「繁忙期になると予約の電話が鳴りやまず、日程調整だけで一日が終わってしまう」。ある不動産会社様からそんなご相談をいただいたのが、この案件の始まりでした。
本記事では、契約時の書類説明と退去立会をオンラインで予約できるシステムを開発した事例について、導入前の課題から解決方法、開発で手間をかけたこと・工夫したことまでを具体的にご紹介します。
完成したシステムでは、お客様はスマートフォンから3ステップで予約でき、予約が確定した瞬間にWeb会議URLの発行・カレンダー登録・SMS通知まですべて自動で完了します。
予約システム導入を検討している方、同じような課題をお持ちの会社様の参考になれば幸いです。
導入前の課題:予約管理が「電話とメールと手作業」で回っていた
ご相談いただいた当時、この会社様では書類説明・退去立会の予約をすべて電話とメールで受け付けていました。整理すると、次のような状態です。
- 受付は営業時間内のみ:お客様が予約できるのは電話がつながる時間帯だけ。仕事終わりの夜に予約したい入居者層とすれ違い、機会損失が発生していた
- 空き状況が属人化:担当者ごとの予定は本人しか把握しておらず、確認のタイムラグでダブルブッキングのリスクが常にあった
- 予約確定「後」の作業が多い:Web会議のURLを手動で発行してメールに貼り付け、カレンダーに手動で登録し、前日に思い出してリマインドの連絡を入れる——予約1件ごとにこの連鎖作業が発生していた
- リマインド漏れによる当日キャンセル:連絡を忘れた予約ほど、お客様側も忘れている。ドタキャンが起きると担当者の時間がまるごと無駄になる
特に深刻なのが繁忙期です。引っ越しシーズンには予約件数が一気に膨れ上がり、調整業務が現場を圧迫していました。
仮に予約1件の調整・付随作業に30分かかるとすると、月50件で25時間。担当者1人の約3営業日分が、本来の業務ではない「調整ごと」に消えている計算になります。(※数値は一般的な運用を想定した試算です)
解決方法:予約から通知までを一気通貫で自動化

この課題に対して、予約の受付から通知までを自動化するシステムを開発しました。
お客様はスマホから3ステップで予約完了
お客様側の画面はスマートフォン前提で設計し、会員登録・ログインは一切不要にしました。
- カレンダーで空いている日を選ぶ
- 空いている時間枠を選ぶ
- お名前と連絡先を入力して送信
これだけで予約が完了します。電話がつながる時間を気にする必要がなくなり、24時間いつでも予約を受け付けられるようになりました。もちろん、電話で受けた予約を管理者側で登録することもできます。
予約確定と同時に、3つの処理が自動で動く
このシステムの核になるのが、予約確定をきっかけに自動で動く処理です。
| 業務 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| Web会議URLの発行 | 都度手動で発行してコピペ | 確定と同時に自動発行 |
| カレンダー登録 | 手動で登録・削除 | 自動で登録、キャンセル時は自動削除 |
| お客様への通知 | 電話・メールで都度連絡 | SMSで自動送信 |
書類説明をオンラインで行うためのWeb会議URLは、予約が確定した瞬間にシステムが自動発行し、お客様に届く通知に自動で記載されます。担当者が「URLを発行して、コピーして、貼り付けて送る」という作業そのものがなくなりました。
担当者のカレンダーにも予定が自動で登録されるため、転記ミスや登録漏れも起きません。キャンセルの場合は、カレンダーからの削除とお客様へのキャンセル連絡まで自動で行われます。
通知は3段階の自動送信でドタキャンを防ぐ
お客様への通知は、タイミングの異なる3段階で自動送信される設計にしました。
- 予約完了時:日時とWeb会議URLを記載した確認のSMSを即時送信
- 前日:リマインダーを自動送信
- 直前:開始前にもう一度通知を自動送信
連絡手段にSMSを採用したのは、メールより到達率・開封率が高く、迷惑フォルダに埋もれる心配がないためです(メールアドレスを入力いただいた場合は、メールでも同じ内容が届きます)。「前日と直前の二重リマインド」により、当日キャンセルの大幅な減少が見込めます。
繁忙期の枠管理はカレンダーで一目瞭然
繁忙期対応として、予約枠の管理機能にも力を入れました。
- 複数の日付・時間帯の予約枠を一括で作成できる
- 日ごとに受け入れ可能な件数を調整できる(繁忙期だけ増枠するなど)
- 休業日など特定日の受付をまとめて停止できる
- 空き状況・埋まり具合をカレンダー画面でひと目で把握できる
「今月どれくらい埋まっているか」を誰でも見られるようになり、空き状況の属人化が解消されました。
なお、システムは広く実績のあるWebの技術を土台に構築し、SMS送信・カレンダー・Web会議のURL発行はそれぞれ信頼性の高い外部サービスと連携しています。パッケージ製品ではなく個別開発のため、業務フローに合わせた調整や将来の機能追加がしやすい構成です。
開発で手間をかけたこと
開発を振り返ると、プログラミングそのものより「業務をシステムに正しく落とし込む」ことに時間をかけました。
「なんとなく」のルールを言葉にする
現場の運用には、明文化されていないルールがたくさんあります。予約をいつまで受け付けるかの締切、予約の種類ごとの時間枠の区切り方、担当者ごとに対応できる業務の違い——。
こうした「なんとなくそうしている」ルールを、ヒアリングで一つずつ確認し、システムの仕様に落とし込みました。この工程を丁寧にやるかどうかで、完成したシステムが現場に馴染むかが決まります。曖昧な状態でご相談いただいても、ここから一緒に整理するのが私たちの仕事です。
連携が失敗しても業務が止まらない設計
外部サービスとの連携は、ごくまれに失敗する可能性がゼロではありません。そこで、万一どこかの連携が失敗しても予約データそのものは必ず保護され、失敗にすぐ気づいて再対応できる仕組みを組み込みました。
お客様の予約が消えてしまう事態だけは絶対に起こさない。表からは見えない部分ですが、安心して使い続けていただくために最も手間をかけたところです。
通常業務と並行して進める導入段取り
開発中も先方の業務は通常どおり動いています。確認やテストのお願いが現場の負担にならないよう、確認事項は小分けにして、先方のペースに合わせて進めました。
現場とお客様のための工夫
通知の文面は管理画面で自由に編集できる
お客様に届くSMSの文面は、管理画面からいつでも編集できるようにしました。物件名・日時・予約確認用のリンクは自動で差し込まれるため、文面の調整だけで運用に合わせられます。
「文言を少し変えたいだけなのに、開発会社に依頼して数日待つ」という状態にしない。納品後に自走できることを意識した設計です。
個人情報への配慮と、記録の自動化
SMSに記載される予約確認のリンクは、開いた人が本人かどうかを電話番号で確認してから予約内容を表示する仕組みにしました。万一SMSを他人が目にしても、予約内容までは見られません。
また、通知が実際に届いたかどうかの送達記録や、予約の変更履歴もシステムが自動で残します。「言った言わない」になりがちな日程変更のやり取りも、記録を見ればすぐに確認できます。
まとめ:予約確定後の「連鎖作業」こそ自動化の本命
不動産業務の中でも、予約確定後に発生する連鎖作業(URL発行・連絡・カレンダー登録・リマインド)と繁忙期の枠管理は、ルールが明確で繰り返しが多く、自動化の効果が最も大きい領域です。
- お客様はスマホから3ステップ・24時間予約できる
- 確定と同時にWeb会議URL発行・カレンダー登録・SMS通知が自動で完了
- 3段階の自動リマインドでドタキャンを抑止
- 繁忙期の枠調整・空き状況の把握もカレンダーで完結
弊社では、不動産会社様の業務フローに合わせた予約管理システムの個別開発を行っています。「うちの運用でも自動化できるのか聞いてみたい」という段階でも構いません。お気軽にご相談ください。
よくある質問
お客様(入居者・契約者)側に会員登録は必要ですか?
不要です。スマートフォンからカレンダーで日時を選び、お名前と連絡先を入力するだけで予約が完了します。登録の手間がない分、予約のハードルが下がります。
通知の文面は自分たちで変えられますか?
変えられます。管理画面からいつでも編集でき、物件名や日時は自動で差し込まれます。開発会社に依頼しなくても、運用しながら調整できます。
既存のカレンダーの使い方を変える必要はありますか?
ありません。普段お使いのカレンダーに予定が自動で登録される形のため、担当者の方の使い方はそのままで導入できます。
導入までにどのくらいの期間がかかりますか?
機能の範囲によりますが、予約管理・通知の基本機能であれば数ヶ月程度が目安です。現在の業務フローのヒアリングから始めますので、まずはご相談ください。