「FAXで注文を受けて、手書きで転記して、紙のファイルに綴じる」――このようなアナログな業務フローが、今も多くの中小企業で続いています。
2023年のデジタル庁の調査では、従業員100名以下の企業の約6割がFAXを日常的に業務で使用していると報告されています。
「ペーパーレス化したい」と考えている企業は多いものの、「何から手をつければいいかわからない」「取引先がFAXだから変えられない」という声が大半です。
しかし、ペーパーレス化は「一気に全てを変える」必要はありません。本記事では、紙業務・FAXから脱却するための段階的アプローチを、実際の成功事例とともに解説します。
中小企業の紙業務が残ってしまう3つの理由
理由①:「今までこれでやってきたから」という慣性
最も多い理由が「慣性」です。紙で困っているわけではないが、変えるきっかけもない。
しかし、取引先が増えたり業務量が増えたりすると、「困っていなかった」が「困る」に変わるのは時間の問題です。
紙の管理にかかる目に見えないコストも軽視できません。
書類を探す時間、ファイリングする手間、保管スペースのコスト、紙・インク・FAXの通信費など、これらを合計すると、年間で相当な金額になります。
理由②:取引先がFAXを使っている
「うちはデジタルにしたいけど、取引先がFAXだから」という声はよく聞きます。
しかし、取引先からFAXで届いた情報を社内でも紙のまま処理する必要はありません。
FAXで届いた依頼内容をシステムに登録するだけでも、その後のスケジュール管理、進捗確認、完了報告までデジタルで完結できます。
「入口は紙でも、中身はデジタル」という発想が重要です。
理由③:デジタル化の方法がわからない
「ペーパーレス化したいが、何から手をつければいいか分からない」という状態。
これは当然のことで、社内にITに詳しい人がいなければ、外部の専門家に相談するのが最も確実です。
ここで大切なのは、「何を作りたいか」が決まっていなくても相談して良いということです。
「紙で困っている」と伝えるだけで、専門家は解決策を提案してくれます。
ペーパーレス化の段階的アプローチ
ステップ1:紙で行っている業務をリストアップする
まずは「何に紙を使っているか」を全て書き出します。
注文書、納品書、請求書、報告書、申請書、日報、検品記録――書き出すと「意外と多い」と感じるはずです。
リストができたら、「社内だけで完結する書類」と「取引先とのやり取りに使う書類」に分類します。この分類が、デジタル化の優先順位を決める基準になります。
ステップ2:「社内だけで完結する書類」からデジタル化する
取引先とのやり取りが絡む書類よりも、まずは社内だけで使う書類(申請書、報告書、工事計画書など)から電子化するのがスムーズです。
社内だけなら、取引先に影響なく切り替えられます。
たとえば、紙の申請書をシステム上で提出・承認できるようにするだけで、「書類が机の上で止まる」「承認者が不在で進まない」という問題が一気に解消します。
外出先からスマートフォンで承認できるようになれば、業務のスピードも格段に上がります。
ステップ3:取引先との書類は「受け取った後」をデジタル化する
取引先がFAXを続ける場合でも、受け取った後の社内処理をデジタル化することは可能です。
FAXで届いた依頼内容をシステムに登録すれば、その後のスケジュール管理、進捗確認、完了報告までデジタルで完結できます。
将来的に取引先もデジタル対応になれば、入口もデジタルに切り替えるだけ。
k段階的に進めることで、一度に全てを変えるリスクを避けられます。
ステップ4:紙が「ゼロ」でなくても成功
ペーパーレス化は「紙をゼロにすること」ではありません。法的に紙での保存が求められる書類もありますし、現場の運用上、紙が便利な場面もあります。大切なのは、「紙でなくてもいい業務を紙のまま続けている」状態をなくすことです。
紙業務・FAXから脱却しペーパーレス化を進めた中小企業の実例をご紹介
事例①:FAX運用からシステム化で業務時間を短縮
自動車パーツの配送・回収管理を行う企業では、以前はFAXで依頼を受けて紙で管理していました。
元々は紙ベースで業務を行っていましたが、紙の管理が複雑で手間がかかっていたといいます。
依頼が増えるにつれて情報のやり取りだけでかなりの時間を要し、FAXでの対応に限界が来ていました。
管理システムを導入したことで、作業の自動化と業務時間の短縮を実現。開発中も大きなトラブルもなく進み、シンプルで使いやすいシステムが完成しました。
開発を担当したエンジニアの対応にも満足しており、将来的に新しいシステムが必要になった場合にも再び依頼したいと考えているとのことです。
▶ タイヤ引取管理システムの事例詳細(N.W.E様)

事例②:紙の申請書を電子申請システムへ切り替え
商業施設の内装監理を行う企業では、人材不足からくる事務作業の多さが問題になっていました。
書類管理を電子化(データ化)することで効率化を図るべく、電子申請システムの開発を依頼しました。
開発にあたって心配だったのは「年齢層の高い業界だけにシステムを使いこなせない人が出てくるのではないか」ということ。そこで、「みんなが使いやすいシステム」を目指して開発が進められました。
結果として、マニュアルがなくても使えるシステムが完成。紙の申請業務を電子化して事務作業の大幅な効率化を実現しました。
▶ 電子申請システムの事例詳細(ティ・アイ・エム様)

ペーパーレス化を成功させるためのポイント
現場の声を聞くことが最重要
ペーパーレス化は経営者のトップダウンだけでは成功しません。
実際に紙を使っている現場の声を聞き、「どの作業が一番手間か」「紙でなければいけない理由は何か」を確認することが大切です。
現場が納得しなければ、システムを入れても使われません。
「使いやすさ」が成功の鍵
特に年齢層の高い現場では、「使いやすさ」が導入の成否を分けます。
多機能であることよりも、「見れば分かる」「迷わない」ことが重要です。
事例②のように、マニュアルなしで使えるレベルを目指すことが理想です。
段階的に進めること
一度に全てをデジタル化しようとすると、現場の混乱が大きくなります。まずは一つの業務、一つの書類から。成功体験を積んでから範囲を広げていくのが、最も確実なアプローチです。
まとめ
ペーパーレス化は「一気に全てを変える」必要はありません。まずは社内書類から、そして取引先とのやり取りは「受け取った後」から。段階的に進めることで、現場の混乱を最小限に押さえながらデジタル化を進められます。「何から始めればいいかわからない」という段階でも、お気軽にご相談ください。