目次
はじめに
チーム開発において、Gitのコミットメッセージやプルリクエスト(以下、PR)の質は、開発効率とコードの品質に大きな影響を与えます。適切に書かれたメッセージは、コードレビューの効率化やプロジェクトの保守性向上に直結します。
しかし、「コミットメッセージをどう書けばいいかわからない」「PRの説明が伝わらない」という悩みを抱えるエンジニアは少なくありません。本記事では、効果的なコミットメッセージとPRの作成方法について、具体例を交えながら解説します。
1.コミットメッセージの基本原則
1.1 良いコミットメッセージの特徴
効果的なコミットメッセージには、以下の3つの特徴があります:
1.簡潔で明確な内容
- 変更内容が一目でわかる
- 動詞で始まり、変更の種類が明確
- 50文字以内を目安に簡潔に記述
2.一貫性のある書式
- プレフィックスの統一(feat:, fix:, refactor: など)
- 日本語・英語の統一
- 時制の統一(現在形推奨)
3.レビュアーの視点を考慮
- なぜその変更が必要かの理由を含める
- 影響範囲が分かる情報を記載
- 関連する課題番号やドキュメントへの参照
1.2 避けるべき悪いコミットメッセージの例
× 修正しました
× bugfix
× いろいろ変更
これらのメッセージは以下の問題があります:
- あいまいで具体性がない
- 何をどう変更したのかわからない
- 後から振り返った時に意図が不明
代わりに、以下のように書きましょう:
○ feat: ユーザー登録時のバリデーション機能を追加
○ fix: ログイン後のリダイレクト処理のバグを修正
○ refactor: 注文処理のロジックをサービスクラスに移動
実践的なコミットメッセージの書き方
2.1 基本フォーマット
コミットメッセージは、以下の形式で書くことをお勧めします:
<type>: <subject>
<body>
<footer>
- type: 変更の種類を示すプレフィックス
- feat: 新機能
- fix: バグ修正
- docs: ドキュメントのみの変更
- style: コードの意味に影響しない変更(空白、フォーマット等)
- refactor: リファクタリング
- test: テストコードの追加・修正
- chore: ビルドプロセスやツールの変更
- subject: 変更内容の要約(50文字以内)
- body: 詳細な説明(必要な場合)
- footer: 関連する課題番号等(必要な場合)
2.2 コミットメッセージテンプレート
GitHubでは、以下のようなテンプレートを.gitmessageとして保存し、活用できます:
# ==== Format ====
# type: Subject
#
# Commit body…
#
# ==== Types ====
# feat : 新機能
# fix : バグ修正
# docs : ドキュメントのみの変更
# style : コードの意味に影響しない変更
# refactor : リファクタリング
# test : テストコードの追加・修正
# chore : ビルドプロセスやツールの変更
#
# ==== Rules ====
# 1. 件名と本文を空行で区切る
# 2. 件名は50文字以内
# 3. 件名の終わりにピリオドを付けない
# 4. 件名は命令形で記述
# 5. 本文は72文字で改行
# 6. 変更の理由と変更内容を含める
3.プルリクエストの効果的な作成方法
3.1 PRの基本構成
効果的なPRは、以下の要素を含むべきです:
1.タイトル
- 変更の概要を端的に表現
- プレフィックスを付ける([ADD], [FIX], [UPDATE]など)課題番号がある場合は含める
2.説明文
- 変更の目的
- 変更の概要
- テスト方法
- 注意事項や確認してほしいポイント
3.2 PRテンプレートの活用
GitHubでは、.github/pull_request_template.mdに以下のようなテンプレートを設定できます:
markdownCopy##
## 変更の目的
<!-- なぜこの変更が必要なのか -->
## 変更の概要
<!-- 何をどのように変更したのか -->
## テスト方法
<!-- どのようにテストしたか -->
## スクリーンショット
<!-- UIの変更がある場合 -->
## 関連する課題
<!-- 関連するIssue番号 -->
## チェックリスト
- [ ] テストを追加/更新しました
- [ ] ドキュメントを更新しました
- [ ] コードレビューの準備ができています
4.実践的なユースケース
4.1 機能追加時のメッセージ例
feat: ユーザープロフィール画像のアップロード機能を追加
-AWS S3を利用した画像アップロード機能を実装
-画像のリサイズ処理を追加
-アップロード時のバリデーションを実装
関連: #123
4.2 リファクタリング時のメッセージ例
refactor: 注文処理のビジネスロジックを専用サービスクラスに移動
-OrderControllerから複雑なロジックを分離
-OrderServiceクラスを新規作成
-テストの可読性と保守性を向上
パフォーマンス改善: 注文確定処理が約30%高速化
5.チーム開発におけるベストプラクティス
5.1 レビュー効率を上げるコツ
1.適切な粒度での分割
- 1つのPRで1つの責務変更を原則とする
- レビュー時間の目安は30分以内
2.関連情報の明記
- 設計書やワイヤーフレームへのリンク
- 技術的な決定の背景
- 代替案の検討内容
5.2 コミュニケーションの効率化
1.レビュー依頼時のポイント
- レビュー範囲を明確に
- 確認してほしいポイントを具体的に
- デプロイ手順の変更がある場合は明記
2.フィードバックの受け方
- 建設的な議論を心がける
- 修正内容は新しいコミットとして追加
- レビューコメントには必ず返信
まとめ
効果的なコミットメッセージとPRの作成は、チーム開発の効率と品質を大きく左右します。以下のポイントを意識して実践してください:
変更内容を簡潔かつ明確に伝える
テンプレートを活用して一貫性を保つ
レビュアーの視点を常に意識する
これらの実践を通じて、チームメンバー全員が快適に開発を進められる環境を作りましょう。