミスが減りました。
差し戻しや再確認の手間も少なくなっています。
文書作成のスピードが向上
メールや社内文書の下書きをAIが作るため、ゼロから文章を考える時間がなくなりました。
文面の品質も一定に保たれ、取引先対応の安定にもつながっています。
属人化の解消と教育コストの削減
社内Q&A機能により、手順やルールを誰でもすぐ確認できるようになりました。
担当者が不在でも業務が止まりにくくなり、新しく入社した方の教育もスムーズになっています。
削減できた時間は、資金繰りの管理や取引先との関係づくりなど、人にしかできない業務に充てられるようになりました。
少人数の会社ほど、1人あたりの作業が減る効果を実感しやすいといえます。
経理・事務に生成AIを使うときの4つの注意点
今回の事例を通じて見えた、経理・事務で生成AIを使うときの注意点をまとめます。
| 注意点 | 起きやすいこと | 対策 |
|---|---|---|
| AIの結果をそのまま使う | 金額や日付の読み違いが、そのまま会計データに入る | 確認画面を挟み、人が承認してから取り込む |
| 入力してよい情報が決まっていない | 個人情報や取引条件を、無料のAIサービスに貼り付けてしまう | 利用ガイドラインを作り、学習に使われない接続方法を選ぶ |
| 対象業務を広げすぎる | 効果が見えないまま費用だけがかかる | 効果が見えやすい1〜2業務から始める |
| 社内資料が古いまま | 社内Q&Aが古いルールで答えてしまう | 規程や手順書の更新担当を決めておく |
特に大事なのは、「AIに任せる範囲」と「人が確認する範囲」を最初に決めておくことです。
ここが曖昧なままだと、ミスが起きたときに誰も気づけません。
ChatGPTなどの汎用ツールを社内に配るところから始めたい場合は、社内ChatGPTの導入方法が参考になります。
今回のように業務システムへ組み込む場合の型は、生成AIを業務システムに組み込む3つの型で整理しています。
生成AIの業務活用に関するよくある質問
Q. 従業員が少ない会社でも、生成AIを業務に使う意味はありますか?
あります。
今回の事例のように、少人数で多くの業務を担っている会社ほど、手入力や文書作成が減る効果を実感しやすくなります。
Q. 今使っている会計ソフトはそのまま使えますか?
使えます。
今回の事例では、読み取ったデータを会計ソフトに取り込めるCSV形式で出力しています。
会計ソフトを入れ替える必要はありませんでした。
Q. 入力した情報がAIの学習に使われることはありませんか?
接続方法によって変わります。
今回の事例では、入力データが学習に使われないAPI経由での接続を採用しました。
あわせて、入力してよい情報を決めた社内ルールを作ることをおすすめします。
Q. 費用はどのくらいかかりますか?
対象業務の数と、既存システムとの連携の有無で変わります。
AIを組み込んだシステム開発の費用感は、AIシステム開発の費用相場で解説しています。
まとめ
生成AIは大企業だけのものではありません。
限られた人数で多くの業務を担う中小企業こそ、業務活用のメリットが大きいといえます。
今回の事例のポイントは次のとおりです。
- 業務を棚卸しし、生成AIと相性の良い定型業務から始める
- 小さく始めて、効果を確かめながら段階的に広げる
- 既存の業務フローや会計ソフトを大きく変えずに使える仕組みにする
- 情報漏えい対策と社内ルールの整備をセットで行う
- AIに任せきりにせず、最終確認は人が行う
経理や事務の負担を減らしたい。
生成AIを業務に取り入れたいが、何から始めればよいかわからない。
そんな段階でも、株式会社みんなシステムズへお気軽にご相談ください。
貴社の業務内容に合わせて、無理なく使える生成AI活用の仕組みをご提案します。
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