補助金の申請支援を手がける企業にとって、案件管理の煩雑さは避けて通れない課題です。クライアントごとに申請中の補助金が異なり、自治体(都道府県・市区町村)ごとに制度の内容も締切も違います。
さらに紹介パートナー経由の案件が増えてくると、「誰から紹介された案件か」「どこまで進んでいるか」をExcelや紙の書類だけで追い切るのは現実的ではありません。
今回は、そうした状況にあったクライアント様向けに開発した補助金申請支援業務システムの事例をご紹介します。
| 業種 | 補助金申請支援サービス |
|---|---|
| 主な利用者 | 申請クライアント/紹介パートナー/社内担当者の3区分 |
| 使用技術 | Laravel(PHP)、MySQL、AWS S3 |
| 開発期間 | 2021年春に着手し、以降も継続的に機能追加・改善を実施中 |
開発前の課題
管理の中心はExcelと個別フォルダだった
システム導入前に抱えていた課題は、大きく次の5点でした。
- クライアントごとの申請状況や提出書類の管理がExcelと個別フォルダに散在していた
- 補助金は都道府県・市区町村単位で対象や条件が異なり、案件との紐付けが煩雑だった
- 採択後に必須となる「実績報告書」の提出状況を、メールベースで個別に確認していた
- 紹介パートナー経由の案件が増えても、紹介実績を横断的に把握する手段がなかった
- クライアントからの問い合わせ対応が属人化し、やり取りの履歴が残りにくかった
いちばんのリスクは実績報告の提出漏れ
特に採択後の実績報告は提出期限が厳格です。対応漏れが致命的なトラブルに直結しかねない領域でした。
ここをシステムで確実に管理できるようにすることが、開発の大きな軸のひとつになりました。
ご提案・開発アプローチ
利用者ごとにロールを分けて設計する
まず着手したのは、利用者ごとに求められる機能がまったく異なる点を踏まえたロール分離設計です。3つの利用者区分を別ログイン・別権限として設計しました。
| 利用者区分 | 主な役割 |
|---|---|
| クライアント | 申請書類を提出する |
| 外部アカウント(提携先) | クライアント情報を参照する |
| 社内担当者 | 案件全体を管理する |
そのうえで、それぞれに必要な画面だけを見せる構成にしています。
補助金・案件・クライアントをマスタで紐付ける
次に、補助金マスタと案件マスタ、クライアントマスタを紐付ける設計を行いました。補助金には都道府県・市区町村の情報を持たせています。
これにより、どの自治体のどの制度にどのクライアントが申請しているかを、社内担当者が一覧から即座に把握できるようになりました。
書類とやり取りを1か所に集約する
書類のやり取りが多い業務特性上、アップロードファイルはAWS S3で一元管理しました。クライアント側・社内側どちらからも安全にアクセスできる構成です。
問い合わせ機能にはメッセージへのファイル添付を組み込み、電話やメールに分散しがちなやり取りを1つの画面に集約しています。
実装した主な機能
申請から実績報告までを支える機能
- クライアント/外部アカウント/社内担当者、3系統のログイン認証
- クライアントによる申請書類のアップロード・管理
- 補助金採択後の実績報告書提出・進捗管理(提出ファイル添付対応)
- お問い合わせ機能(メッセージのやり取り+ファイル添付、対応履歴の蓄積)
情報を一元管理するマスタと運用機能
- 補助金マスタ(都道府県・市区町村と連動した制度情報の管理)
- 案件マスタ・クライアントマスタ(更新履歴付き)
- 紹介者(紹介パートナー)マスタによる紹介実績の管理
- クライアント情報のExcel一括取込
- アクセスログの記録、定期的なデータベースバックアップ
導入による効果
「誰が・どの補助金で・いまどの段階か」が一目で分かる
システム導入により、案件ごとに散らばっていた情報が1つのシステムに集約されました。「どのクライアントが、どの補助金で、いまどの段階にいるか」を社内の誰が見てもすぐに把握できる状態になっています。
実績報告のステータス管理が画面上で完結
実績報告のステータス管理も画面上で完結するようになりました。メールを追いかける必要がなくなり、提出漏れのリスクを大きく下げています。
紹介実績の可視化と、属人化の解消
紹介者マスタの整備によって、紹介パートナーごとの紹介実績も可視化できるようになりました。
属人的だった問い合わせ対応もメッセージ履歴として蓄積されるため、担当者が変わっても過去のやり取りを追いやすくなっています。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 案件情報 | Excelと個別フォルダに散在 | 1つのシステムに集約 |
| 実績報告の進捗 | メールベースで個別に確認 | 画面上でステータス管理が完結 |
| 紹介パートナーの実績 | 横断的に把握する手段がない | 紹介者マスタで可視化 |
| 問い合わせ対応 | 属人化し履歴が残りにくい | メッセージ履歴として蓄積 |
リリース後も止まらない改善
稼働後も機能追加を重ねている
このシステムは開発して終わりではなく、稼働後も継続的に機能追加が重ねられています。市区町村マスタの整備や補助金まわりの機能拡充、アクセスログの追加、二重送信防止といった細かな改善も続けてきました。
実際の業務で見えてきた課題を、そのつど反映しながら育ててきたシステムです。
制度変更が多い業務だからこそ、継続的に手を入れる
補助金申請支援は、制度変更や自治体ごとの違いが多い業務です。だからこそ、一度作って終わりにせず、運用しながら継続的に手を入れられる開発体制が効果を発揮しています。
まとめ
補助金申請支援のように、クライアント・紹介パートナー・社内担当者と関わる立場が多く、かつ自治体ごとに制度が異なる業務では、Excelや紙のやり取りでは早晩管理が破綻します。
今回のケースでは、利用者ごとのロール分離と、補助金・案件・クライアントを紐付けるマスタ設計によって、複雑な業務フローを1つのシステムに落とし込みました。
複数の関係者が絡む申請・報告業務の管理にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。