製造業の現場では、市販の販売管理ソフトを長年使い続けた結果、「自社の業務フローに合わない」「入力が二度手間になる」といった悩みを抱えている企業様が少なくありません。
今回ご紹介するのは、OA機器・産業機材・自動車向けのワイヤーハーネスを製作されているクライアント様から、受発注・在庫管理システムの構築をご依頼いただいた事例です。本記事では、開発前の課題、ご提案した開発アプローチ、実装した主な機能を整理してご紹介します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| クライアント業種 | ワイヤーハーネス製造業(BtoB) |
| 開発費用 | 330万円 |
| 開発期間 | 約5ヶ月 |
| 主な機能 | 受注・発注管理、在庫管理、納品書・請求書・見積書発行 |
| 使用技術 | Laravel(PHP) |
| 運用期間 | 2022年11月のリリース以降、現在も継続稼働中 |
開発前の課題
製品・部材・得意先・仕入先・在庫を横断的に管理する必要があった
クライアント様は、OA機器や産業機材、自動車部品向けのワイヤーハーネスを製作し、企業に納品するBtoBメーカーです。
部品を組み合わせて製品を作り、得意先に納品するというビジネスモデル上、製品・部材・得意先・仕入先・在庫という複数の情報を横断的に管理する必要がありました。
市販の販売管理ソフトでは自社の業務フローに合わなかった
これまでは市販の販売管理ソフト「販売大臣」を利用されていましたが、自社特有の業務フローに合わせた使い方が難しく、現場の使い勝手に課題を感じていらっしゃいました。
特に、得意先からの受注登録から納品書・請求書・見積書の発行までの一連の流れや、仕入先への発注書データ作成を、自社の業務に沿った形でスムーズに行いたいというご要望がありました。
部材在庫の不足に気づきにくかった
また、受注した製品を作るための部材在庫が不足している場合に気づきにくいという点も、業務上の悩みのひとつでした。
欠品に気づくのが遅れると、部材の発注から納品までのスケジュールに影響が出てしまうためです。
| 課題 | 現場で起きていたこと |
|---|---|
| 管理する情報が多岐にわたる | 製品・部材・得意先・仕入先・在庫を横断的に管理する必要があった |
| 販売管理ソフトが業務に合わない | 自社特有の業務フローに合わせた使い方が難しく、現場の使い勝手に課題があった |
| 受注から書類発行までの流れ | 受注登録から納品書・請求書・見積書の発行までを、自社の業務に沿ってスムーズに行いたかった |
| 部材在庫の把握 | 在庫不足に気づきにくく、欠品に気づくのが遅れると納期に影響が出てしまう |
ご提案・開発アプローチ
業務プロセスを変えず、フィットしたシステムをゼロから構築
ヒアリングを通じて、まず整理したのは「受注登録」「納品処理」「納品書作成」「請求書作成」という一連の業務フローと、それに付随する「部材発注」「入庫処理」の流れでした。
既存の業務プロセスを大きく変えることなく、自社の業務フローにフィットしたシステムをゼロから構築する方向で開発を進めることをご提案しました。
利用者ごとに役割を分けた2種類のアカウント
あわせて、利用者ごとに必要な機能を整理し、次の2種類のアカウントを用意する権限設計としました。
- ユーザーアカウント
実際に発注・受注業務を担当する営業・事務の方向け。 - 閲覧限定アカウント
パート社員の方などが実績や在庫状況を確認するため。
検証環境とコード品質の仕組みを並行して整備
本番環境に近い形で動作確認できる検証環境も別途用意し、機能追加や修正のたびに現場での使用感を確認しながら進める体制としました。
開発にあたっては、クライアント様専用のコーディング規約を定めた上で、静的解析ツールによるコード品質のチェックや自動テストの整備も並行して行いました。長期的に保守・改修を続けやすい状態を意識して開発を進めています。
実装した主な機能
実装した機能の一覧
今回の開発で実装した主な機能は以下の通りです。
- 製品・部材・得意先・仕入先・在庫の管理機能
- 得意先からの受注登録機能
- 納品処理機能(納品日の入力による管理)
- 納品書・請求書・見積書の発行機能
- 仕入先への発注書データ作成機能
- 部材の入庫処理・在庫反映機能
- 部材在庫が不足した際に発注を促すアラート機能
- 見積書の作成・管理機能
- 売上台帳の管理機能
- ユーザー権限別(通常ユーザー/閲覧限定)のアクセス制御
在庫不足を検知して発注を促すアラート機能
特に部材在庫の不足を検知して発注を促すアラート機能は、受注から納品までの流れを止めないための重要なポイントとして実装しました。
受注登録の際に必要な部材の在庫が足りない場合はアラートが表示され、そのまま部材発注の画面へと進める設計にしています。欠品による納期遅延のリスクを減らす狙いがあります。
現場の運用負荷を増やしすぎない設計
なお、受注後の製品ステータスはシステム側では細かく管理せず、納品処理の際に納品日を入力するのみとしています。
このように、現場の運用負荷を増やしすぎない設計も意識しています。
リリース後の継続的な改善・保守運用
3年以上にわたる保守・改修のお付き合い
システムはリリースして終わりではなく、現場の運用が始まってから見えてくる課題にあわせて改善を重ねていくことが重要だと考えています。
今回のクライアント様とは2022年11月のリリース以降、現在まで3年以上にわたって保守・改修のお付き合いが続いています。事業の成長やデータ量の増加に応じて、パフォーマンスのチューニングや細かな仕様調整、テスト体制の強化など、さまざまな改善を継続的に行ってきました。
データ量が増えても体感速度が変わらないように
運用年数が長くなるほど受注・発注データは着実に積み上がっていきます。そのため当社では、処理速度を定期的に計測しながら先回りでチューニングを行うようにしています。
開発して終わりではなく、リリース後も一緒にシステムを育てていくというスタンスで、長期的な運用に伴走しています。
導入による効果
受注から請求書発行までがひとつのシステムで完結
今回のシステム導入により、これまで販売管理ソフト上で工夫しながら運用されていた受発注・在庫管理の業務を、自社の業務フローに沿った形で一元的に管理できる環境が整いました。
得意先からの受注登録、部材発注、入庫処理、納品処理、そして納品書・請求書・見積書の発行までを、ひとつのシステム上で完結できるようになっています。
発注のタイミングを見逃しにくくなった
また、部材在庫不足のアラート機能により、発注のタイミングを見逃しにくくなりました。パート社員の方など閲覧権限を持つ担当者も、受注・発注の状況や在庫一覧をいつでも確認できる体制になっています。
事業の拡大にともなって取引額の規模が大きくなったり、データ量が増えたりしても、その都度システム側を追従させながら安定して使い続けられている点は、長期運用ならではの成果だと感じています。
| 項目 | 導入前 | 導入後 |
|---|---|---|
| 受発注・在庫の管理 | 販売管理ソフト上で工夫しながら運用 | 自社の業務フローに沿って一元的に管理 |
| 納品書・請求書・見積書の発行 | 受注登録からの一連の流れを自社の業務に沿って行いにくい | 受注登録から発行までひとつのシステム上で完結 |
| 仕入先への発注書データ作成 | 自社の業務に沿った形で行いたいという要望があった | システム上で発注書データを作成 |
| 部材在庫の不足 | 不足に気づきにくく、欠品に気づくのが遅れると納期に影響が出てしまう | アラートが表示され、そのまま部材発注画面へ進める |
まとめ
市販の販売管理ソフトは汎用性が高い反面、自社特有の業務フローとの間にどうしてもギャップが生まれてしまうことがあります。
今回の事例では、受注登録から納品書・請求書発行までの一連の流れと、部材在庫管理というBtoB製造業ならではの業務を軸に、現場が使いやすいシステムをゼロから構築しました。
- 自社の業務フローにフィットしたシステムをゼロから構築
既存の業務プロセスを大きく変えることなく開発を進めた。 - 受注から書類発行までを一元管理
受注登録・部材発注・入庫処理・納品処理・書類発行をひとつのシステムで完結。 - 在庫不足のアラート機能
発注のタイミングを見逃しにくくなった。 - 3年以上の継続的な保守・改修
事業の成長やデータ量の増加に合わせて改善を重ねてきた。
リリースして終わりにせず、3年以上にわたって取引額の拡大やデータ量の増加といった事業の成長に合わせてシステム自体も育てていく運用を続けてきたことも、今回の事例の特徴です。開発時だけでなく、リリース後も安心して長く使い続けられるシステムづくりを大切にしています。
既存の業務システムに「なんとなく使いにくさ」を感じている、部材や在庫の管理を自社の業務フローに合わせて効率化したいといったお悩みをお持ちの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。